【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】40年目の節目を迎えた富士通パソコンの強みと課題。島根富士穂のデスクトップ生産ラインを初公開

PC Watch

島根県出雲市の島根富士通

 富士通クライトンコンピューティング(FCCL)が、1981年5月に同社初のパソコン「FM-8」を発売して以来、今年は40年目の節目を迎えている。この1年は、「富士通パソコン誕生40周年企画」を展開。すでに、第1弾として、モバイルキーボード「LIFEBOOK UH Keyboard」をクラウドファンディングで提供した。

 このほど、第2弾として、デジタル苦手さんをサポートする「ふくまろおしえてサービス」の提供を開始した。今後も、40周年モデルの投入などを予定しているという。また、FMVシリーズを生産する島根富士通は、1990年10月に操業を開始して以来、30年目を迎えており、2021年5月からはデスクトップPCの生産を新たに開始。このほど、デスクトップの生産ラインの様子を初めて公開した。40年目の節目を迎えたFCCLのいまを追った。

累計出荷1億4,000万台の実績を持つ富士通パソコン

 富士通の第1号パソコンが登場したのは1981年5月。先行したNECに比べて約2年遅れだったが、高性能や拡張性が高く評価された製品だった。それ以来、40年の間に出荷した富士通ブランドのパソコンは、累計で約1億4000万台の規模に達する。

富士通パソコン40周年ロゴ

 FCCLの齋藤邦彰会長は、「40年間に渡って取り組んできたのは、コンピューティングの社会実装であり、コンピューティングによって、人の生活をより良くし、それをなるべく多くの人や場所、長い時間でお役に立つことを追求してきたことである。人に寄り添うコンピューティングを追求すること、人に寄り添う製品ポートフォリオを揃えることは、これからも変わらない。コロナ禍という環境変化において、コンピューティングを活用する時間が増えている。製品、サービス、開発、製造、サポートを自前で持つ強みを生かして、一人でも多くのお客さまにベストフィットする製品ポートフォリオや、高品質なライフサイクルサポートを提供し続けたい。世界一、お客様に優しいコンピューティング会社として成長、発展していく」と語る。

40周年企画第1弾はまもなく完全達成?

 40年の節目を迎えた同社では、富士通パソコン誕生40周年企画「FUJITSU PC 40th Anniversary」を展開している。

FCCLの「Day 1000」の記者会見において、齋藤邦彰社長(当時)のプレゼンテーションで公開していたキーボード

 その第1弾となったのが、7月15日からスタートしたモバイルキーボード「LIFEBOOK UH Keyboard」のクラウドファンディングによる提供だ。

 世界最軽量ノートPCであるUHシリーズのキーボードをベースに開発したもので、9mmピッチのフルサイズキーボードでありながら、350gという圧倒的な軽さを実現。使いやすさと堅牢性、軽量化を実現しているという。

モバイルキーボード「LIFEBOOK UH Keyboard」

 CCC(TSUTAYA)のグループ会社であるワンモアのクラウドファンディングを通じて提供しており、開始からわずか4時間を経たずに、目標支援総額の500万円に到達。9月9日時点で、5,600万円を突破し、目標額に対する達成率は1,100%以上となっている。

 ただ、同プロジェクトは、DarkSilver、Garnet Red、Light Silverの3色によるカラー展開を含めたチャレンジとなっており、各色とも1000台に達すると、そのカラーでの製品化ができる。1,000台に到達しない場合は、ほかの色に振り替えて提供されることになる。

LIFEBOOK UH Keyboardは3色展開している

 まずは、DarkSilverが1,000台を突破。9月1日にはGarnet Redが1,000台を突破して製品化を決定。残るLight Silverは、9月4日時点で857台の申し込みとなっており、残り143台のところまできている。3色完全制覇まで王手をかけているところだ。支援期間は、10月12日まで。残りの約1カ月間での達成は射程距離に入っているといっていいだろう。

LIFEBOOK UH Keyboardクラウドファンディングサイト

https://greenfunding.jp/lab/projects/4701

 実は、この取り組みについては、当初、営業現場はかなり慎重な姿勢だった。

 というのも、2021年1月25日に行なわれたFCCLの「Day 1000」の記者会見において、齋藤邦彰会長(当時社長)は、プレゼンテーションの中で、このキーボードの画像を映し出している。トップ自らのプレゼンテーションに使用したことからもわかるように、この時点で商品としてかなり仕上がっていたこと、トップ自身が製品化にコミットとしていたことがわかる。だが、実際にクラウドファンディングが開始されたのは、それから半年後。しかも、出荷時期が2022年3月以降ということを考えると、社内で最終的な意思決定にまで、かなりの時間を要したことが推察される。同社初のクラウドファンディングへの取り組みという点でも、慎重に判断を下したのだろう。

FCCLの齋藤邦彰会長

 ふたを開けた結果は大成功だったといっていい。

 齋藤会長は、「想定以上の反応であり、とてもうれしい。クラウドファンディングでは、実際に商品を触ることができないまま支援することになる。それにも関わらず、これだけの多くの方々に支援をしていただけたのは、富士通ブランドのキーボードであることへの安心感の表れであり、積み重ねたことが評価されていると感じる。みなさんの手元に、期待を裏切らないキーボードを届ける」と語った。

 3色完全達成と、達成率がどこまで伸びるのかが楽しみである。

40周年企画第2弾は、ふくまろのフェーズチェンジ

 FUJITSU PC 40th Anniversaryの第2弾となったのが、8月31日に発表した「ふくまろおしえてサービス」である。

 FMVシリーズに搭載しているAIアシスタント「いつもアシスト ふくまろ」を利用して、高齢者をはじめとした「デジタル苦手さん」に、PCの使い方などをサポートするものだが、これまでのサポートとは、ちょっと違う角度からのアプローチとなっている点が特筆できる。

ふくまろおしえてサービスの流れ

 というのも、これまでのサポートは、ふくまろのAI機能を利用して、使い方を促したり、コールセンターに、電話やチャットで問い合わせて、専門のオペレータがわからないことを解決してくれるというものだった。だが、新サービスは、ふくまろとLINEを組み合わせて、家族同士をつないで、家族がPCの操作方法などを教えやすい環境を実現するというものだからである。

 FMVシリーズに搭載されているふくまろに、「家族におしえてもらいたいことがあるのだけど」と話しかけると、「家族に遠隔操作をお願いするまろ」とふくまろが答え、LINEを利用して、自動的に家族のLINEグループにメッセージを送信。家族にPCの使用方法について質問があることを通知する。LINEでメッセージを受け取った家族は、すぐにサポートが可能であれば、6桁のセキュリティコードをLINEで送り返し、これをPCに入力してもらい、許可ボタンを押してもらえば、画面が共有され、家族がPCを遠隔操作することができる。

 もし家族の都合が悪い時間帯だったら、LINEで返事をして、あとでサポートすることを伝えればよく、仕事中に、何度も電話がかかってきたりといったこともなくなる。家族というつながりをもとに、お互いに負担が少ない形でサポートできる環境を整えたというわけだ。

 これは、Windows 10の標準機能として搭載されている「クイックアシスト」を利用したサービスだ。3ステップだけで、家族が遠隔操作できるようにしており、PCのなかに保存している家族の写真を見たいといった操作や、ネットショッピングで購入をしたいといった場合にも家族が遠隔操作すればいい。コールセンターの専門家にも遠隔操作をしてもらうことができるが、第三者であるため、購入ボタンまでは代わりに押すことができない。だが、家族であれば、遠隔操作で、購入ボタンを押すことができるというメリットもある。

クイックアシストの機能

 デジタルが苦手な高齢者が、ネットでワクチン接種の予約を行なえず、家族が手伝う例が多かったようだが、こうした場合にも、家族が遠隔操作して予約することが可能だ。

 齋藤会長は、「コロナ禍においては、オンラインが使えるか、使えないかで、生活の便利さや、楽しさに大きな違いが生まれている。ワクチン接種予約の事例を考えると、いまや基本的な生活を脅かすことになりかねない。私の強い信念は、デジタルが苦手だと思っている人に、PCでオンライン生活を楽しんでもらうようにすること。そこに家族の力を活用して、デジタル苦手さんをサポートすることで、あらゆる人が参加できるIT社会の実現を目指す」と語る。

 もちろん、ふくまろの進化や、コールセンター体制の強化などにも継続的に取り組んでいく姿勢をみせる。

 「ユーザーの困りごとを解決するために、ふくまろを活用し、魔法使いのように、できることはすべてやることを目指してきた。それは今後も変わらない。だが、家族にも協力してもらうことで、課題解決のゴールに近づけると考えた。新たなサービスは、困りごとを解決するという目的を達成することには変わりはないが、手段を変化させたもの。その点では、ふくまろの大きなフェーズチェンジである」とする。

 ちなみに、齋藤会長は、「富士通クライアントコンピューティングの社員に、このサービスを使って、親から連絡があった場合には、就業時間中でも、サポートを行なっていいことに決めた」と、特例ともいえる社内制度を導入する考えを明らかにしている。

40周年企画第3弾以降はどうなるのか?

 ところで、FCCLでは、FUJITSU PC 40th Anniversaryの企画として、このほかに、40周年モデルの発売、40周年記念オンラインイベントの開催、40周年記念グッズ制作などを予定していることを発表している。

 この中で、40周年記念グッズの1つが明らかになった。

 8月31日に行なわれた「ふくまろおしえてサービス」の会見で齋藤会長は、胸にふくまろのピンバッチを着用していたが、これが記念グッズの1つになることが発表されたのだ。

ふくまろのピンバッチを用意。齋藤会長(右)はひと足先に着用

 現在、ふくまろのほかに4種類のデザインピンバッチを制作している模様で、それぞれのピンバッチをガチャケースに収納。新川崎の同社本社にはガチャマシンを設置して、来客者にプレゼントするといったことも企画しているようだ。

 気になるのは、やはり、40周年モデルの投入だ。まだ詳細は明らかになっていないが、果たして、どんなデバイスが登場するのかが楽しみだ。

 なお、「ふくまろおしえてサービス」の会見では、1986年に発売した8bitパソコン「FM77AV40」を使って、ふくまろの絵を描くプログラムのデモを行なった。これも40周年を意識して、社員が取り組んだものだ。今後もこうしたユニークな企画への取り組みも期待される。

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ふくまろの絵を描くプログラムのデモ。文字にはかつてのロゴに使われていた書体を採用

ふくまろの絵を描くプログラムのデモは、FM77AV40を使用

ふくまろの絵を描くプログラムをロードしているところ

島根富士通でデスクトップPCの生産を開始

 もう1つの節目が、富士通ブランドのPCの生産を行なう島根富士通が、1990年10月に操業してから30年を経過した1年を迎えていたことだ。

 島根富士通では、8月25日、同社の事業方針「SFJ Next 30」について発表。これまで培ってきた「現場力」、「技術力」、「創造力」に加えて、環境の変化に追随する「変動力」、逆境を乗り越えて糧にする「逆境力」を、島根富士通の新たな強みとし、「変化に強い、しなやかな工場への進化を目指す」(島根富士通の神門明社長)とした。

島根富士通の神門明社長

 SFJ Next 30の内容については、2020年11月時点で、本コラムで先行独占インタビューを行ない、詳細を伝えている。

 今回の方針発表の中で明らかにしたのは、2021年5月から、デスクトップPCの生産を島根富士通に完全移行したことだ。

 島根富士通は、1990年10月の操業開始時点では、FM TOWNSなどのデスクトップパソコンを生産していたが、FMVシリーズに投入に伴いし、出荷台数が急拡大しはじめた1995年から、ノートの生産に特化。デスクトップの生産は、福島県伊達市の富士通アイソテックで行なっていた。

 2011年3月の東日本大震災の発生時には、富士通アイソテックが被災。そのため、島根富士通で、デスクトップPCの代替生産を行なうといったことがあったほか、BCP(事業継続計画)の検証のために定期的にデスクトップPCの試験生産を行なっていた経緯はある。だが、デスクトップPCの本格生産は、実に26年ぶりのこととなる。

 島根富士通では、これまで設置しているノートPC向けの20本の生産ラインに加えて、新たにデスクトップPC専用生産ラインを4本設置。また、ノートPCの生産ラインでは、デスクトップの生産も可能であり、需要の変動にあわせて生産量を柔軟に変更できるようにしている。これによって、ノートとデスクトップをあわせて、年間約200万台以上の生産能力を実現している。

初めて公開した島根富士通のデスクトップPCの生産ライン

デスクトップを組み立てている様子

デスクトップの生産ラインの様子

ノートの生産ラインを流用したデスクトップの生産ライン

 デスクトップの生産ラインは、既存資産の有効活用を目的に、2つの生産ラインを島根富士通に移設するとともに、島根富士通のノートの生産ラインを1本流用。さらに、島根富士通によって新たに設計されたデスクトップ専用ラインを設置している。

 移設したラインについては、従来整備と比べて、1ラインあたり3人減の省人化を実現しており、今後はさらに省人化を図るという。また、島根富士通の既存設備を有効に活用することで、HDDへのインストール方法の変更などにより、製造リードタイムの短縮を実現。今後は、R&D部門と製造現場との連携により、現場からの提案によるDFX(Design For Manufacturing/Testing)設計や、ノートとの部品の共通化などを進めることで、効率化を図っていくという。

 島根富士通の神門社長は、「デスクトップの生産を開始したことで、様々なシナジーを生み出し、モノづくりを進化させる。これまで以上に、FMVのコアファクトリーとしての責任を果たし、MAID IN JAPANの製品をこれからも届けていく」と語る。

完成したデスクトップパソコン

 今回の島根富士通でのデスクトップ生産の完全移行は、FCCLとしてのモノづくりをより進化させるための取り組みと受け取ることができる。

 島根富士通は、レノボ傘下にあるFCCLの100%子会社であるが、富士通アイソテックは、富士通の100%子会社であり、いまでは「筋」が異なる。

 富士通では、2021年1月の決算会見の席上で、富士通アイソテックを含めた生産拠点の構造改革に言及しており、それが今回の動きにつながっているが、今回、PC生産のすべてを島根富士通に一本化したということは、FCCLのもとに生産を集約し、富士通への生産委託を終了したという構図になる。

 すでに、欧州では、富士通が持っていたドイツ・アウクスブルクのPCの開発拠点および生産拠点を、2020年度上期に閉鎖。これに代って、FCCLは2020年4月に、自前の開発拠点としてFCCL GmbHをドイツに設立し、2020年3月からは、チェコには、FCCL専用のPC生産拠点であるICZを稼働させ、同様にFCCL主導での開発、生産体制を敷いている。

 つまり、今回の島根富士通へのデスクトップPCの生産移管は、生産体制の移行というだけでなく、レノボ傘下のFCCLが、富士通に頼らずに開発、生産を行なう体制が、国内外ともに整ったといえる。

 FCCLの齋藤会長は、「島根富士通の30年間を振り返れば、他社がコスト削減の観点から海外に生産拠点を次々に移す動きを見て、ひやひやしたこともあった。だが、プリント板から製造し、MADE IN JAPANを継続しているのは、お客様に少しでも多くの満足をしてもらいたいという一念によるものである。品質、リードタイムはもちろん、お客様ごとに異なる要求に、ベストフィットする製品づくりを実現している。多くのお客様に見学をしてもらい、なかには、この工場で生産されているのならば安心であると購入を決めてくれたお客様もいる。島根富士通は、これからもスマートファクトリーとして大いに成長することになる」と語る。

 また、FCCLの大隈健史社長兼CEOは、「FCCLの独自性の堅持、レノボグループ内で存在感を高めること、FCCLの継続的成長という3つの方針に取り組む中で、すべての方針に、島根富士通が深く関わっている。時代の変化に対応した新たな試みを島根富士通と一緒になって取り組みたい」と述べた。

FCCLの大隈健史社長兼CEO

40周年を迎えた富士通PCの課題はなにか?

 開発、生産体制は、国内外ともに、FCCLに集約されたが、富士通との関係性が切れたわけではない。

 当然のことながら、PCやタブレットには、富士通ブランドがついているし、FCCLには、富士通が44%を出資している。

 そして、販売においては、個人向けPCの販売機能は、2017年6月に、富士通100%子会社の富士通パーソナルズから、FCCLに移管。現在は、FCCLによる販売ルートとして展開しているが、教育分野を含む法人向けPCピジネスは、依然として、富士通本体が行なっている。サポート体制についても、個人向けPCはFCCL、法人向けPCは富士通が担当している。

 実は、2020年度(2020年4月~2021年3月)に、富士通の国内PCビジネスには、大きなインパクトがあった。

 それは、富士通のシェアは、前年度の16.2%から5ポイント以上もシェアを落とし、10.9%に留まったのだ(MM総研調べ)。

 MM総研が調査を開始した1994年度の富士通のシェアは10.1%。だが、FMVシリーズの販売が軌道に乗った1995年度には19.4%と一気にシェアを拡大。それ以降、20%前後のシェアを維持し、2000年代には、NECとトップシェアを争っていた。2011年にNECが、レノボグループの傘下に入ってからは、NECレノボとしての合計値となったことで差が開くことになり、さらに、2018年にFCCLがレノボ傘下に入ってからは、富士通PCのシェアは16%台に縮小。それが、2020年度には、10.9%にまで落ち込んだ。

2020年度 個人向けPC市場シェア MM総研調べ

2020年度 企業向けPC市場シェア MM総研調べ

 こうした経緯を辿ると、富士通のシェアが10%となったのは、26年ぶりのことであり、歴史的に見ても、国内シェアの大きく減少する結果となったのだ。

 だが、これを深堀りしてみると、興味深いことがわかる。

 FCCLが直接担当している個人向けPCは、2019年度の14.4%から14.6%へと、わずかとはいえ、シェアを拡大したのに対して、富士通本体が販売を担当している法人向けPCでは16.8%から、9.4%へと大きくシェアを下げたのだ。

 BCNの調べでは、量販店市場では、デスクトップPCでは4年連続トップシェアを維持。ノートPCでも、テレワーク需要を取り込んで、好調に推移しており、FCCLも過去最高益を達成した模様だ。

 だが、富士通の決算発表では、法人向けPC事業を含むユビキタスソリューションは、売上収益が前年比26.5%減と、事業規模を4分の3にまで縮小。中でも、2020年度の特需といえたGIGAスクール需要の波に乗れず、もともと得意としていた教育市場で存在感を発揮することができなかったのが実態だ。

 富士通の決算発表の席上、富士通の磯部武司CFOは、「前年のWindows7関連特需の反動が大きく影響した」と説明したが、2020年度の国内PC市場は、GIGAスクール構想やテレワーク需要によって、過去最高の出荷実績を記録しており、業界全体としてWindows 7サポート終了に伴う特需を上回る結果となっている。

 Windows 7関連特需の反動を理由にしたのは、富士通だけだった。言い換えれば、富士通の磯部CFOのコメントは、それだけ法人向けビジネスが低迷したことを裏づけるものになっているといえよう。

 今後、富士通の国内PC市場におけるシェアを再び拡大させるには、法人向け市場での再成長が不可欠だ。また、GIGAスクール構想で出遅れた教育分野向けのPCでの巻き返しも必要だろう。

 最新データとなる2021年度第1四半期(2021年4月~6月)は、個人向けPC市場では、富士通PCがWindows陣営としてはトップシェアを維持した模様だが、企業や教育分野では、3番手以降に留まっている。

富士通PCとNECレノボのシェア推移(MM総研調べ)

 26年前に、富士通のシェアが一気に拡大したのは、FMV DESKPOWERやBIBLOの投入によって、個人向けの販売が急増し、法人向けと個人向けの両輪が揃ったのが要因だった。2021年度は、26年前とは逆に、好調な個人向けに対して、低迷する法人向けのビジネスをいかに成長させるかが鍵となる。

 40年目の節目を迎えた富士通PCは、国内市場で再び存在感を発揮することができる体制づくりに挑む必要がある。

 国内シェア10%にまで落ち込んだいまの富士通PCには、26年前のようなFMVシリーズの投入といったような打開策があるのだろうか。まずは、まだベールに隠れたままの40年記念モデルが、そのきっかけになることに期待したい。

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