「Zenbook 17 Fold OLED」レビュー–各種デバイスに変形する50万円の折りたたみPC

CNET Japan

 ASUSの「Zenbook 17 Fold OLED」は、トランスフォーマーと呼ぶにふさわしい折りたたみノートPCだ。タブレット、ノートPC、デスクトップの3つの機能を備え、しかも多くのハイブリッド製品と違って、すべての機能が高い水準にある。最大の売りは、折りたたみ可能な17インチの大型ディスプレイだ(技術的にはまだ初期段階だが)。


提供:Dan Ackerman/CNET

 サムスンの「Galaxy Z Fold4」や「Galaxy Z Flip4」に代表される折りたたみスマートフォンは、すでに第3世代、第4世代に入り、初代から着実に進化を遂げている。それに対して、ASUSのZenbook 17 Fold OLEDのような折りたたみノートPCは、ほとんどが第1世代か、せいぜい第1.5世代にすぎない。

 「第1.5世代」と言ったのは、最初の折りたたみノートPC「ThinkPad X1 Fold」の登場から、およそ2年が過ぎているからだ。ASUSのZenbook 17 Fold OLEDは、このLenovoの初代折りたたみノートPCと比べると、いくつかの点で改善やアップグレードを実現しているが、多くの問題も引き継いでいる。

 最も進化した点はディスプレイだ。Zenbook 17 Fold OLEDでは、17.3インチの大画面が採用された。しかも2560×1920画素の有機ELディスプレイだ。画質は素晴らしく、バッテリー駆動時間も長い。ディスプレイを折り曲げられるようにプラスチック基板のOLEDを採用しているため、見た目は必ずしも理想的とは言えないが、17インチの有機ELタブレットと考えれば出来は良い。

 もっとも、出来は良くなければならない。Zenbook 17 Fold OLEDは、Intelの第12世代「Core i7-1250U」プロセッサー、16GBのRAM、1TBのSSDを搭載し、価格は3500ドル(約50万円)もするのだから。この手の製品は、かつては「CEOラップトップ」と呼ばれていた。企業のCEOらが見せびらかすためだけに持ちたがる、最先端ではあるが試作品の域を出ない高額なマシンだ。普通の消費者にはとうてい手が届かない。


Zenbook 17 Fold OLEDは大きなタブレットとして読書に使うのもいい
提供:Bobby Oliver/CNET

 アーリーアダプターになるためには相当のプレミアム価格を払わなければならないが、それでもZenbook 17 Fold OLEDは目を奪う外観と使う楽しさを兼ね備え、さらにはポータブルコンピューターの未来も垣間見せてくれる逸品だ。

 Zenbook 17 Fold OLEDは、巨大な有機ELディスプレイと最新世代のCPUを搭載しているが、折りたたみノートPCの祖であるThinkPad X1 Foldを彷彿とさせる点も多い。どちらもディスプレイを折りたたんだ時に完全には閉まらず、隙間ができてしまう。この隙間に付属の外付けキーボードを滑り込ませるのだが、これが厄介で、完全に折りたたんだ状態では分厚く、不格好になる。画面のベゼルが大きいことも、古臭さを感じる一因だ。折りたたみノートPCは新モデルも出始めているので、今後はデザイン面の進化も期待できるだろう。しかしZenbook 17 Fold OLEDに関する限り、この市場を切り拓いたThinkPad X1 Foldと基本的には同じデザインを採用しているように見える。


Zenbook 17 Fold OLEDのヒンジとディスプレイの折りたたみ部分
提供:Dan Ackerman/CNET

3種類(またはそれ以上)のデバイスを1つで実現

 Zenbook 17 Fold OLEDに関して、筆者が特に気に入っているのは、さまざまなデバイスに変形できることだ。17インチの縦長タブレットとしても使えるし、内蔵されたキックスタンドを使って筐体を立て、その手前に付属の小さなキーボードを置けば、17インチの横長オールインワンデスクトップPCにもなる。画面の下半分にキーボードを乗せれば、12.5インチのクラムシェル型ノートPCに早変わりだ。スクリーンキーボードを使えば、上下のスクリーンに自由にウィンドウを配置できる12.5インチのノートPCとしても使える。

 最も素晴らしいのは、17インチのディスプレイをフル活用したオールインワンデスクトップPCモードだろう。画面にできるだけ多くの情報を表示したい人、ドキュメントやウェブページを大画面で見たい人にはもってこいだ。キックスタンドの角度は調整範囲が狭いが、ほとんどの人はやや後ろに傾ける程度にしか使わないだろう。


筆者のお気に入りはオールインワンデスクトップPCモードだ
提供:Dan Ackerman/CNET

 ベッドでテレビや映画を見るためのポータブルスクリーンとしても優れていると感じた。確かにかさばるし、率直に言って寝室用のメディアプレーヤーとしてはぜいたくすぎるが、大画面は正義であり、有機ELディスプレイは美しい。

 折りたたみスクリーンの最大の問題は中央部分の折り目だ。指で触ればほぼ確実に分かるが、通常は目で見ても分かる。この問題はZenbook 17 Fold OLEDにも引き継がれているが、少なくとも映画を観ている間は気付かなかったし、折り目のせいでメディアの視聴体験が損なわれたこともない。


有機ELディスプレイで見る動画は素晴らしい
提供:Dan Ackerman/CNET

 12.5インチのノートPCモードで使う場合、Zenbook 17 Fold OLEDは大きすぎ、重すぎ、高すぎる。しかし筆者はこのレビュー記事を書いている間、何度もノートPCモードに戻った。クラムシェル型はなじみがあり、落ち着くからだ。しかし、それは他の選択肢を押しのけて、重さ1.8kg、厚さ34mmのノートPCを買う理由にはならない。

 ノートPCとタブレットを一体化するというアイデアは何年も前から議論されている。パーソナルコンピューティング製品の大統一理論が確立される日はまだ遠いが、Zenbook 17 Fold OLEDは、1枚のスクリーンを持ち運べば、サイズを自在に変え、さまざまな用途に対応できる未来に向けた大きな一歩だ。

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