宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月19日、宇宙飛行士の募集を発表した。12月20日から専用のウェブサイトで必要書類を提出して応募できる。採用人数は「若干名」としている。応募受付期間は2022年3月4日まで。最終選抜の結果は2023年2月に発表される予定。
選抜され、JAXAに認定された宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)、ISSの実験棟「きぼう」、月を周回する有人拠点“ゲートウェイ”、月面で活動が予定されている。
現役の日本人宇宙飛行士は7人だが、平均年齢は51歳。JAXAの定年は60歳であるために活躍できる宇宙飛行士は、ゲートウェイへの搭乗が始まる2025年頃には4人、月面での活動が活発化する2030年頃には2人であることが分かっている。今回の応募はこうした事態を受けている。
候補者の募集要項や応募条件などについては、パブリックコメントを募集して応募条件が緩和された。今回は、学歴と専門分野を応募条件にしないで、候補者に必要な能力は選抜試験で評価することにした。
現在、日本人宇宙飛行士には女性がいないことを受けて、パブリックコメントでも女性飛行士の採用を求める意見が多く寄せられた。だが、採用人数が少ないことから、女性枠を設けずに、募集での女性からの応募を勧める広報施策を展開することにしている。
従来の応募条件では、4年制大学の自然科学系学部を卒業していることが求められていた。今回は撤廃。ただ、自然科学系分野で3年以上の実務経験があることは今回も同じ(修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなしている)。
応募資格の医学的要件も緩和されている。従来は、身長が158~190cm、体重が50~95kgだったが、今回は身長149.5~190.5cmのみとなっている。宇宙船が改良されるなどの状況を踏まえている。
今回の選抜試験では、第0次選抜として“科学、技術、工学、数学(Science、Technology、Engineering、Mathematics:STEM)”分野の試験を受けることになる。国家公務員総合職の試験と同程度だという。
第0次選抜では、英語も試験される。STEM分野の試験とは別に、小論文、適性検査も実施。志望動機や目指す宇宙飛行士像、業務経験などをまとめたエントリーシートも審査される。
その後の第1~3次選抜では、医学検査や医学特性検査に加えて、英語や資質特性、プレゼンテーションといった面接試験を受けることになる。
選抜された候補者は2023年4月にJAXAに入社して基礎訓練が始まる。JAXAの宇宙人飛行士に認定されるのは、2025年3月頃を予定している。
JAXA入社後の候補者は、国内を中心に候補者訓練を受け、宇宙飛行士に必要となる科学や技術の知識、ISSやきぼうのシステム概要などを学ぶ。また、英語、ロシア語も習得する必要がある。
候補者訓練修了後に訓練結果が評価され、JAXAに所属する宇宙飛行士に認定される。認定後は、ISSに参画する日本やアメリカ、ヨーロッパ、ロシア、カナダの宇宙機関でISSの各システムや操作技術などを学ぶ。ISSへの搭乗が決定すれば、ミッションに必要なISSの操作手順や実験操作手順の訓練、SpaceXが開発している宇宙船の操作訓練も受けることになる。
宇宙飛行士になれば、月を周回する有人拠点であるゲートウェイに滞在する可能性もある。ISSの6分の1程度の大きさというゲートウェイには、10~30日の期間で2~4人の宇宙飛行士とともに滞在。2025年開始が予定されている、アメリカ主導で月面を探査するための「アルテミス計画」では、ゲートウェイを軸に活動することになる。
JAXAは、募集要項を分かりやすく解説する動画を12月1日にYouTubeの公式チャンネルでライブで配信する。18時から始まる「宇宙飛行士候補者 採用説明会〜宇宙飛行士に、転職だ。〜」では、JAXAの理事で有人宇宙技術部門長である佐々木宏氏、現役のJAXA宇宙飛行士である油井亀美也氏が宇宙飛行士について説明。由井氏や大西卓哉氏、山崎直子氏が先輩の立場から宇宙飛行士という仕事の魅力や現実を語る企画も予定されている。