[ブックレビュー]現代社会に起きている症状について洞察する–「22世紀の民主主義」

CNET Japan

 本書を読むと、現代において国を動かしている政治や選挙の在り方が、民主主義を実現する数多き手段のうちのたった一つに過ぎないことを実感できる。そして、それは数百年前に構想されたにもかかわらず、今もなお使われ続けているという現実を。

 本書は近年多くのメディアで引っ張りだこの研究者で事業者、成田悠輔氏による処女作である。成田氏は、実のところ政治にも政治家にも選挙にも興味が持てず、「どうでもいい」と感じてきたそうだ。しかし、そのことが本書を書くきっかけとなった。

 多角的な思考を持つ成田氏は「どうしたら民主主義をより良いものにできるか」という難題について、あらゆる可能性と脆弱性を検討した挑戦を綴った。現在、世界中で発現している社会現象を「民主主義の故障」と称し、その故障に対して「闘争・逃走・構想」の3つの切り口で解決への糸口を探っていく。どの切り口も豊富な過去事例と多彩な視野に富んだ刺激的な内容だ。

 多くのメタファーと本心を織り交ぜた独特の文章は、噛めば噛むほど味が出て読者の感性をくすぐってくれる。要約は、本編に凝縮されている議論のほんの一部を抜粋できたに過ぎない。そのため詳細は是非原本にて確認し、正しい情報量と文脈を追った上で著者の主張を受けとめてほしい。

 やるせない社会と忍耐強く日々闘争する人、失望し新天地へ逃走しようとする人。どちらの属性の方にも、現代社会に起きている症状について深い洞察を与えてくれる1冊だ。

今回ご紹介した「 22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。

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