人々を不安にする様々な「瀬戸際」

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正直、困った事態になったと思っています。一歩間違えれば戦後生まれの我々に未経験ゾーンの不安な日々がやってくるかもしれません。これは不安感度が高い日本人だけではなく、世界中共通の問題です。不安が先行する「瀬戸際」問題、そしてそれにどう対応すべきか考えてみたいと思います。

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不安の一つ目はウクライナ情勢で本当にロシアのウクライナ侵攻が起こりえるのか、そしてそれは「侵攻」という一方的なもので終わるのか、NATO軍やアメリカはどこまで対峙する気なのか、これが読めません。一歩間違えば大規模な戦争になりかねない事態ですが、日本国内では遠い国の難しい話としてインターネットのポータルサイトの記事ランクにすら上がってきません。

個人的には今週末から来週が山場だと思っています。気候条件と北京五輪、旧正月で気がそちらに流れている合間を突くことはあり得ます。プーチンはここにきて引くことはないでしょう。国威もありますし、10万の兵力の士気を維持するには引っ張りすぎるのはよくないことは分かっています。

次に株価の大きな下落です。今日もダウは午前中1100㌦下げて午後に1200㌦上げるといった不安定感を見せました。なぜ、これが人々を不安にするのか、といえば多くの欧米の人たちは高い株価で表面上の資産額が増え、懐が緩んでいたことで多少の物価高も乗り越える原動力だとみているからです。つまり、昨年までの企業決算が好業績であったのは本質的な業績回復ではないと考えています。

多くの専門家やアナリストは22年度の企業業績は21年に比べ下がると予想しています。その場合、以前にもお伝えしたとおり、賃金インフレが起きているため、企業の解雇が始まる公算もあります。つまり、あり得ないような高給で採用された人ほど「ひと時の夢」で終わるのではないでしょうか?

今のアメリカの失業率3.9%は出来すぎで経済がフルで回復していない中、かなりいびつな数字だとみています。物流は航空便が落ち着き始めており、船便もあと半年程度で落ち着くでしょう。すると年後半には北米のインフレ率は2-3%に収れんするのがナチュラルです。見方を変えれば7%ものインフレがずっと続くという前提でFRBが対策としての利上げを打ち出しているわけですが、これは私は読み間違いだと思っています。今週、25-26日にFOMCが開催されますのでNY時間の26日午後2時は極めて注目度が高い一大イベントとみています。

2月3日から始まる北京五輪も政治化しているうえにオミクロン対策が尋常ではない中国の防疫ぶりが世界で改めて紹介されるでしょう。いわゆるゼロコロナ政策で完全バブル方式で選手村のレストランも自動調理器に自動配膳システムを用意しています。パッと見る限りまずそうな食事で選手や関係者は果たしてフラストレーションを溜めないのか、心配です。

そのオミクロン、日本では1月末から2月上旬にピークアウトという報道がちらほら出ております。人々は安堵できるのか、こちらもその瀬戸際にあります。私も以前、1月末ピークアウト説を述べたと思いますが、問題は仮にそうなったとしても、それで突然春が来るわけではないということです。人々のマインドに植え付けた2年にわたる不安感は簡単に取れるものではなく、コロナからの精神的回復には相当時間がかかるのです。

私が一番不安に思っているのはこれら日々の生活から地政学的問題を含め、暗い影が多すぎ、これを乗り越えられない人が増えた時の社会不安を気にしています。無職だけならともかく、金がないので犯罪に手を染めるといった人も増えやすくなるでしょう。オミクロンで濃厚接触扱いになった人達の恨みも出てくるでしょう。「なんで、お前のオミクロンで俺まで仕事に行けないんだ」と。

人の心理はとても反転しやすいもので昨日までは「大丈夫だよ」と言っていたのに突然敵意を持つようになることはしばしばあります。今、世界の人々はこの不安の真っただ中にいるのです。多くの人が何らかの不安を口にします。

乗り越える方法はあるのでしょうか?たやすくありません。戦争も経済問題もオミクロンもどれだけ英知を集めたとしてもそれを報じる情報過多で人々の判断基準に幅が出来、一致させられないのです。更にオミクロン株は別の意味での試練を与えています。弱毒化という中途半端さがまん延防止という行動規範に対して緩みがちで個々人が以前にも増して好き勝手な行動し、統制がとれないのです。

私は社会が歪まないよう、その骨格だけはしっかり保つことを期待します。これらの問題に無傷で対応することは不可能です。しかし、我慢強い日本人ならここはしのげるはずです。これは一種の天災であり、それがいくつか重なってしまったのです。春は必ず来ると信じるしかありません。夜明け前の今が一番苦しい時だと思うしかないのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月25日の記事より転載させていただきました。