女子中高生に「カップル」のYouTuberやTikTokerが人気な理由

CNET Japan

 カップルYouTuberやカップルTikTokerをご存知だろうか。

 Z総研の恋愛編(2020年11月)によると、Z世代の好きなカップル・夫婦について聞いたところ、えむれなカップル、ゆたせなカップル、しゅんまやカップル、せなかれカップル、なこなこカップルなど、人気カップルYouTuber、カップルTikTokerなどのインフルエンサーが多くランクインした。

 カップルYouTuberとは、恋人や夫婦で1つのアカウントを使って活動をするYouTuberを指す。カップル名は“ふくれな”と“M君”のカップルで「えむれな」というように2人の名前を組み合わせたものとなっている。

 なぜ、若者はカップルで活動するのだろうか。また、なぜカップルYouTuberやTikTokerに憧れるのだろうか。

「カップルであること」自体がコンテンツに

 そもそもカップルYouTuberやカップルTikTokerは、どのようなことを投稿しているのだろうか。たとえば「なこなこカップル」のYouTubeチャンネルは、チャンネル登録者数129万人におよぶ。

「【モニタリング】彼女とのお家デートを隠し撮りしてみた!」
「【妊娠ドッキリ】彼氏に子供が欲しいと言ったら、壮絶な結果に。。。」
「喧嘩は?お金で揉める?同棲カップルの本音語ります!」
「いつ結婚するの?仲良しカップルなら相手のこと隅々まで分かるよね!?」

 などの隠し撮り、ドッキリ系などの企画や、喧嘩やお金、結婚などのカップルにまつわる気になることを公開している。そのほか、何と2人でお風呂に入る日常を撮影したお風呂ルーティン、ナイトルーティン、キスをしてみせるものまである状態だ。

 カップル動画以外のYouTuber動画は、見やすく編集されているものが多い。一方、カップル動画では編集は重視されず、2人のたわいないやり取りがそのまま動画となっていることがほとんどだ。

 これは、カップルであること自体がコンテンツとなっているためだ。つまり、他のカップルの関係性や普段のやり取り、実態など、興味はあるけれど通常では見られないものが見られることが重視されているのだ。カップルで行動することで一定の需要が見込めること、相手がいるのでドッキリや隠し撮りなどコンテンツに事欠かないことが、カップルYouTuberが跡を絶たない理由になっているのだろう。

 またカップルでチャンネルを開くことには、2人でずっといられること、一緒にいることで仕事になるなどのメリットもあるようだ。憧れられたりファンが付いたりすることで、自分たちの幸せを再確認できる喜びもあるだろう。

ミクチャ風、ダンスチャレンジもあるカップルTikToker

 カップルで1つのTikTokアカウントを運用している「カップルTikToker」も多い。たとえば前述の「なこなこカップル」は、TikTokも活用している。

 YouTubeでも活動する「こちゃにカップル」は、110万人のフォロワーを持つ人気カップルTikTokerだ。TikTokらしくダンスチャレンジ動画なども投稿するが、YouTubeでも人気の2人のやり取りなどの日常の姿も多く投稿されている。歌詞に載せたミュージックビデオ風のものは、ミクチャを思い出させる。自分たちが恋愛ドラマの主役となれるこのタイプの動画も人気なのだ。

 TikTokは3分までの動画がアップロードできるようになったものの、やはり他のサービスよりは短めとなる。カップルをTikTokで知って、YouTubeでさらに長い動画を見るなどの使い方がされているようだ。

恋愛リアリティーショーとして楽しむも「破局」も

 カップルYouTuber動画を好んで見る層は、女子中高生が多い。これは、なれそめやお金、浮気、結婚など、恋愛のリアルな実態が垣間見れることが大きいだろう。恋愛マンガや恋愛ドラマのように、自分もいつかそのような恋愛がしたいと憧れて見るものであり、恋愛の最中でも参考にできるという需要もあるだろう。

 「2人が仲良さそうでとってもかわいい。理想のカップルで見ていてなごむ」と、カップルYouTuber動画をよく見るという女子高生は言う。「自分もいつかあんな彼氏がほしいと思いながら見てる」。彼女は、Abemaの「今日、好きになりました。」や「オオカミくんシリーズ」などの恋愛リアリティーショーを好むという。共感や自己投影ができ、漫画やドラマよりリアルな内容として好んでいるというわけだ。

 「なこなこカップル」は、元々TikTokやInstagramで2人のことを公開していたが、「YouTubeはしないの?」と言われたことで、YouTubeチャンネルを始めたという。このようにSNSネイティブ世代は、プライベートを公開することに抵抗がない層が増えており、それも影響していることは間違いない。見たいニーズがあり、見せることに抵抗がないカップルがニーズに応えているという図が成り立つのだ。

 一方、冒頭でご紹介したランキングのうち、しゅんまやカップルはAbemaの「今日、好きになりました。」ハワイ編に参加して交際を開始し、その後に結婚、出産。同じく『今日彼』グアム編に参加していたせなかれカップルのほか、えむれなカップルはすでに破局を発表している。

 キス動画などのカップル動画を公開すると、別れた時に後悔したり、残った動画がデジタルタトゥーになると言われてきた。一方で、そのようなことをまったく気にしない層も現れている。サービスの出現とともに感覚も徐々に変わっていくと言えるのかもしれない。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

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