電源が足りない、10年後にそうならない準備はあるのか?

アゴラ 言論プラットフォーム

大戦の時、日本では国家を維持し、軍艦を動かし、戦争を遂行するのに石油が枯渇するという危機に見舞われました。資源がない国家の急所でもありました。戦後直後には食糧不足からくる自給率といった問題にもつながり、日本は世界との連携を通して上手に生き延びることを学びました。

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石油ショック直前の日本の原油輸入元は中東への一辺倒でありました。その第一次ピークは1967年の91.2%で特に同じ中東でもイランへの依存度が最大でありました。(イラン偏重は70年代中盤まで続き、79年のイラン革命後に目に見えて減少します。) しかし、日本は石油ショックでさらに学び、原油の調達先をバラバラにし、リスク分散を図ります。87年には中東依存率が67.9%まで減少、日本のエネルギー政策は成功したかに見えました。

にもかかわらず、再び中東依存の病が始まります。イランへの依存度は下がったものの2019年の中東依存度は88.9%にまで上昇しています。しかもサウジ、UAE、カタール、クェートの4カ国で82.4%にも上るのです。理由はリスク分散するにも経済制裁や産油国の自国での消費増大があります。もう一つの弱点はパイプラインが他国と繋がっていないことがあります。水道の蛇口をひねるような感覚のパイプラインの有無は安定供給の潜在的リスクファクターになったことは否めず、最も可能性のあったロシアとの接続が出来ていないことは過去における政治的敗因だったかもしれません。(反ロシア派の異論があることは承知しています。)

COP26が10月31日から11月12日まで英国で開催されますが、主要国はプレゼンテーションの準備に余念がありません。中国は2060年までに非化石燃料率80%を掲げ、懸案の石炭火力は少なくとも海外での開発は中止することを表明しています。アメリカは国内調整に手間取っています。日本は経産省が作った第6次エネルギー計画を閣議決定したのですが、個人的には本来であれば国会で議論すべき内容だと思っています。

先日も軽く触れましたが、絵にかいたような餅、諸外国へのアピールどころか国内向けにもどう転んでもきちんと説明できないこの計画が選挙の合間にするっと入ってしまったことは実に残念なことであります。岸田首相はCOPに参加するようですが、あの内容で世界にどうプレゼンするのか、私ならデビュー戦でこれかね、ええっ!といったところです。

新計画では原発については現在より比率を3-4倍にする計画ですが、方法は一つしかありません。既存の原発をどんどん再稼働させるしかありません。新開発の小型原発があるじゃないか、と言われますが、世界最先端のこの技術はアメリカあたりで世界初で稼働を開始すると思いますが、それでも20年代後半か、30年代にかけてです。日本の世論がそもそも小型だろうが、大型だろうが作ったこともない原発をどこかの地方自治体が喜んで受け入れることは天地神明に誓ってあり得ないことです。

私が懸念していることは日本のエネルギー計画がこのCOPを乗り越えた後、外圧が少ないままずるずると時を過ごし、ある時、周りを見たらエネルギー源にとてつもない制約があるということが起きうる公算を考えています。それは炭素税がどのように世界で展開されるか次第ですが、2030年に向けて驚くほど厳しい社会的ルールが次々出てくるとみています。

例えば石化エネルギーで製造した製品には炭素税が輸入時にかかる、あるいは石油など石化エネルギーを輸入するときにも税金がかかるといった新しいルールが欧米主導で平気で作られるケースです。21世紀版ABCD包囲網ならぬCCG包囲網(Coal, Crude, Gas)です。

日本はカーボンゼロと口では言いますが、EVのインフラは多いのにEVは少ないし、家庭のLED照明の普及率は5割しかありません。新規に購入する電灯は99%がLEDですが、既存の照明器具はまだ半分が古いものなのです。不動産開発の視点から見れば都市部のアスファルト舗装は温暖化を促進させます。よって緑化率を上げる都市計画も必要でしょう。例えば東京の緑化水準は11㎡/人、バンクーバーは26.5㎡/人、驚くことに香港が105㎡もあるのです。どうやるか、といえば住宅地に高層集合住宅を建て極めて高い敷地の緑化率を当局が開発業者に強要、できない場合は緑地面積を金銭売買し、当局はその資金で別の場所に緑地を確保するのです。

あるいは持ち帰り弁当の容器はなぜ、紙にならないのでしょうか?カップヌードルは紙製容器に変わっていますよね。当地の持ち帰り容器も紙に変わりつつあります。日本にやれることは無限にあります。

カーボンゼロというのは単にインプットされるエネルギー源の種類だけでコントロールできるものではなく、使う側の抑制計画も必要、また都市熱を減らす方法など総合的に勘案すべき内容ではないでしょうか?日本にとって本件が苦手なエリアであるならば日本として低減できる上記のような知恵を出してカーボンゼロ後進国と思われないことを望みます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月28日の記事より転載させていただきました。