Windows 11が10月5日から提供開始となったものの、まだまだWindows 11の情報が足りない、もう少し様子を見ておこうと、アップグレードを保留している方も多いだろう。UIの見た目や、操作性は別として、ここではWindows 10と11で性能差が出るのかを確認してみたい。以前、Insider Previewの段階で同様の検証を行なっているが、今回はれっきとした製品版を用いた比較となっている。
現行ハイエンドゲーミングPCで検証
今回の検証に用いたのはマウスコンピューターが販売しているゲーミングPC「G-Tune XN-Z」だ。OSはWindows 10 Homeを搭載している段階でお借りした。もちろん、Windows 11にアップグレード可能なモデルである。
先にハードウェアスペックを紹介しておくと、CPUがCore i7-11700K(8コア16スレッド)、GPUがGeForce RTX 3080、チップセットがIntel Z590、メモリがDDR4-3200で16GB(デュアルチャネル)、ストレージがNVMe対応で512GBなどを搭載。ハイエンドゲーミングPCであり価格は30万7,780円だ。PCとしての快適さは十分だ。
検証方法
検証ではまずWindows 10でWindows Updateを行ない最新の状態とし、一連の計測を完了後にWindows 11「インストール アシスタント」を用いて手動アップグレードを行なった。もちろん、「PC正常性チェックアプリ」でチェックも行なっている。
G-Tune XN-Zは初期状態でTPM 2.0が有効化されており、ユーザーがBIOS設定をする必要なくすべての項目をパスしていた。
続いて検証方法について説明しておこう。今回はすべてのテストを10回行ないグラフ上で赤丸で示しつつ、平均値を青いダイヤで示している。種類にもよるがベンチマークにはブレ幅があるため、複数回計測して平均をとれば、その差縮まって正確さが増すとともに、異常値をはじくことができる。
そして今回は通常のレビューよりも計測回数を増やしている。ハードウェア構成が同じでOSのみが異なる今回のような場合はそもそものスコア差が小さいと予想されるため、回数を増やすことでスコアの正確さを高める目的だ。
また、グラフも通常のゼロスタートではない点に注意していただきたい。差が小さいためにゼロスタートでは把握しづらいためで、グラフを見る際はグラフの最大値と最小値、スコアを振った平均値の双方を見て判断いただきたい。なお、平均値の算出は相加平均(ExcelではAverage関数)を用いている。
アプリケーション性能は互角。ストレージはメンテナンスで伸びる可能性も
まずはCinebench R23から見てみよう。Multi Coreの平均スコアはWindows 11が13,688でWindows 10が13,722だ。スコアの差は34ポイントで、10回のスコアの偏りを見てもややWindows 10の方が高く見えるが、Windows 10側のスコアのブレ幅の大きさも気になる。これを決定的な差と言えるかどうかは微妙なところだ。
Cinebench R23のSingle Coreの平均スコアはWindows 11が1,566、Windows 10が1,565。1ポイントしか違いがなくこれは誤差と言ってよいだろう。
続いてPCMark 10。Overallの平均スコアはWindows 11が7,940、Windows 10が7,905。35ポイント差で、さらにWindows 10側の各スコアのブレ幅の大きさも気になるがやはり決定的な差があるとは言えない。
各シナリオを見ても大差はついていないが、一つ気になるならEssentialsスコアだろうか。Windows 10の方が平均スコアが高く、Windows 10側で1回だけ低いスコアが出ているものを異常値として見れば差はさらに大きい。
そこでEssentialsについては各テスト毎でもグラフ化してみた。差がついている原因はApp Start-upでWindows 11とWindows 10の間には平均スコアで378も差がついていた。逆にほかはプラス・マイナス30ポイント以内なので誤差と言える。
App Start-upの結果からストレージ性能に違いが出るのかCrystalDiskMark 8.0.4で試してみた。これは10回計測ではなく1回(ただしCrystalDiskMark自体は5回計測中の最大値を採用する仕様)だ。
CrystalDiskMarkのCドライブの結果を見ると、多くは誤差のレベルで互角だが、Windows 11はシーケンシャルリード(Q8T1)、ランダム4Kリード(Q1T1)でWindows 10の結果に劣り、一方でランダム4Kライト(Q32T1)と同(Q1T1)でWindows 10に勝った。
PCMark 10のApp Start-upはその名の通り、リードが影響するテストなのでスコアに影響が出たものと思われる。ただしこれがドライバの影響なのか、アップグレード(バックアップが作成されストレージを圧迫する)による影響なのかは判別が難しい。そこでDドライブの計測値も見てみよう。
Dドライブの結果は、シーケンシャルリード(Q1T1)でWindows 10の方が200MB/sほどよいが、そのほかはほぼ互角だった。これを見る限り、先のApp Start-upはアップグレードによるストレージの圧迫に起因しているという疑いの方が濃厚だろう。
クリーンインストール、あるいはアップグレード後でもバックアップを削除するといった方法で同等に近い転送速度となるなら、Windows 11と10のEssentialsが同等あるいは残り2つのシナリオのようにWindows 11の方が若干リードする可能性がある。
まとめ – ゲーム性能を少しでも向上させたいならアップグレードはアリ
ここまでWindows 11とWindows 10の製品版での性能を同一ハードウェアで検証してきた。OSをアップグレードして動作が重く感じられるというのは筆者の記憶では、Windows Vistaくらいだったと思う。結論としてはほぼ同等、あるいはベンチマークスコアが示す通り、ゲーム性能は若干向上、ストレージに関しては(アップグレードという手法のために)若干低下する可能性があるといったところだろう。
ゲーミング性能に関しては以下の関連記事にあるように、DirectStorageも関係する。Windows 11ではこの機能をフル性能で利用できることもあるので、Windows 11>Windows 10という点がより明確になるだろう。
もしもアップグレードしても、Windows 10に戻せる猶予期間は10日間設けられており、試しにWindows 11にしてみて、問題が起きないか確認してから、本格運用を考えればよい。
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