荒れ地を走り、川を渡る。どんな場所でも力強く移動できる 水陸両用な全地形対応車両といえば、世のキッズ達……いや、全人類の憧れであろう。
そんな夢みたいな車両、あるなら見てみたい! と思ったら、なんと配備されている消防署があるらしい。車両の名前は「レッドサラマンダー」。名前からすでにイカしてるぅ!
日本に一台しか存在しない貴重な姿を見に行ってきたので、自慢させてくれ!!
・レッドサラマンダーを見に行こう
実を言うと、レッドサラマンダーを見るのは意外と簡単だ。
やってきたのは愛知県岡崎市にある岡崎市消防本部。
週末になると、レッドサラマンダーはその玄関先に日向ぼっこをしているのだ(ただし、出動している時は除く)。
筆者が訪問した時も レッドサラマンダーは存在感ある姿を惜しげもなく披露しており、周囲には親子連れが2組夢中になって眺めていた。
子どもたちが飽きるのを待って近づくと、ただでさえ大きな車体の分厚さと迫力に圧倒される。
変形してロボットになりそうな、少年心をくすぐられるフォルムなのだ。
比較として隣に立ってみる。
筆者の身長は156cmなので、推定でクローラー(キャタピラー)は約800mm、運転席の乗口は約1100mmも高さがあることになる。
公式情報によると全高は約2700mmということなので、この数値は大体合っているはずだ。
レッドサラマンダーは連結キャビン構造という構造を取っており、後ろには物資や人を載せられるユニットが接続されている。
合計すると全長は約8700mm、総重量は約1万2100kg。結構長いし だいぶ重い。
前後の接続部の屈折ステアリングは「へ」の字に曲がることで不整地に対応。また前後の車両で押し引きができるため、溝やくぼみを乗り越えられる仕組みなのだそうだ。
・意外と弱点もある…
しかしここまで車体が大きいと、実はそこまで万能に全地形を走り回れるというわけではないらしい。
具体的には水深が約1200mm、段差が約600mm、溝が約2000mmの範囲で走行可能ということ。(ちなみに 万が一水深1200mm以上の場所へ侵入してしまった場合でも、沈まず水に浮くように作られている)
ついでに言うと燃費が1km/Lでタンク容量が500L(軽油)、最高速度が50km/hという事情から 自力で長距離を移動することはなく、専用の積載車が必須なのだそう。
実際に車庫の一番奥では積載用のトラックがスタンバイしていたし、
消防署内には訓練中の積載姿が飾られていた。
どんなに優れたマシンであっても、やはり万能というわけにはいかないんだな。
……と、悪いことばかり言っても心苦しいので、フォローというわけではないが 過去のレッドサラマンダーの活躍をご紹介しよう。
過去には2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨の際に現地へ派遣され、救助活動に参加。
そしてつい先日の2023年6月2日にも、大雨により冠水した地元 愛知県岡崎市の道路にて、立ち往生した住民を救助するという活躍を見せたのだ。
難しいことに、こういった消防車両は災害がなければ活躍することはない。つまり活躍したっていうことは、必ず災害が起きているということ。
できれば役に立たずにずっと日向ぼっこをしていて欲しいのだが、それとは別に、出動するレッドサラマンダーがカッコいいことは紛れもない事実なのだ……。
・全国どこでも駆けつける!
そもそも何故レッドサラマンダーが岡崎市消防本部に置かれているのかというと、その立地に理由がある。愛知県は地理的に日本の中央付近に位置し、岡崎市に関しては海からの津波の心配がない。
さらには東名高速道路の岡崎インターチェンジが近くにあるため、有事の際に迅速に出動できる条件が整っているのだそうだ。
そう聞くと、レッドサラマンダーが最後の砦のように見えてきた。
活躍して欲しいというよりも、ずっと私たち国民の心の支えであって欲しい。笑顔の子どもたちが平和に見学できる日々が なるべく長く続くことを祈っているぞ……!!
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.