マスクと日本人:それでも外せない日本人のメンタリティ

アゴラ 言論プラットフォーム

マスク着用が個人の判断となってからひと月以上経過しましたが、今だ9割の人がマスクをつけている(日経)と報じられています。これは他国と比べて異様に高い水準だと思います。なぜ、日本人はマスクを外せないのか、考えてみたいと思います。

私の見方は日本人がマスクを手放せないのは感染症予防、あるいは花粉症対策だけが主因ではないとみています。もちろん、コロナの状況を見ると一定の水準から下がらなくなりました。東京都で1000人越え、全国で1万人弱の水準がほぼ一カ月続いています。多分、風邪やインフルエンザ同様、常に一定数の発症はあるという前提に立てば、少なくとも今は十分改善しているのだろうとみています。重症者数も死亡者数もグラフで見る限り着実に減ってきており、現時点では良化しているようです。その状況を鑑みれば9割の人がマスクをし続けるというのはかなり違和感があるのです。

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ではなぜ、それでもマスクを外せないのでしょうか?私は日本人のメンタリティが強く出ているのだと考えています。それにはいくつかの切り口があります。

1つ目は「人にご迷惑をかけてはいけない」です。「気遣いの日本人」の性格が強く表れているのでしょう。まかり間違って自分がマスクをつけなかったことで感染を広げたり、あるいは感染源ではないかと疑われるだけでおぞましいのです。そんなあらぬ噂を流されるぐらいならマスクをつけておいた方がいいという訳です。

これは人に先んじることを嫌がる日本人の性格でもあります。「誰かそうしないと自分は出来ない」という追随型の方が日本には圧倒的に多いのです。特にその傾向が強く出るのが主婦層です。例えば5-6人ぐらいでレストランに入って注文の品物を決めるのは至難の業です。メニューを全部舐めるようにチェックし、それぞれのアイテムの論評会を行い、「どれもおいしそうだわ、決められない」となり、店員が3度目ぐらいに注文を取りに来た時に勇気ある一人が「私、〇〇」と言ったとたんにどどっと他の人も続きます。

実は女性の心理は「相談する時点」で既にマインドは固まっています。相談の真意は背中を押してもらいたいだけなのです。なので、自分の考えと違うことを言われると悩むのです。思っていたことを言ってもらえると背中を押した形になり、「そうそう、そうなのよー」になります。これは私が言っているのではなく、心理学的な分析なのであしからず。

これが小グループ化しやすい基本的要因です。「お仲間化」と称されるもので5-6人のサイズはうってつけです。10人では多いし、3-4人ではちょっと少ない、実に微妙なテリトリー的思考なのです。そういう環境下、強い結束力がある人間関係を崩すように一人だけ先陣を切って「マスクを取る」のは実に勇気がいるし、「お仲間」から外されるリスクを考えると「やっぱり、つけておこー」になりやすいのです。

次に企業などの保守性があります。いわゆる「完全に個人の判断に委ねる」という思い切った企業はまだ少なく、会社が一定のルールや目安を提示しているケースが多々あるのです。「1メートル以内の会話はマスク」「社食では黙食」「不繊維マスク着用を求める」「接客担当は要マスク」などいろいろです。理由は社内に必ず何か言う従業員がいるのです。「会社は個人の判断に委ねると言いますが、それで何かあった時に『不作為の責任』があるのではないか」という訳です。人事部や総務部はこういう指摘に弱いし、社長に「そこまで必要ない」と言い切る方も少ないでしょう。

外国人と日本人の顔の表現力の相違もあります。よく言われるのですが、日本人は目でしゃべります。欧米人は口でしゃべります。意味わかりますか?日本人は感情を目で行うことが多いのです。ぎろっと睨む、たれ目になる、釣り目になる…といったように目の表情で判断することは多いのです。一方、欧米は口です。口の動きでその人の感情表現を見ます。

日本でお馴染みのスマイリーフェイス(にこちゃんマーク☺)は1963年アメリカ生まれで日本には70年頃に広まったのが始まりです。あのスマイリーフェイスの多くの種類は口が様々な形に描かれてるのはご承知の通りですが、それぐらい欧米では口が重要なのです。

分かりやすい比較をすると欧米の人はサングラスを多用します。もちろん眩しいこともあるのですが、そうではないところでもサングラスを外さない人をおみかけします。それでも違和感を訴えないのは口が見えるからです。一方、日本ではサングラスそのものがそんなにポピュラーではありません。日本の夏の日差しの中、なぜ、サングラスをしないのか、と言えば「隠してはいけないところ」なのです。

たかがマスク、されどマスクとはこのことでマスクの話だけでも一日分のブログが書けてしまうほど奥深いものがあるということですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月16日の記事より転載させていただきました。

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