一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA、ジェイタ)は、12月17日に記者会見を開催し、「電子情報産業の世界生産見通し」および「カーボンニュートラルの実現に向けてデジタル分野が貢献するCO2削減ポテンシャルと世界需要額見通し」という2つの見通しを発表した。
電子情報産業の世界生産見通しは例年JEITAが発表している見通しで、JEITAが会員企業などに聞き取りを行なってまとめた2021年と2022年の電子情報産業の産業規模の見通しなどが触れられている。「カーボンニュートラルの実現に向けてデジタル分野が貢献するCO2削減ポテンシャルと世界需要額見通し」は、注目の特定分野に関する調査で、今年はカーボンニュートラル(CO2の排出と吸収のバランスがとれていること)の実現などに関するJEITAの見通しや提言がまとめられている。
JEITA 代表理事/会長 綱川智氏(株式会社東芝 代表執行役社長 CEO)は「カーボンニュートラルを実現にはデジタル技術の活用が鍵になる。デジタルでカーボンニュートラルを実現する阻害要因を解決していき、持続可能な社会を実現していく必要がある」と述べ、自動車の電動化などで話題になっているカーボンニュートラルの実現には、ITなどのデジタル技術の活用が鍵になり、同時にそれが電子通信産業の成長に繋がっていくと説明した。
2021年の電子情報産業の経済規模は3.36兆ドルで、前年比11%成長になる見通し、22年も引き続き成長
JEITA 代表理事/会長 綱川智氏は「これまで会長会見などは完全オンラインで開催してきたが、今回は対面とオンラインのハイブリッド形式で開催することができるようになった。ここ2年は社会全体が大きな変革を迫られた。リモートにはリモートの良さが、対面には対面の良さがある。実際、対面で開催したInter BEE 2021では、対面でしか体験できないことがある、対面で開催してもらえてうれしいという声を多数頂いた」と述べ、JEITAにとってもコロナ禍で対面のミーティングや記者会見、イベント(JEITA主催のCEATECは2年連続オンライン開催になった)などが開催できなかったことが続いてきたが、そうした社会状況にもようやく改善の兆しが出てきているとした。
綱川氏は「隗より始めよ、ではないが、JEITAの事務局でも働き方改革を進めている。会議のオンライン開催、ペーパーレス化の推進などのデジタル技術を利用することで、効率よく働くことが可能になった。そうしたデジタル技術により日本の働き方はまだまだ改善の余地があり、JEITAでも進めていき、デジタルトランスフォーメーションを加速していく必要があり、それを通じてもSociety 5.0へ近づいていきたい」と述べ、JEITAでも働き方改革を進めている他、今後もさらにデジタルトランスフォーメーションを推進していくと強調した。
そうした中で本日JEITAが公開した「電子情報産業の世界生産見通し(2021年12月)」について言及し、日本の電子情報産業の現状について説明した。なお、電子情報産業の世界生産見通し(2021年12月)は@@|https://www.jeita.or.jp/cgi-bin/public/detail.cgi?id=845&cateid=1|JEITAのWebサイトで全文がPDF形式で販売されている|n@@(頒価会員3,300円、会員外6,600円)。
綱川会長は「電子情報産業の世界生産額は2021年にはリモートワークや5Gの整備などの設備投資などにより、前年比11%増となる3.36兆ドルを記録した。2022年は巣ごもり需要なども一巡したことで、前年比5%増となるが、生産額は3.54兆ドルとなり過去最高に達する見通しだ。特異に通信機器、電子部品、半導体などが伸びると予想されている」と述べ、グローバルに電子情報産業の成長は来年も続き、2021年ほどの成長ではないが成長を続け、過去最高規模になる見通しだと述べた。
また、そのうち日本企業の世界生産は、2021年が前年比8%増となる37.3兆円、2022年には2%増の38兆円に達する見通しで、グローバルほどではないが、日本の電子情報産業も引き続き成長していると説明した。さらに、そのうちの国内生産額は2021年が前年比11%増の10.9兆円で、2022年には前年比2%増の11.2兆円に成長すると説明した。綱川会長は「2022年は各種のデータ連係、自動化などの進展により需要が拡大する」と述べ、2022年にも引き続き国内企業の成長傾向が続いていくと説明した。
工場の再開や増産などにより半導体逼迫は徐々に解消の方向と考えているとJEITA 綱川会長
会見の最後には、会場にいる記者、オンラインで参加している記者からの質疑応答が行なわれた。なお、司会からはJEITAの活動以外の個別企業の案件に関する質問は遠慮してもらえるように通知があった。
Q:2021年には半導体逼迫などの課題があったが、それでもここまで延びている。半導体逼迫の影響をどう考えている?
綱川会長:2021年はデジタル化で底堅く、労働変革、自動車の電装化などが(高成長の)要因となっている。その一方でITリモートや巣ごもりの需要は一段落し、今後延びる要素としては通信容量の増大、データセンターへの投資拡充などが考えられる。
半導体逼迫に関しては、東南アジアの工場が止まるなどの影響があって混乱が起きたが、工場が再開していることもあって、徐々に解消していく方向だと考えている。半導体メーカー各社も増産しており、逼迫の影響は減少していく方向だと考えている。
Q:カーボンニュートラルの対策で、デジタル5分野で需要が伸びていくと説明されたが、JEITAの会員企業にとってはチャンスなのか?海外の市場を日本企業はどう攻めていったらいいか?
綱川会長:一般的に言えば、カーボンニュートラルは電子情報産業にとってはチャンスだ。新しい産業は経済を成長させるチャンスでもある。エネルギー関連の値は需給調節などで向上しており、基本的にはポジティブに捉えている。5分野いろいろ検証したが、それぞれに関しての考え方で計算した。国内に関しては地方活性化、そして地方におけるデジタル化が鍵になる。
Q:日本がそうした新しい産業に取り組む上で、個々の企業が頑張る、あるいは全体でやっていくなどいろいろな考え方があると思うが、JEITAとしてはそのあたりをどう考えているか教えてほしい
綱川会長:個々にやっているのではなく、全体最適を見据えた上で進めていくという発想でやっている。2030年を見据えて何をやるべきか、全体最適の考えをしていく。JEITAはそうした議論をしていく。意見をいろいろと聞いて事業環境整備などで貢献していきたいと思っている。
全体を通して、国が半導体を活用して経済成長を目指している。国の支援をもとに個々が持っている技術を生かして成長していく。全体的にはそうした考え方が大事なのではないだろうか。
Q: 綱川会長のご自身の企業では、さまざまな動きがあった。それが株主に受け入れられるのかなどが話題になっているが、ご自身としては来年どういう年にしたいと思っているか?
綱川会長:今年もいろいろなことがある良い年だったと思う、来年も良い年にしたい。
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