夏休みの読書ガイド

アゴラ 言論プラットフォーム

今年はカーボンニュートラルでにぎわっているので、地球環境問題を中心に選んでみた。

  1. マカフィー『MORE from LESS 資本主義は脱物質化する』
  2. 櫻川昌哉『バブルの経済理論』
  3. Nordhaus, “The Spirit of Green”
  4. 川口マーン恵美『メルケル 仮面の裏側』
  5. 杉山大志『「脱炭素」は嘘だらけ』

1は日本経済新聞出版が出しているので、日経新聞の記者全員に配って教育すべきだ。いま日経が展開している「カーボンゼロ」キャンペーンは、統制経済と裁量行政で日本経済を破壊する罠である。資本主義の限界を克服するのは「脱成長」ではなく資本主義しかない、というのが本書の指摘する歴史の教訓だ。

気候変動を経済問題として理論的に論じたのが3で、カーボンゼロなどという数値目標が無意味であることを説明している。CO2削減の指標は排出量ではなく、限界削減費用を炭素価格と一致させる価格メカニズムなのだ。

4はメルケルの大宰相の仮面の背後に、東ドイツのエートスが生きていることを指摘している。ドイツはマルクスを生んだ社会主義の祖国であり、今や世界中がドイツ=EUの「環境社会主義」に巻き込まれつつある。それはナチスのように自爆はしないだろうが、ゆるやかな資本主義の死への道である。

コロナで財政支出が膨張し、バラマキの圧力が強まっているが、2も指摘するように現在のゼロ金利は、資産運用能力の劣る邦銀がゼロリスクの国債に群がってできたバブルであり、持続可能ではない。今プライマリーバランスを黒字化する必要はないが、長期的には貯蓄不足と金利上昇で、インフレとマイナス成長に陥るリスクが大きい。