コロナによる外国からの入国制限の緩和に関して99%の日本人には関係のない話だと思います。関係ない話ゆえに話題にもならないのですが、それ故に皆さんにご紹介したいと思います。
私は12月初旬に日本に業務で戻る予定にしています。滞在期間は14日間。今までは日本に行くと目いっぱい予定が入り、目まぐるしく動いていたのですが、今回はそもそも予定がどうなるかわからない中で予定を立てなくてはいけないという奇妙な事態が生じているのです。
今回、経済団体の強いプッシュもあり、入国後の行動制限について一部につき3日に減らすことになりました。これに伴う実務的案内は厚労省のホームページの「水際対策強化に係る新たな措置(19)について」という中で見つけられます。しかしこのホームページの入り口を探すのが困難です。そしてそこには14ものリンクが張られており、実際にはそれに全部目を通さないと申請が出来ません。
実施要項を開けると20ページにわたる能書きがあります。これを読め、というのは先日のブログの長い文章が読めない人が増えた昨今であることに全く反しています。
提出する書類は申請書、誓約書、活動計画書、入国者リスト、パスポート写し、ワクチン接種証明写し、更に終了後に受け入れ結果報告書を提出するようになっています。(少しずつ、改変されているようです。私は全部出しました。)
書類は渡航する人と受け入れる会社とその責任者による共同作業を求められます。私のように自分の会社ですと作業の自由度がありますが、一般企業ならこれだけの書類と煩雑さを前に腰が引けることは間違いないのです。ちなみに受け入れ会社が同意する誓約書はなんと12ページ、12,254字もあるのです。400字詰め原稿用紙30枚強。法律図書でもそこまで多くないでしょう。
活動計画書は到着日から14日間の事細かな行動計画を全部記載しなくてはいけません。いつ、どこで何人と会うのか、店の名前まで記載します。しかも酒はなるべく控え、2時間以内に抑えろとなっています。この行動計画で最大の問題点は制限期間は指定席がある公共の交通機関以外は乗れないのです。たとえば新幹線でも飛行機でも乗れます。しかし、そこにたどり着くまでにバスにも山手線にも乗れないのです。ではお前はどうやって申請したのかって?私は移動を全部、「自転車」にしました。健脚ですから都心全域自転車でOKです。
次にこの申請書を誰に出すのか、これがわかりにくいのです。「業所管省庁 申請関係窓口」のリンクから自分が申請する省庁を探すのです。私の場合は不動産業だから国土交通省になります。申請先は警察庁、金融庁、復興庁、総務省、法務省、財務省、文科省、厚労省、農水省、経済産業省、国交省、環境省、防衛省に分かれます。自分で関連する業種をみつけ、ここという省庁に出すのです。
ここで間違えると大変です。例えば厚労省のところには「業所管課が厚生労働省ではない申請を送付された場合は、その旨の返信及び対応いたしかねますので御注意ください」とあります。文言どおりとれば「間違ってもシカトされる」ということです。間違っているともいわれないからずーっと待っていても何も起きないということです。
私も申請しましたがメールを送っても暫くはなしのつぶて。つまり、私のメールが着いているのかどうかすらわからなかったのです。自動で受理番号ぐらいくれるのが今のシステムの常識。ところが上記の申請書はエクセルとワードで組み合わせて6つの書類をメールで添付書類として送るのです。マジかー!です。(これも最近は少し、改善されたようです。)
このやるせない不満、私だけかと思いきや日経ビジネスに「日本の入国制限は『緩和のふり』? アナログ、非効率に批判殺到」という記事があります。「『手続きを進めたいが、政府の対応があまりにもひどすぎる。どこに相談すればいいのか、どうやって申請をすればいいのか、いつ許可が下りるのか、何もかもがさっぱり分からない』。複数の企業から委託を受けて活動する関東のある監理団体の職員はこう話す」とあります。
日本の新規感染者は100人台。国内の状況は良好です。その中で緩和措置を3日にするという決断は重い腰をようやく上げたと思ったのですが、そもそも短期の出張者には機能しない仕組みなのです。なぜなら行動予定を決めろと言っておきながらプロセスに3週間から1カ月要し、その結果は見てみないとわからないこのことを英語でCatch 22 (お手上げ!)と言います。予定が確定しないのに客とひと月も前に会食の日時場所を確定して申請は可能か、「日本人のビジネスマン100人に聞きました」でやってもらいたいものです。
ワクチン2度打っています。そのワクチンは皆様と同じワクチンです。それなのに私は帰国時に電車どころかタクシーにも乗れない、これって本当におかしいと思います。というか情けない、これが私の正直な感想でございます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2121年11月21日の記事より転載させていただきました。