日本財団、小型観光船の無人運航を実証–横須賀市猿島で、世界初

CNET Japan

 日本財団は1月11日、横須賀市猿島で小型観光船の無人運航による実証実験を実施し、航行に成功したと発表した。

 小型観光船を対象とした離桟から着桟までの一連の航行を自動で実施する無人運航の実証実験は、世界初となる。


小型観光船では世界初の取り組み

 同財団は、2020年2月から無人運航船の開発実証プロジェクト「MEGURI2040」を推進している。5つのコンソーシアム(複数の民間企業体)と共同で、無人運航船の開発に取り組んでおり、1月から3月にかけて、5つすべてのコンソーシアムで実証実験を実施するという。


各コンソーシアムが「無人運航船」実証実験を準備中

 今回実証実験に成功したのは、5つのコンソーシアムのうちの1つである「無人運航船@横須賀市猿島プロジェクト」。メンバーとしては丸紅、トライアングル、三井E&S造船、横須賀市が名を連ねている。

 現在、日本国内には旅客船が約2000隻あり、離島との交通手段などとして利用されている。しかし、国内旅客船の船員は2000年以降、約1万人から約7000人と、20年間で3割減少。船員不足と船員一人当たりの負担増加が課題となっている。

 今回の一連の技術開発と実証実験の成功により、無人運航技術の小型船への転用が可能となり、小型船へ広く普及することで離島住民の生活を支える小型船舶への利用や、船員の半数以上が50代以上である船員不足の解消が期待できるという。

 なお、同実験では新三笠桟橋から猿島までの約1.7kmの距離(離着桟含む)を無人で運航した。船には、画像解析による小型船の検出を目的としたカメラを3台、GNSS、AISなどのさまざまなセンサーを設置。

 センサー情報から他船などを検出する障害物検知システムが他船情報を自律操船システムへと送り、自動で他船を避航したという。また、有人でも操船が困難とされる離桟や着桟時においても、自律操船システムによる無人での操船を実現している。


船に搭載された障害物検出のためのカメラ

自動で動くスロットル(レバー)

 同財団は、無人運航船は海の事故の減少や海運の人手不足の解消といったさまざまな課題の解決につながるものとして期待されていると説明。ICTやAI、画像解析技術をはじめ、日本が世界的に高いレベルを持つ技術を生かすことができる未来の産業として期待され、研究、開発が進められているという。

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