誹謗中傷の投稿を見つけた場合、いくつかの対応策があります。まずは、投稿者を特定して民事訴訟を起こすケースです。これは弁護士に依頼することになりますが、お金がかかります。逮捕してもらうために警察に被害届を出すことも考えられるのですが、ネットでの誹謗中傷だと被害届を受理してくれなかったり、相談に乗ってくれないことも多いようです。
あまり大ごとにはしたくない、あるいはする気力がない、というケースでも、今後の生活のためにもネット上の誹謗中傷は消したい、と考えることもあります。そんなときは、SNSや掲示板などのサービスプロバイダーに削除申請を出します。これも弁護士に依頼する方が確実ですが、どうしてもお金をかけられない、というのであれば自分でチャレンジする方法もあります。
自分で削除要請を出す前に気を付けること
投稿内容にもよるのですが、まずは直接アプローチしてみるという方法があります。SNSのダイレクトメッセージやサービスプロバイダーの連絡先などに、削除して欲しいと連絡するのです。特に攻撃する意図がない場合、削除したり内容を変更してくれることがあります。もちろん、このとき、感情的な文面を送りつけると、相手の態度も硬化してしまうので冷静に依頼しましょう。
明らかに攻撃してきているなど、アプローチが逆効果になりそうならSNSやブログなどのサービスプロバイダーに削除してもらうしかありません。削除できる可能性が高いのは、サービスプロバイダーが国内の事業者である場合です。日本には「プロバイダ責任制限法」があり、ネット上の違法・有害情報に対応しなければならないのです。大手企業であれば、利用規約の違反を報告するフォームなどから、投稿の削除依頼が可能です。
ただし、その前に本当にその投稿が誹謗中傷であるか第三者が見ても明らかなのか確認しておく必要があります。住所やフルネームなどの個人情報が書き込まれたり、顔が分かる写真などをアップロードされた場合は明らかです。しかし、ハンドルネームなどで本人を特定できなかったり、誹謗中傷とまでは言えない低評価コメントなどでは単純に削除できないことがほとんどです。もし、これで削除できてしまえば、気に入らない投稿に対して片っ端から削除申請できてしまうからです。
以下、掲示板やSNSなど、それぞれのサービスで削除要請を出す場合はどうすればいいのか見ていきましょう。
爆サイ、5ちゃんねるなどの掲示板サイトの場合
ローカルコミュニティの匿名掲示板「爆サイ」では、各スレッドの下に削除依頼フォームへのリンクが用意されています。レス番号や通報区分、連絡先、削除依頼理由などを記入して申請します。
匿名掲示板の「5ちゃんねる」や「2ちゃんねる」の場合も削除依頼は可能です。しかし、細かいルールがあるので、「削除依頼の入り口@2ch掲示板」や「削除要請(入口)@5ちゃんねる掲示板」をよく読んで削除依頼を出しましょう。依頼内容に不備があったり、適切でないところに依頼をしても削除されませんので注意してください。
他の掲示板も公式の問い合わせ先に連絡してみましょう。らちが明かない場合は、親会社を調べてそこのサポートに連絡して削除してもらったケースもあります。
Twitterの場合
Twitterではヘルプセンターの「Twitterおよびセンシティブなコンテンツを安全に使用する」からどのような問題があるのか報告します。
Twitterは多数のユーザーが違反を報告すると、そのアカウントが凍結されることもあります。そうすれば全ての投稿が見えなくなります。違反を報告する場合は、該当ツイートの右上にある「・・・」メニューから「ツイートを報告」→「不適切または攻撃的な内容を含んでいる」を選択し、詳細情報を入力します。他の人の目にも明らかな中傷誹謗の場合は、そのうち凍結されるかもしれません。
アメーバブログの場合
例えば、「アメーバブログ(アメブロ)」に誹謗中傷が書き込まれた場合は「利用規約の違反報告」ページから報告します。報告を元にサービス運営事業者が確認し、違反と判断すれば削除などが行われます。ただし、このページから違反報告を行ったとしても、個別の回答は行われません。
自分のフルネームなどが記載されている場合など、プライバシー権が侵害された場合は「権利者向け窓口」から自分のアメーバIDやメールアドレスなどを入力して申請します。
規約違反の報告でも削除されなかった場合は「送信防止措置の申出」ができます。プロバイダ責任制限法で決められている手続きです。もちろん、この手続きを行ったとしても、削除に至らないという判断もあり得ることは理解しておきましょう。
アメブロの場合は、「削除請求(送信防止措置の申出)」ページから「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書.pdf」をダウンロードし、必要事項を記入して運営元である株式会社サイバーエージェントに郵送する必要あります。
誹謗中傷されている投稿に関して正確に記入するのはもちろんですが、侵害されている権利と侵害されたとする理由をきっちり書く必要があります。感情的にならず、事実を分かりやすく書きましょう。
もし、誹謗中傷と判断された場合は削除されますし、そうでない場合も情報発信者に意見照会を行ってくれます。意見照会から7日間返答がなければ自動的に削除してくれます。書類の記入や送付、本人確認書類の添付などが必要で手間はかかりますが、誹謗中傷されているなら削除してもらえる可能性はあります。
相手が独自にブログを運営している場合
中には、サーバーをレンタルし、自分でWordPressなどをインストールして独自にブログを構築している人もいます。このような場合は、ブログ運営者に直接連絡するか、レンタルサーバー事業者に連絡することになります。
例えば、さくらインターネットの「迷惑行為・不正なサイトなどの報告窓口」では、名誉毀損・プライバシー侵害削除依頼を受け付けています。まずは、そのブログのサーバーがさくらインターネットの管理下にあるか確認し、申請を行います。その後、ブログ運営者に事実確認を行い、続けて状況に応じて対応してくれます。
エックスサーバーの場合は、プロバイダ責任制限法のガイドラインに基づき対応するとしています。同社の「権利侵害情報の削除について」のページによると、「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」で公開されている書類をダウンロードして必要事項を記入し、問題箇所のプリントアウトや本人確認書類とともに郵送することで、削除依頼を行います。
重要なのはきちんと内容を書いて報告すること
他のサービスについても、サービス名と「削除依頼」といったキーワードで検索すれば、削除依頼方法を記載したヘルプページや解説ブログなどがヒットします。まずは自分でやってみる、という方はそれらも参考にチャレンジしてみましょう。
サービスプロバイダーが大手企業であるほどきちんと対応してくれる傾向にありますが、個人の申請では通らない、ということも多々あります。これは、第一にきちんとした文章で書かれていない可能性があります。友人や身近な人に話すような内容で一方的に主張を書いても通じません。第二にどんな書き込みがどんな理由で名誉毀損やプライバシー権侵害を起こしているのか説明できていないことです。
個人で手続きして事態が改善しない場合、やはり弁護士に依頼したり、法テラスに相談することをお勧めします。弁護士から連絡すると、すぐに対応してくれるケースもあるので不安な場合は相談してみましょう。
ネットの匿名性を悪用する誹謗中傷が社会問題になっています。誰もが被害者になりえますし、無意識に加害者になってしまう可能性もあります。この連載では、筆者が所属する「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」が独自に取材した情報を共有し、実際に起こった被害事例について紹介していきます。誹謗中傷のない社会を目指しましょう。