「昔の薬ってどんなものだったんだろう?」
──ある日ふと疑問に思って調べてみたところ、動植物由来の生薬を細かく潰し、丸薬や錠剤型に成型されていたらしい。(時代により諸説あります)
古くから薬どころとして栄えてきた富山県には、なんと戦後使われていた道具を使って、昔ながらの丸薬作りが体験できるお店があるらしい! せっかくなので訪問して挑戦させてもらったが……メチャメチャに難しかった~!!!!
・池田屋安兵衛商店
やってきたのは、富山市にある池田屋安兵衛商店。昭和11年に創業し、江戸時代に一世を風靡した「反魂丹」という丸薬の製造・販売を始めたのだという。
ちなみに販売と言っても、今のようにドラッグストアがあるわけではない。当時は薬をあらかじめ一般家庭に配置し、薬売りが1軒ずつ訪問して使った分だけお金を受け取るという “置き薬” のシステムが一般的だったらしい。
言われてみれば、筆者が子供の頃はまだ靴箱の中に置き薬のセットが置かれていた。突然熱が出た日、母が風邪薬とトローチを出して飲ませてくれた気がするぞ。薬屋のお兄さんにおもちゃをもらって嬉しかった記憶もなんとなく残っている……。
さてさて本題に戻ろう。体験させてもらうのは、店内中央に置かれた機械を使った丸薬製造。
といっても、体験中に使うのは本物の薬ではなく、薬を模したダミー。現在の法律では薬に異物が混ざらないよう、管理された工場での製造が定められているのだそうだ。
まずはお手本を見せてもらいながら仕組みをご説明しよう。機械の裏側についているレバーを動かすと、
(当時の職人さんたちは、紐の先の輪に足を通して操作していたそうだ)
機械に開けられた小さな穴から、粘土状の薬の元が押し出される。
5mmほど出たところでヘラのような道具ですくい取り、
台の上に均等に並べる。
それらを大きなパネル状の道具で押さえ、くるくると丸めると……
丸く整ったぞ!
サイズは均一、表面はツヤツヤ、まさに職人技である!
コレを2日ほど乾かしたものが、かつては丸薬として販売されていたのだそうだ。それにしても、どうして隣同士の丸薬がくっつき合わないのか……?
社員の方によると「コツは力をこめて小さく回すこと。はじめはカクカクとした感覚がありますが、徐々に粒が転がるような滑らかな動きになってきたら完成時です」とのこと。
・初挑戦! しかし…
ということで、筆者も丸薬づくりに初挑戦させてもらった。粘土をすくい取るところまでは社員の方にしてもらい、そこからは自分でパネルで押さえてくるくると回す。
ところが、
筆者「ん? あれ?? 小さく回すのって難しいですね。自分の腕なのに動きが制御できない! しかもずっと動きがカクカクしてるどころか、逆にカクつきが大きくなってきました。隣とくっついた粒があるな!」
その出来栄えは……
アチャー……サイズも形もバラバラだぁ。
普段から工作やネイルをして細かい作業には自信があったはずなのだが、へし折られる結果となった。丸薬職人への道はまだまだ遠そうである。
社員の方には「均等に力をかけないとそうなっちゃいますね。でも、全然イケてる方ですよ!」と、なぐさめの言葉と一緒にお土産をもらった。
紙風船。かつて薬売りたちが、お客さんへのお土産として配っていたのを再現したものだという。
・薬の歴史も見られるぞ!
池田安兵衛商店では、他にも薬にまつわる歴史的な展示物を見ることができる。例えば、
薬売りが実際に背負って薬を入れていた柳行李(やなぎごうり)
生薬を粉にするために使う薬研(やげん)
道具を眺めていると、薬が人の手で地道に丁寧に作られ、広められてきたことが実感できたような気がする。そしてきっと、その地道な作業の積み重ねが現在の医療に繋がっているのだろう。
最後に、池田安兵衛商店の看板商品である越中反魂丹をテイスティングしてみることにした。
パッと見は花の種。知らなければ薬には見えない。
そのお味は……
申し訳ないけど、苦くて臭いな。
なんとなく匂いや後味に苔や野草っぽさがあることから、植物由来であることだけは想像ができる。昔の人々が「良薬口に苦し」ということわざを作り出した理由がよくわかったよ。