詳しく分かる! 1分でも分かる!「源泉徴収票」の見方を図解で説明【令和3年(2021年)分】 

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給与明細に同封された紙はなんなの?

 一昨年・昨年(2020年・2021年)の年末調整で「収入」と「所得」の記入に困った人が多かったようだ。その年の年収・所得は12月の給与をもらうまで確定しないが、1つの目安として前年の年収・所得が記入された源泉徴収票を参考にした人もいるだろう。

 毎年12月か1月の給与明細と一緒に受け取る「源泉徴収票」には年収・所得・納税額が記載されている。今回受け取った源泉徴収票を見れば、ご自身の令和3年(2021年)分の年収・所得・納税額が分かるのだが、源泉徴収票を見ても「年収」「所得」「納税額」とは書かれていない。

 扶養親族の構成、生命保険の加入状況など、さまざまな情報が1枚の紙にコンパクトにまとめられた源泉徴収票だが、その見方やチョットした税に関する知識がないと、そこに書かれた数字の意味が理解できない。この記事では、今までジックリ見たことのない人に、源泉徴収票の見方を図解で詳しく説明したい。

源泉徴収票とは

 源泉徴収票とは、1年間に会社から支払われた給与等の金額(=年収)や納めた所得税の金額などが記載されたものだ。年収から納税額を算出するために必要な「配偶者控除」「扶養控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」など、個人個人で異なるさまざまな控除も記載されているので、これを見れば納税額が算出された根拠まで分かる。退職時に受け取った源泉徴収票は1月から退職までの収入、社会保険の支払い額、納税済みの所得税が記載されている。転職した場合や、再就職をせずご自身で確定申告をする場合に必要となるので大切に保管したい。

1分で分かる源泉徴収票

 先にお伝えしておくと「この記事はメッチャ長い」。目標として、最後まで読めた人はご自身の源泉徴収票に書かれた数字の意味が理解でき、計算すると納税額がピターッと合うことを目指している。とはいえ、受け取った源泉徴収票を目の前にして「とりあえずどこに年収・所得・税金が書かれているかだけ知りたい」と思う人もいるだろう……ってことで、まずは1分で源泉徴収票に何が書かれているかだけ分かるように説明したい。

 記載例は河野一太郎さんの令和3年分の「給与所得の源泉徴収票」。家族構成(扶養親族)はパート勤めの奥さん、大学生と中学生の子、同居する72歳の父がいる。

 最初の「支払金額」の欄に書かれているのが年収(紫色)。その右側の「給与所得控除後の金額」の欄が所得(青色)。年末調整で記入の目安にするのはこの2つだ。1つ飛ばして右端の「源泉徴収税額」の少なめな金額が納税額(緑色:所得税+復興特別税)だ。最低限この3つを知ると、スルーよりは大幅な進歩だ。

 ピンクの部分は控除(=税金の計算から差し引かれるもの)で、下から順番に、支払った生命保険料の明細。矢印の先はそれから算出した生命保険料控除の額。その左側が支払った社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)、右側が地震保険の控除額。

 その上の行は扶養する家族で、左端の「○」は配偶者控除(この事例では奥さん)、右が控除額。その右側の特定欄の「1」は“ほぼ大学生”が1人。その右側の老人はじいちゃんかばあちゃんが1人。もう少し右側の16歳未満……は中学生以下の子が1人を表している。この1行で河野一太郎さんの扶養している家族の構成がおおよそ分かる。これらピンクの控除の合計額が、上段の所得と税金の間に書かれている。これで納得された方は以上だ。「給与所得控除? 配偶者控除? 何それ?」という人は、続きを一読いただきたい。

「源泉徴収」と「源泉掛け流し」

 源泉徴収票という言葉はイマイチ分かりにくい。また、納税額の欄は「源泉徴収税額」となっている。「源泉徴収税額って意味分からん」と思われた人はいないだろうか。言葉としては聞いたことのある源泉徴収だが、なぜかピンと来ない感じがする。

 “源泉”と言えば「源泉掛け流し」だろう。源泉掛け流しは、温泉の元(=源泉)から引いたお湯を、そのまま湯船に満たすこと。水で薄めたりしていないという意味だ。源泉徴収は、源泉=元から(←会社が従業員に給与を支払う前に)税金を徴収することを意味している。平たく言うと「あとから自分で税金分を納めてね」ってすると、納税しないヤツがいそうだから、会社(=源泉)が税金分を差し引いて(=徴収)給与を支払うことを言う。源泉徴収税額=すでに(会社が)納税済みの税額、と解釈しよう。

源泉徴収票と所得税の計算式を3つのパートに分けて色分けしてみた

 源泉徴収票にはさまざまな数字(人数、金額)や○印が記載されているが、それらの関連性は所得税の計算方法を知らないと理解できない。所得税の計算式と源泉徴収票に記載された数字や印を照らし合わせながら、順番に説明していこう。

 手元に「令和3年分 給与所得の源泉徴収票」を用意いただき、自身の源泉徴収票で実際に計算・検証してみると、より深く理解できるだろう。ピタッと計算が合うと“快感”だ。

 まずはサラリーマンの所得税の計算式を確認してみよう。1行目は収入(年収)から所得を求める式。2行目は所得から課税所得(税金の対象となる所得)を求める式。3行目は課税所得の額に応じた税率を掛け、所得税の納税額を求める式となっている。

 この3行の式を、1行目をブルー、2行目をピンク、3行目をグリーンとして、源泉徴収票の該当する部分を色分けしてみたのが下の図だ。1行目と3行目の部分はわずか。この2行は決まった式で計算できるので理解も容易だ。大きなピンクの部分は独身、既婚、扶養する子や親の有無、生命保険の支払い額……などさまざまな個人の事情により異なっている。

「収入」と「所得」ってどう違うの? 「給与所得控除」って何??

 順番に式と源泉徴収票の該当する部分を見ていこう。1行目の式と源泉徴収票のブルーの部分。事例では(会社から見た)「支払金額」が650万円、「給与所得控除後の金額」が476万円となっている。650万円は給与と賞与の合計額、令和3年の(自分から見た)「収入」=年収だ。「年収は?」と尋ねられたら、ここに記載された金額を答えればよい。

 右側の476万円は収入から「給与所得控除」というものを引いた金額で、「所得」と呼ばれている。一昨年から年末調整の申告書に記入することとなった「収入」と「所得」の関係は1行目の式で求めることができる。

給与の収入金額-給与所得控除=給与所得

 この式を見て「給与所得控除って何?」と思われた人がいるだろう。給与所得控除はサラリーマンの必要経費と言われ、「スーツ、カバン、クツ代、自腹スマホ&電話代、自腹PCなど、会社には請求できないけど仕事に必要な経費があるはず」ということで、収入に応じて一定額を「税金を払わなくていいよ」と課税の対象から差し引いて(控除して)くれるものだ。給与所得控除は年収に応じて以下の計算式で求められる。

給与等の収入金額(年収) 給与所得控除額
162万5000円以下 55万円
162万5000円超 180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超 850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 事例の河野さんの給与所得控除を計算してみよう。年収が650万円なので「360万円超 660万円以下」に該当し、計算式は「収入金額×20%+44万円」となる。

給与所得控除
650万円×20%+44万円=174万円

給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
650万円-174万円=476万円

 源泉徴収票には書かれていない給与所得控除の174万円を年収から差し引くと、所得の476万円が算出できる。

 ご自身の源泉徴収票を見ながら「支払金額は638万2000円だから、所得額は466万5600円……」などと計算すると、源泉徴収票に書かれた額と微妙に金額差が発生した人がいるはずだ。

 年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「令和3年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(PDF)という速算表を使用してほしい。表の638万2000円の部分を見てみよう。

 年収638万円以上638万4000円未満の人の給与所得控除後の金額は466万4000円となっていて、年収が638万1000円でも638万2000円でも一律466万4000円となる。これが金額差の原因だ。

 パソコンが普及する以前、そろばんや電卓の時代には1円単位の細かな計算をするより速算表の方が便利だったと思われ、その時代のルールが今も続いているのだろう。ご自身の源泉徴収票を正確に計算したい方は、この速算表で確認していただきたい。

謎だらけの「所得控除」欄を解読する

 2行目の計算式は1行目で算出した給与所得から各種所得控除を引き算して「課税所得」を算出する式だ。

給与所得-各種所得控除=課税所得

 この式の各種所得控除が源泉徴収票のピンクの部分だ。源泉徴収票の大きな面積を占めていて、○印や人数、金額が混在し、少し税の知識がないと解読することができない。個人個人の納税額を左右する重要な部分であり、源泉徴収票の分かりにくさの、ある意味で主役とも呼べる部分なのでジックリ見ていこう。

 ピンクの部分の最上段「所得控除の額の合計額」に316万円と記載されている。その下の段には○印や数字の「1」、38万円、96万円、12万円などの金額が記載されている。これらの金額を足しても引いても合計額の316万円にはならない。隠された控除もあり、予備知識なしにこれらの関係を理解するのは不可能だ。

 最初に「所得控除とは」から説明しよう。所得控除は「大学生の子がいるとお金掛かるよね」「親と同居していると生活費が増えるよね」といった感じで、扶養する家族や生命保険の支払いなどの個人個人の事情を考慮して、所得から一定額を差し引き(控除し)、課税所得(税額を算出する金額)を引き下げ、納税額を減らすものだ。控除額が増えれば納税額は減ることになる。同じ年収のサラリーマンを比較すると、養う家族が多い人は独身の人より納税額が少なくなる。

 ピンクの部分が大きいのは、住宅ローン、障害者、ひとり親など、さまざまな控除の記入欄があるからだ。その中で多くの人が関係するのは配偶者控除、扶養控除といった人的控除。毎月天引きされている年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除。生命保険に加入している人の生命保険料控除だろう。代表的なこれらの所得控除について順番に説明していこう。

「配偶者控除」は年末調整の判定が反映されている

 左上の「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の「有」に○印が付いていれば控除対象となる配偶者がいるということだ。配偶者とは旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さんで、家庭によってどちらも配偶者控除の対象者となりえる。

 事例は河野一太郎さんの源泉徴収票なので、控除対象の配偶者は奥さんとなり、「有」欄に○印が付いていて、その右側の「配偶者(特別)控除の額」の金額が38万円となっている。

 この38万円はどこから来たか。もし年末調整で提出した「令和3年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」というウルトラスーパーアホみたいに長い名称の申告書のコピーかスマホで撮った写真があれば見ていただきたい。

 事例の「令和3年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 ……(長いので略)」を見ると、河野一太郎さんの年収と河野景子さんの年収から判定された控除額が38万円となっている。年末調整で提出した申告書により控除額や納税額が計算され、その結果が源泉徴収票に反映されている。

上が年末調整で提出した申告書、下が源泉徴収票。年末調整で判定された配偶者控除の額が源泉徴収票に反映されている

 もし河野一太郎さんの奥さん(配偶者)が正社員としてフルタイムで働いていて、年収が201万6000円(所得で133万円)を超えると配偶者(特別)控除の対象とならない。また、旦那さんの年収が1195万円(所得で1000万円)を超えると、奥さんが専業主婦でも配偶者控除を受けることができない。

「控除対象扶養親族」の人数から「控除額」を算出する

 配偶者控除の右側は「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」という欄がある。人数しか記載されていないので該当するそれぞれの控除額を別途算出する必要がある。

 具体的に見ていこう。「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」の下の「特定」に「1」、「老人」の左に「1」、真ん中に「1」となっている。右側の「16歳未満扶養親族の数」にも「1」と記入されている。

 扶養控除は子や親を養っていると受けられる控除だ。対象となる親族の年齢により控除額が異なっていてやや複雑なので、図を見ていただこう。

 令和3年の年末時点の年齢が16~18歳(ほぼ高校生)であれば控除額は38万円。19~22歳(ほぼ大学生)であれば63万円。23~69歳であれば38万円。70歳以上で同居していれば58万円(同居老親等)、別居であれば48万円(同居老親等以外)となっている。年齢以外の条件もあり、控除対象となるのは所得が48万円以下の扶養親族だ。

 控除が増額になっている19~22歳はほぼ大学生で、対象となる親族を特定扶養親族と呼ぶ。「大学に通う子がいるとお金が掛かるから控除を増やして税金を減らしましょう」という趣旨だ。ただし、大学に通っていることは条件となっていないので、浪人中でもフリーターでも年齢と所得の条件を満たし、生計を一としていれば(親が養っていれば)、別居でも控除の対象となる。

 もう1つ控除が増額されているのは70歳以上で、老人扶養親族と呼ぶ。老人扶養親族は同居(同居老親等)なら控除額は58万円、別居(離れた実家や老人ホームなど)なら控除額は48万円となる。

 事例の源泉徴収票を見ると、「特定」(特定扶養親族)が「1」となっているので、ほぼ大学生の子が1人いることが分かる。「老人」の欄は、真ん中の「1」は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、左側の「内」に「1」とあるのは老人扶養親族のうち、同居老親が1人いることを表している。もし別居の老人扶養親族がいる場合は真ん中が「1」、左側の「内」は空欄(0人)となる。

 老人の右側の「その他」の欄は高校生や成人など一般の扶養親族の人数を記載する。右端の「16歳未満扶養親族の数」は16歳未満の子の人数で、所得税では控除の対象とならない。

 源泉徴収票には、控除対象扶養親族の人数しか記載されていないので、その人数を控除額に換算する必要がある。事例では特定扶養親族が1人で控除額が63万円、同居老親が1人で58万円、16歳未満の扶養親族が1人で0円となる。

「生命保険料控除」も年末調整の申告内容が反映されている

 ピンクの部分の次の段は左端が「社会保険料金等の金額」。これは毎月の給料から天引きされた厚生年金、健康保険、雇用保険の合計額で、事例では96万円となっている。その右隣は「生命保険料の控除額」で12万円。その右側は「地震保険料の控除額」で1万円となっている。「摘要」の下段には12万円、9万円、12万円の金額が記載されている。ここでは生命保険の控除を理解しよう。

 「摘要」の下段の項目名は左から「生命保険料の金額の内訳」「新生命保険料の金額」「旧生命保険料の金額」「介護医療保険料の金額」「新個人年金保険料の金額」「旧個人年金保険料の金額」となっていて、5つに分類された保険料ごとの支払った金額が記載されている。

 生命保険は平成23年以前に契約したものは旧制度、平成24年以後に契約したものは新制度と分けられている。さらに旧制度は「一般」「年金」の2つ、新制度は「一般」「介護医療」「年金」の3つに分けられ、計5つに分類されている。

 保険料ごとに控除額を算出し、合計した額が上段の「生命保険料の控除額」となる。ただし生命保険料控除には上限額があり、この例では上限額の12万円となっている。5つに分類された保険ごとの控除の限度額は図のとおりだ。

 年間に支払った保険料と控除額の関係は以下の表のとおり。旧制度の控除額の上限は5万円。新制度の控除額の上限は4万円。事例では「旧生命保険料の金額」と「旧個人年金保険料の金額」でそれぞれ12万円を支払っているので、控除額は上限額の5万円ずつ。

 新制度の「介護医療保険料の金額」に9万円を支払っているので、控除額は4万円。3つの保険の控除額は5万円+5万円+4万円=14万円だが、全体の上限額が12万円なので最上段の「生命保険料の控除額」は12万円となる。

 生命保険料の控除額の右側は地震保険料の控除額。生命保険料も地震保険料も年末調整で提出した「令和3年分給与所得者の保険料控除申告書」の結果がここに反映されている。

控除額の合計が合わない……“源泉徴収票に隠された控除”とは

 ここまでの控除額を合計してみよう。合計額がピンクの部分の最上段にある「所得控除の額の合計額」の316万円になれば完璧だ。

配偶者控除    38万円
特定扶養親族   63万円
同居老親     58万円
社会保険料控除  96万円
生命保険料控除  12万円
地震保険料控除  1万円

合計       268万円

 ん~かなり足りない。「所得控除の額の合計額」の316万円-268万円=48万円足りない。48万円といえば、令和2年(2020年)から改正となった「基礎控除」の額だ。事例の源泉徴収票のどこにも記載されていないが、年間の合計所得が2400万円以下の人(=ほとんどの人)は48万円の基礎控除が受けられる。この隠された自分自身の基礎控除を足すと、所得控除の額の合計額は316万円となる。

「基礎控除」の欄が新設されたのになぜか金額は記載されない

 令和元年までは、所得が200万円の人も2億円の人も基礎控除は一律38万円だった。一律だから源泉徴収票に何も記載されないルールだった。令和2年からの税制改正により、所得2400万円から50万円刻みで基礎控除は32万円、16万円となり、2500万円を超えると0円となった。これにともない令和2年分の源泉徴収票から「基礎控除の額」という欄が用意されている。ところが新ルールは48万円の場合は記載する必要がなく、32万円、16万円、0円の人だけ記載することとなっている。一律でなくなったのなら、わざわざ隠さず48万円と記載すれば多くの人に“源泉徴収票が分かりやすくなる”と思うのだが、分かりやすくしてはダメな理由があるのだろうか。

 「所得控除の額の合計額」の316万円が算出できた。これで2行目の式が計算が可能となる。課税所得を計算してみよう。

給与所得-各種所得控除=課税所得
476万円-316万円=160万円

476万円(所得)-316万円(控除)=160万円(課税所得)

「控除」はたくさんある

 この記事の事例で触れた控除は「基礎控除」「配偶者控除」「扶養控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」。該当する人の多い控除を選んで説明しているが、これだけでも「長げ~」「面倒くせ~」と思われた読者が多いだろう。控除の種類は多く、「障害者控除」「勤労学生控除」「医療費控除」「寡婦控除」……、新しい控除として「ひとり親控除」、年末調整でも欄が用意された「所得金額調整控除」などもある。正確性・網羅性を重視してそれぞれの控除を説明をすると、読み切れない長さになるだろう。それらの控除に該当する人には申し訳ないが、ご自身で検索して調べていただきたい。

課税所得に税率を掛けると「納税額」を算出できる

 所得税の計算式、最後の3行目は課税所得に税率を掛けて所得税の納税額を算出する式だ。

課税所得×税率=所得税

 この式は源泉徴収票のグリーンの部分に該当する。グリーンの面積が小さいように内容も簡単だ。課税所得の額に応じた税率を掛ければ簡単に納税額は計算できる。まずは税率を確認しよう。所得税の税率は以下の表となっている。

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 9万7500円
330万円超 695万円以下 20% 42万7400円
695万円超 900万円以下 23% 63万6000円
900万円超 1800万円以下 33% 153万6000円
1800万円超 4000万円以下 40% 279万6000円
4000万円超 45% 479万6000円

 税率は課税所得の額により5%から45%まで上がっていくが、課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、“その金額の部分”に対する税率となる。

 例えば課税所得が295万円の場合、195万円までの部分の5%と、195万円を超え295万円までの部分(=100万円分)の10%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。

課税所得295万円の所得税

195万円×5%=9万7500円 ①
100万円(295万円-195万円)×10%=10万円 ②

①+②=9万7500円+10万円=19万7500円

となる。税率表の右側にある控除額(差し引く額)を使用すると、簡単に計算することができる。

課税所得金額×税率-控除額=納税額
295万円×10%-9万7500円=19万7500円

 では、事例の河野一太郎さんの所得税を計算してみよう。

課税所得×税率=所得税
160万円×5%=8万円(課税所得は1000円未満の端数は切り捨て)

 源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額=所得税」の8万1600円にかなり近づいたが、まだ1600円の差異がある……あとチョットだ。所得税の納税額は計算のとおり8万円で間違いないが、平成25年(2013年)から25年間は東日本大震災の復興特別所得税が上乗せされる。復興特別所得税=「所得税の納税額の2.1%分」を上乗せしよう。

8万円+(8万円×2.1%)=8万1680円
100円未満を切り捨て  =8万1600円

 これで源泉徴収票の記載された金額とピッタリ一致した……“快感”。ご自身の源泉徴収票で手順に沿って計算をして、納税額が合うとかなりの達成感があるだろう。応用すれば「生命保険に加入・解約すると税金はどうなる?」「歳をとった親を実家から呼んで同居すると税金はいくら減る?」など、先々のご自身の税金を知ることも可能だ。

 計算して微妙に違った人は以下の点を確認していただきたい。

  • 年収660万円未満の人の所得は計算式ではなく速算表を利用する
  • 課税所得は1000円未満の端数は切り捨ててから税率を掛ける
  • 復興特別所得税は100円未満を切り捨て

 事例の源泉徴収票に記載された年収から所得税算出までの流れをイメージ図にしてみた。全体を把握するときの参考にしていただきたい。

 源泉徴収票は、給与所得控除、各種所得控除額、課税所得、税率など、源泉徴収票に記載されていない所得税の算出方法を知らないと理解できない。源泉徴収票をもらっていたサラリーマン時代は理解もしていなかったし、理解しようとも思わなかった筆者には「源泉徴収票の見方も知らないの?」「常識だよ」と言われているようで、なんとなく嫌味な書類にも感じられる。

 個人的にはA4用紙にして、人数だけでなく控除額を記載し、「①-②=課税所得③」のように解説付きにすれば国民の理解が深まると思うのだが、現状はハッキリ言って「わざと分かりにくくしていませんか?」レベル。国民に税金の仕組みを理解して欲しくない姿勢の表れとも感じられる。

 前述のとおり、東日本大震災の増税は25年間。まだ折り返し前だ。新型コロナウイルスの終息後には新たな増税が始まるだろう。その期間が30年間、40年間になると、一部の読者は亡くなるまで増税が続くかもしれない。多くの国民にとって税は切っても切れない、いや切りたくても切れない関係なので、これを機会に少し税について関心を持っていただきたい。

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