テレワークが定着しているINTERNET Watch編集部だが、大学生のインターンスタッフもテレワークで業務に参加している。今回はテレワークグッズミニレビュー 番外編として、現役大学生の視点から、オンライン化された大学の授業と、それに対応した工夫を紹介する。
私は大学で中国語を学んでいますが、新型コロナウイルスの影響により授業がオンライン化されたことで、言葉に触れる機会そのものが大きく減ってしまいました。
オンライン授業は先生も学生も手探りの状態でスタートし、今でもオンラインと対面が併用されています。結果としては問題なく受講できていますが、やはり、リスニングやスピーキングなどの授業が受けにくくなり、コロナ禍以前と比べて物足りなさを感じます。
大学の授業は実践的なものが多く、学生間はもちろん、ネイティブの先生とも中国語で会話する機会が毎日あり、クラスではいつも笑顔が絶えませんでした。また、授業以外でも、ネイティブの先生と本場の水餃子作り体験をしたり、学園祭で中国語劇を披露したり、授業の空きコマで先生や留学生と雑談をしたりといったことも、大切な学びの機会でした。
ただ言語を学ぶだけでなく、海外の人たちのリアルな生活や文化に触れることは、海外への興味や学ぶことのモチベーションにつながる、いい機会でした。しかし、コロナ禍でこのような機会がほとんどなくなってしまったのです。
ほかの学科の状況を知らないため比べることはできませんが、語学科においては、授業以外でも大学にいて友人や先生と自由に話せる時間がとても貴重で、オンライン化して家に1人でいる状況は、学習機会の損失となってしまうように感じます。
こうした状況で、私は授業以外での自宅学習の補助として、さまざまなものを試しました。ここでは、私が使って効果的だと感じたサービスや、友人の間で評判だった学習方法を紹介します。
世界のラジオ番組が聴ける「Radio Garden」で中国語を流し続ける
最も愛用しているのが、いつでもどこでも世界中のラジオ番組をリアルタイムで聴くことができるサービス「Radio Garden(ラジオガーデン)」です。ウェブブラウザー、またはAndroid/iOS用のアプリで、無料で利用できます。
起動すると地球儀上に緑色の丸い枠が表示され、枠を合わせた都市のラジオ局の放送を再生できます。日本のローカル局はもちろん、世界中の都市のラジオ局を選択可能です。地球儀上を操作するのでなく国名や都市名から検索したり、お気に入りの局は「Favorites」に登録したりもできます。
私は、オンライン授業が始まって少し経ったころから使い始め、中国語のリスニング力を鍛えるために中国語圏のラジオ局を中心に聴いていました。最初は全く何を言っているのか分からず、とりあえず作業用BGMとして聞き流していた程度でした。
それでも四六時中、中国語が流れ続ける空間で生活していると、次第に耳が慣れてきます。ところどころ大学で習った文法や単語が断片的に聞き取れるようになっていき、学習のモチベーションアップにつながりました。
中国と日本では時差が1時間しかないので、ニュースが流れる時間帯は日本とあまり変わりません。中国には北京語、広東語など複数の方言がありますが、私がRadio Gardenで聴いた番組は、どの地域も標準中国語で放送されていました。標準中国語とは、北京語の文法をもとに作られており、現在では人口の8割弱が理解できるとされている共通語です。
もともと中国北部と南部では言葉に大きな違いがあり、同じ中国人なのに英語で会話をすることもあったり、学者によっては方言というより別の言語ととらえる人もいるほどでした。最近は都市部を中心に義務教育に標準語の学習が導入されているので、少数民族や農村の高齢者を除いたほとんどの人が標準語を理解できるそうです。
放送内容は地域の情報を報道するものが多く、日本のローカル放送に近い印象です。例えば、上海市の「上海交通ラジオ」では、市内の交通インフラとガソリンスタンドの価格の情報が30分ごとに繰り返されています。広東省の主要都市の1つである江門市の「江門ラジオテレビ局」では市内のワクチン接種状況や、学校の受験についてのニュースなどが流れていました。
また、北京市の「北京音楽ラジオ」などの音楽番組や、ニュース番組でときどき流れる音楽などで、C-POP(Chinese Pop)への知見が深まりました。C-POPはバラードなどのゆったりとした曲が多いことが特徴です。数あるアーティストの中でも、中国でも人気のグループ「逃跑计划(タオパオジィファ/英名:Escape Plan)」が印象的でした。
どの曲も心に訴えるものがあり、いつも私をおセンチな気分にさせてくれます。彼らの最新情報は、中国のブログサービス(中国版Twitterとも)である「Weibo(ウェイボー)」の「逃跑计划‐微博‐ウェイボー(ブログ)」でチェックできます(なお、中国語です)。
英語圏では、米ルイジアナ州ニューオリンズの「WWOZ FM 90.7」がおすすめです。この局では、ジャズの原点である「ニューオーリンズ・ジャズ」をいつでも聴くことができます。演奏者による即興的なメロディーと軽快なリズムに、なんだか踊りだしたくなってしまいます。個人的に、フライドポテトとハンバーガーを片手に聴きたいチャンネルナンバーワンです。
これらのチャンネルを聴き始めてから、遠く離れた国々に想いを馳せる機会が増えた気がします。言葉の意味がよく分からない場合でも、流れてくるトークの雰囲気や音楽から、その街の空気感や人々の感情のようなものが伝わってくるラジオは、素敵なツールだと思います。
大学のオンライン留学制度は、奨学金も単位認定もあるものの狭き門
コロナ禍を受け、私の大学では、海外の大学との連携による「オンライン留学」制度を導入しました。
この制度は、自宅からZoomなどのWeb会議アプリを用いて海外の大学とつながり、指定のプログラムに沿った授業が受けられるものです。費用は国や大学によって差がありますが、中国のある大学では、総受講時間24時間のプログラムで5万円前後(エージェント手数料+送金手数料込み)、同じく中国の別の大学では、67時間のプログラムで9万円前後(同)でした。
大学からのサポートもあり、オンライン留学時に所定の成績を修め、プログラム修了後に成績証明書の受領、報告書の提出をすると、大学から奨学金が支給されます。金額は、プログラム参加費用が4万円以上だと3万円、参加費用が4万円未満の場合には2万円です。また、留学先で獲得した単位を日本で認定することもでき、単位数は語学授業22.5時間で1単位、講義授業だと11.25時間で1単位として計算されます。
オンライン留学プログラムは、春休みあるいは夏休みの日中帯で参加する「春期(2~3月)」「夏期(8月)」と、日本での大学の授業と並行して参加する「前期(4~7月)」「後期(9~12月)」の4シーズンに開催されます。シーズンによっては自身の学びたい言語を扱う大学がなかったり、あったとしても1シーズンで1大学しか受け付けていなかったりする場合があるので、毎シーズン応募が殺到します。
対象は1〜4年生で、全学年合わせて5〜10人の枠をかけて選考が行われ、その内容は、これまでだと大学の成績、志望動機の作文、学力試験、そして各言語の先生との面談でした。コロナ禍以前から(渡航の)留学に行くことを予定していた学生たちが特に強く希望しており、その中で選考に勝ち上がるには、並大抵の努力では難しい状況です。現在、私は就職活動中ですが、落ち着いたらしっかりと準備をして今年の「夏期」か「後期」の選考に挑戦するつもりです。
実際に3カ月のオンライン留学を経験した友人に、オンライン留学の様子を聞いてみました。彼女はもともと1年間の留学が決まっていましたが、コロナの影響で中止になってしまいました。在宅での生活が強いられた中で、海外での留学に近い環境で学ぶため、オンライン留学を決意しました。
友人は中国語を学習するため北京でのオンライン留学に参加しました。昨年の9月から12月までの12週間、週3回で全72コマのZoomを利用したレッスンで、1コマは日本時間の19時からスタートして1時間50分、休憩をはさみながら行われます。
入学時にテストが行われ、得点が近い学生どうしでクラス分けされるので、自身のレベルに合ったコースで学習できます。また、授業は団体形式で、先生との会話だけでなく学生同士でのセッションルームも設けられるので、孤立してしまうことはまずありません。
留学というだけあって、日本全国の学生のほか、世界各国からの留学生も集まってくるそうで、いろいろな話が聞けて楽しそうです。中国のSNS上で果物やペットボトルなどで作ったマスクが流行った話や、韓国国内ではホテル×バカンスを融合させた「ホカンス」旅行が流行った話など、コロナの時代を生きる各国の話が聞けて、語学以外で得たものも大きいようです。
私は大学卒業までにHSK(漢語水平考試)6級の獲得を目指しているので、オンライン留学も、ある程度の学習歴がある人向け(ビジネスレベル)のコースを目指しています。
なお、HSKは国際的な中国語の語学検定試験で、6級は最上級です。日本の文部科学省に相当する、中国政府教育部直属の機関である孔子学院总部/国家汉办(中国政府が世界各国の大学と提携して中国語および中国文化を教育する機関の中国国立事務所のこと)が主催しています。
大学では今年度の情報はまだ解禁されていませんが、昨年の情報を見るに、8月の夏休み期間に学習する「夏季」コースなら、予習・復習の時間も確保できて効率よく学べそうです。昨年の情報によると、私が目指すコースは、クラス10人ほどで1カ月間、月~金の毎日7時30分から4時間の授業(全20コマ)を行い、料金は8万5400円でした。
社会人でも「お仕事の後にオンライン留学」が可能
以上は大学生向けのコースですが、一般人向けのオンライン留学サービスも各所で行われており、中学生や高校生、社会人でも参加できます。
例えば、「英検」でお馴染みの公益財団法人日本英語検定協会と協定を結んでいる一般財団法人海外留学推進協会では、英語を中心にさまざまなオンライン留学先や目標を設定したプログラムを選択でき、Zoomによる説明会やカウンセリングを行っています。スケジュールが合うときに見てみると、参考になると思います。
また、HISグループの株式会社HIS語学研修デスクのように、旅行会社が企画しているサービスもあります。HIS語研修デスクのセブ島の学校へのオンライン留学の例を、ここで紹介しましょう。
目標とする「コース」と、「期間」を選び、期間別の料金表は以下の通りです。また、一回の留学でマンツーマンクラス、グループクラス、スペシャルクラスでの授業を全て受けることになります。例えば「CL 英検総合コース」の「1週間」に申し込む場合、合計9コマ(マンツーマンクラス4コマ・グループクラス4コマ・スペシャルクラス1コマ)を1万2100円で受講できます(別途、AIスピーキング代金が3300円必要とのこと)。
コース | 1週間 | 2週間 | 4週間 | 8週間 | 12週間 |
ESL 英語総合コース | 1万1000円 | 1万4300円 | 1万8700円 | 3万0800円 | 4万1800円 |
TOEIC 英語総合コース | 1万6500円 | 1万9800円 | 2万4200円 | 3万5200円 | 4万7300円 |
IELTS 英語総合コース | 1万6500円 | 1万9800円 | 2万4200円 | 3万5200円 | 4万7300円 |
CL 英検総合コース | 1万2100円 | 1万5400円 | 1万9800円 | 3万1900円 | 4万2900円 |
クラス | 最大人数 | 1週間 | 2週間 | 4週間 | 8週間 | 12週間 |
マンツーマン(25分) | 1人 | 4コマ | 8コマ | 16コマ | 32コマ | 48コマ |
グループ(45分) | 4~6人 | 4コマ | 8コマ | 16コマ | 32コマ | 48コマ |
スペシャル(45分) | ~16人 | 1コマ | 4コマ | 8コマ | 16コマ | 24コマ |
中国語では、日本の一般社団法人日本青少年育成協会/HSK日本実施委員会/HSK留学推進室が主催しているオンライン留学プランもあります。土日×4週間(計8コマ)のプログラムとHSK試験1回分がセットになって、4万4000円という内容です。
土曜日と日曜日の9時〜12時に50分×3枠を1コマとして授業を実施し、期間中はWechat(中国のSNS)で講師に質問ができます。コースはHSK4〜6級を目指すコースに分けられ、プログラム終了後に日本でHSKの試験を受けることになります。
授業はあくまでもアウトプットの場! オススメの予習・復習術
以上がオンライン留学のプラン例でした。ただ、私が思うには語学を学ぶやる気があっても、授業を受けているだけでは絶対に身に付きません。語学の授業は、あくまでもアウトプットの場です。授業外の時間での予習・復習でインプットして、授業中の会話で実践実践することで、初めて「身についた」と言えるのだと考えています。
そのため、いくら手軽にオンライン留学できるとしても、予習・復習の時間がしっかり取れないと、あまり効果が期待できないと思います。オンライン留学は時差の関係もあって夜中などに利用できるものも多いので、無理なく参加できるスケジュールを組み、予習・復習の時間も確保することが大切でしょう。
オンライン留学でも、大学のオンライン授業のように、授業で使う資料は初回の授業の前に(もしくは毎回の授業の前には)配られます。これを使って実際に私が行っていた予習・復習の方法を紹介します。語学初心者向けとしてもオススメできる方法です。
予習では、次の授業で学習する範囲をざっと頭に入れ、疑問点を明確にしておくことを目標とします。まずは資料に目を通し、そして分からない文や単語の意味と読み方を調べておき、それでも分からないことは、授業を聞いて、または授業中または時間外に先生に質問することで解決を目指します。こうすることで、余裕をもって授業で発言することができますし、あらかじめ疑問点を明確にしておくことで、ピンポイントで苦手を克服することができます。
復習では、習ったことをしっかりと理解し、記憶に定着させることを目標とします。ほとんどの人は一度習ったことは時間が経つと忘れてしまうので、定期的に資料を見直すことが大事です。
効果的な復習方法には個人差がありますが、私は週末に1週間分の範囲をまとめて声に出しながら書くことで記憶の定着を図りました。電車内などのスキマ時間に目視するだけで覚えられるという人の話も聞くので、自分に合うタイミングと方法で行うのがいいと思います。理解度が十分かどうか判断する目安は、「他人に説明できるようになる」ことだと大学の先生によく言われました。
語学学習の初期段階では、例文を用いて文法を覚えることや、語彙力を強化する授業がマストとなるので、単調な作業ばかりに感じられて続けるモチベーションがなくなってしまうことも多いと思います。しかし、学ぶ内容のレベルが上がるにつれて、応用をきかせて他者と会話をしたり、物語を読んだり、意見を論理的に述べて他者と討論したりと、幅広く応用できるようになって、学ぶ楽しさが増していきます。
ここまでのレベルになると、もはや授業は「学習」というより「クラスメイトとおしゃべり・読書」をしている感覚になってくるので、まるで娯楽の一種であるかのように、楽しみながら授業が受けられるようになります。
謎の外国人集団からメッセージ⁉「世界からのサプライズ動画」とは
最後にオマケとして、自宅学習している合間にYouTubeで出会った「世界からのサプライズ動画」を紹介したいと思います。
これは、世界中のユーザーからのオーダーを受け、世界中のさまざまな人がパフォーマンス動画を行い、配信するサービスです。例えば、以下の「新成人の皆様!ご成人おめでとうございます!!」は、筋骨隆々のマッチョ集団(公式サイトの説明によると傭兵の人たち)が、日本の新成人に向けたメッセージを読み上げ、ダンスを披露してくれています。
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動画のユニークさが話題を呼び、現在はTikTok、Twitter、Instagram、YouTubeで配信されています。視聴者からは「いつ見ても笑顔になれる」「彼らの日本語が日に日に上達していて凄い」との声があり、ニュースにも取り上げられました。私自身も彼らの虜になってしまい、毎日視聴しています。
本サービスは2015年に中国で始まり、2019年には台湾のMIYABI INTERNATIONAL INC.、2021年には日本の一般社団法人WORLD SMILEが、日本でのサービスを展開しています。
これらの動画が語学の学習になるわけではありませんが、こうした「人を楽しませるためのパフォーマンス」には、出演者たちの文化の特色が表れていると思います(もちろん、すべてが伝統的な文化にのっとったパフォーマンスというわけではありませんが、パフォーマンスを行う前後の表情や何気ない仕草にも、地域ごとの文化が感じられると感じます)。元気いっぱいの彼らのダンスには元気をもらえますし、同じ言葉でもそれを言う人によってどのように雰囲気が違ってくるのか、といった視点で見ても、斬新で興味深い内容だと思いました。
個人でも動画の制作依頼が可能で、その動画は依頼者個人に納品されます(ただし、執筆時点では人気のため依頼受付が停止されています)。読み上げてほしいメッセージと、パフォーマーを指定でき、例えば「黒ズボンマッチョダンス(発砲3回付き)」が6000円、「アフリカ七色服装美女ダンス」は5500円、「アフリカ子供ダンス」は4500円など。
ほかにも、ドバイ人やエジプト人、マラウイ人、ウクライナ人、タイのニューハーフなど、さまざまな人たちに依頼できます。また、追加オプションとして、「発砲」「顔写真」「音楽指定」などが500円で依頼可能だそうです。
YouTubeなどにアップされている動画の例を見ると、お祝いごとに限らず、友人や知人に普段直接(照れくさくて、などで)言えないようなこと、ジョーク混じりのメッセージを依頼する人もいて、まさにサプライズメッセージとして、さまざまな場面で使われていることが伺えます。また、企業からの依頼も可能で、お店の宣伝・集客などにも使われているようです。
依頼者が支払った料金は彼らの生活費となっており、中には「子どもたちの学費や家賃を払えるようになった」との声もあるようです。また、一部はアフリカなどへの寄付にも使われているそうです。
WORLD SMILEではこの取り組みを「思い出に強く残るメッセージ動画を友人・知人にプレゼントすることができるだけでなく貧困に苦しむ人々への支援も同時にできる画期的なサービス」であるとしています。もっと多くの人にこうした取り組みを知ってもらい、世界をよくすることにつながればと思っています。