「迷惑メール」とは、基本的に迷惑なものである。一方的に送りつけてメール容量を圧迫し、未読件数で心理的プレッシャーを与え、場合によっては詐欺や犯罪に人を巻き込む。
ところが、何気なく開封した1通のメールが、腹がよじれるほど人を笑わせてくれることもある。そんな幸せな出会いについて共有したい。
なお、メールの送信者を追跡したり、反応したらどうなるかを検証する内容ではない。ビットコインウォレット(?)しか相手につながる情報がないからだ。
・メールの内容
それはプロバイダメールに届いた。いまどきプロバイダメールを使っている個人も少ないだろうから、手口としては古風といえるかもしれない。
そして目を疑うような長文だった。文末までスクロールするのが大変なほどで、これがウェブ記事だったら途中で離脱すること間違いなしのボリュームだ。
LINEに代表される現代のコミュニケーションツールは、早く・短くが基本なのに、時代に逆行している。
それだけの長文ならボロが出そうなものだが、よくある自動翻訳のおかしな日本語ではなく、言い回しもバラエティに富んでおり、むしろ美しいとさえいえる文章だった。
内容を順に見ていこう。メールは「こんにちは! 残念ながら凶報がございます」という、グッドなのかバッドなのかわからない妙なテンションで始まる。
その後は「ハッカーからこのアドレスを買いました」といったお決まりの事情説明が続く。アクセス権を購入することや、筆者のデバイスに「トロイの木馬」をインストールすることがいかに簡単であるか、を丁寧に教えてくれた後……
スマートな物事は何でもかなり単純なのでしょう。( ´ ▽ ` )
そこ顔文字!!!?
なんで「いいこと言った」感を出している!? ちなみに顔文字が登場するのは後にも先にも、この1度きりだった。なぜここ。強い思い入れがあるのか。
その後も長文が続く。筆者のデバイスを乗っ取った結果、筆者がアダルトサイトの大ファンだということが判明し、「熱心に自慰行為をして絶頂に達する様子」を収めたモンタージュビデオを作成したとのこと。ヒマだな。
どこかの宿屋の「ゆうべはおたのしみでしたね」のノリで、「エッチなお楽しみをしながら卑猥な動画を見るのが本当にお好きなのですね」と人を煽ってくる。
しかも、どうやら筆者が見ていた動画は特殊な趣味のものらしく、「何がどう転んでもあなたには大災難をもたらすでしょう」とのこと!
なんだ、この名文……ならぬ迷文は? ライターとして嫉妬を覚えるほど文章がおもしろい!!
そのモンタージュビデオを削除して、筆者のデバイスから出て行ってもらうには20万円分のビットコインが必要だそうで、これは実は、かなりお得な価格だという。なぜなら────
「私はあなたのプロフィールやトラフィックを追跡するのにかなりの労力と時間を費やしていることもお忘れなく」
ああ、手間を取らせて申し訳ない……。
…………
…………
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違うよね!? なんでこっちのせいみたいになってるの!?
その後も長々────
長々────
長々────
メールは続いて、お金のゆくえを筆者が心配する必要はないと安心させてくれたり、「私は約束をもちろん守りますよ」と優しく慰めてくれたりするのだが、
最後には「全ては公正さを基本に行いましょう!」と高らかに宣言し
「私からのアドバイスは、アカウントのパスワードを頻繁に変更することです」という上から目線のアドバイスでメールは唐突に終了する。
文字数はなんと2000字を超えていた。そこそこボリュームがあるウェブ記事くらいの分量だ。
実におもしろかった。こんな手間のかかった文章を書けるなら、迷惑メールなんて送っていないでライターになればいいのに。強力なライバルになりそうな予感がする。この書き手の未来を、筆者は密かに応援している( ´ ▽ ` )
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.