【レビュー】消費電力減で扱いやすくなった高性能GPU「GeForce RTX 4070」

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 NVIDIAは4月13日より、Ada Lovelaceアーキテクチャを採用するミドルハイGPU「GeForce RTX 4070」を発売する。

 今回は、GeForce RTX 4070を搭載するNVIDIAの純正ビデオカードであるFounders Editionをテストする機会が得られたので、そのパフォーマンスを上位モデルのGeForce RTX 4070 Tiと比較してみた。

GeForce RTX 4070の実力を動画でも確認!【4月12日(水)23時から】

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 注目のNVIDIA新GPU「GeForce RTX 4070」をライブで解説します! GPUや搭載カードの特徴、実際のゲームタイトルを多数用いたベンチマークの結果、実動デモなどを交えてディープな内容でお届けします。解説はKTU・加藤勝明氏、MCは改造バカ・高橋敏也氏

599ドルのミドルハイGPU「GeForce RTX 4070」

 GeForce RTX 4070は、Ada Lovelaceアーキテクチャに基づいて、NVIDIA向けにカスタマイズされたTSMCの4Nプロセスで製造されたGPUコア「AD104」を採用するミドルハイGPU。実売予想価格は599ドルで、上位モデルであるGeForce RTX 4070 Ti(799ドル)より200ドル安い価格が設定されている。

 GeForce RTX 4070のAD104コアでは、46基のSMが有効化されており、5,888基のCUDAコアや46基のRTコア、184基のTensorコアなどが利用できる。VRAMには21Gbps動作のGDDR6Xメモリを12GB搭載しており、GPUと192bitのメモリインターフェイスで接続することによって約504GB/sのメモリ帯域幅を実現している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、消費電力指標のTGPは200W。

【表1】GeForce RTX 4070の主な仕様
GPU GeForce RTX 4070 GeForce RTX 4070 Ti
アーキテクチャ Ada Lovelace (AD104) Ada Lovelace (AD104)
製造プロセス TSMC 4N TSMC 4N
SM 46基 60基
CUDAコア 5,888基 7,680基
RTコア 46基 (第3世代) 60基 (第3世代)
Tensorコア 184基 (第4世代) 240基 (第4世代)
テクスチャユニット 184基 240基
ROPユニット 60基 80基
ブーストクロック 2,475MHz 2,610MHz
L2キャッシュ 36MB 48MB
メモリ容量 12GB (GDDR6X) 12GB (GDDR6X)
メモリスピード 21.0Gbps 21.0Gbps
メモリインターフェイス 192bit 192bit
メモリ帯域幅 504GB/s 504GB/s
NVENC 第8世代×1基 第8世代×2基
PCI Express PCIe 4.0 x16 PCIe 4.0 x16
消費電力 (TGP) 200W 285W
実売予想価格 599ドル 799ドル

NVIDIA純正ビデオカード「GeForce RTX 4070 Founders Edition」

 GeForce RTX 4070 TiにはFounders Editionを用意していなかったNVIDIAだが、GeForce RTX 4070にはFounders Editionを用意した。

 GeForce RTX 4070 Founders Editionは、GeForce RTX 4080やGeForce RTX 4090のFounders Editionで採用されたデザインコンセプトを継承しつつ、2スロット仕様にコンパクト化したGPUクーラーを搭載。カード長も実測で約242mmと、304mmだったGeForce RTX 4080 Founders Editionより短くなった。

 動作に必要な補助電源コネクタは12VHPWR×1系統で、PCIe 8ピンコネクタ2本を12VHPWRに変換する最大300W対応のアダプタが同梱されている。ブラケット部の画面出力端子はDisplayPort(3基)、HDMI(1基)。

GeForce RTX 4070 Founders Edition

GeForce RTX 4070 Founders EditionのGPU-Z実行画面

比較用GPUとテスト環境

 GeForce RTX 4070の比較相手には、上位モデルのGeForce RTX 4070 Tiを搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO」を用意した。

 各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の通り。グラフィックスドライバについては、GeForce RTX 4070がレビュアー向けの「531.42」で、GeForce RTX 4070 Tiにはテスト時点での最新版「531.41」を導入している。

【表2】各ビデオカードの動作仕様
GPU GeForce RTX 4070 GeForce RTX 4070 Ti
ビデオカードベンダー NVIDIA ZOTAC
製品型番 Founders Edition ZT-D40710B-10P
ベースクロック 1,920MHz 2,310MHz
ブーストクロック 2,475MHz 2,700MHz
メモリ容量 12GB (GDDR6X) 12GB (GDDR6X)
メモリスピード 21.0Gbps 21.0Gbps
メモリインターフェイス 192bit 192bit
メモリ帯域幅 504GB/s 504GB/s
PCI Express PCIe 4.0 x16 PCIe 4.0 x16
Power Limit 200W 285W
GPU PPT(持続/短時間)
温度リミット 83℃ 84℃
Resizable BAR 有効 有効
GPUドライバ GRD 531.42 (31.0.15.3142) GRD 531.41 (31.0.15.3141)

ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO

ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIROのGPU-Z実行画面

 各ビデオカードを搭載するベース機材には、Core i9-13900Kを搭載したIntel Z790環境を用意した。

 そのほかの機材や条件については以下の通り。

【表3】テスト機材
CPU Core i9-13900K (8P+16Eコア/32スレッド)
CPUパワーリミット PL1=PL2=Unlimited、TjMAX=100℃
CPUクーラー ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
マザーボード GIGABYTE Z790 AORUS ELITE AX [BIOS=F5]
メモリ DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V)
システム用SSD CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSD CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum)
OS Windows 11 Pro 22H2 (build 22621.1485、VBS有効)
電源プラン バランス
計測 ラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温 約24℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「サイバーパンク2077」、「フォートナイト」、「オーバーウォッチ 2」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」「Blender Benchmark」。

3DMark「Speed Way」

 3DMarkのDirectX 12 UltimateテストであるSpeed Wayでは、GeForce RTX 4070が4,461を記録。5,496を記録したGeForce RTX 4070 Tiを約81%のスコアとなっている。

【グラフ01】3DMark v2.26.8092「Speed Way」

3DMark「Port Royal」

 3DMarkのDirectX Raytracing(DXR)テスト「Port Royal」では、GeForce RTX 4070が11,136を記録。14,399を記録したGeForce RTX 4070 Ti比で約77%のスコアとなっている。

【グラフ02】3DMark v2.26.8092「Port Royal」

3DMark「Time Spy」

 3DMarkのDirectX 12テストであるTime Spyでは、標準テストのTime Spyのほか、高負荷版のExtremeを実行した。

 GeForce RTX 4070が記録したスコアは、GeForce RTX 4070 Ti比で無印版のTime Spyが約80%、4Kで実行されるExtremeでは約79%だった。

【グラフ03】3DMark v2.26.8092「Time Spy」

【グラフ04】3DMark v2.26.8092「Time Spy Extreme」

3DMark「Fire Strike」

 3DMarkのDirectX 11テスト「Fire Strike」では、標準テストであるFire Strikeのほか、高負荷版のExtremeとUltraを実行した。

 GeForce RTX 4070のスコアをGeForce RTX 4070 Ti比でみると、Fire Strikeが約93%、Fire Strike Extremeが約80%、Fire Strike Ultraでは約74%となっている。

【グラフ05】3DMark v2.26.8092「Fire Strike」

【グラフ06】3DMark v2.26.8092「Fire Strike Extreme」

【グラフ07】3DMark v2.26.8092「Fire Strike Ultra」

3DMark「Wild Life」

 3DMarkのVulkanテストである「Wild Life」では、標準テストのWild Lifeと、高負荷版のWild Life Extremeを実行した。

 GeForce RTX 4070のスコアをGeForce RTX 4070 Ti比でみると、Wild Lifeが約79%、Wild Life Extremeは約77%となっている。

【グラフ08】3DMark v2.26.8092「Wild Life/Wild Life Extreme」

3DMark「DirectX Raytracing feature test」

 DXRによるリアルタイムレイトレーシング性能の計測に特化した3DMarkの「DirectX Raytracing feature test」では、GeForce RTX 4070が51.23fpsを記録。69.78fpsを記録したGeForce RTX 4070 Ti比で約73%のパフォーマンスを発揮した。

【グラフ09】3DMark v2.26.8092「DirectX Raytracing feature test」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度をテストした。

 GeForce RTX 4070のスコアをGeForce RTX 4070 Ti比でみると、フルHDで約91%、WQHDで約88%、4Kでは約80%となっている。

【グラフ10】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」

【グラフ11】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットの「レイトレーシング:ウルトラ」をベースに、DLSS 3の超解像とフレーム生成を有効にしてベンチマークモードを実行した。

 GeForce RTX 4070の平均フレームレートは、フルHDで約168.39fps、WQHDで約108.42fps、4Kでも約73.83fpsを記録。DLSS 3を活用すれば、4Kでも十分にプレイ可能なフレームレートを実現できている。

 GeForce RTX 4070の結果をGeForce RTX 4070 Ti比でみると、フルHDで約87%、WQHDで約78%、4Kでは約77%だった。

【グラフ12】サイバーパンク2077 (v1.61)

フォートナイト

 フォートナイトでは、グラフィックプリセット「最高」をベースに、NaniteとLumen(ハードウェアレイトレーシング)、DLSS超解像を有効にした設定と、NaniteとLumenを無効化してアンチエイリアスを「TAA」にしたスタンダードな設定でフレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIは「DirectX 12」。

 NaniteとLumen、そしてDLSS超解像を有効にした条件でのGeForce RTX 4070は、フルHDで約72.6fps、WQHDで約56.1fps、4Kで約54.7fpsを記録。GeForce RTX 4070 Ti比で64~83%のパフォーマンスを発揮した。

 Nanite、Lumen、DLSSを無効にした条件でのGeForce RTX 4070は、フルHDで約197.8fps、WQHDで約141.9fps、4Kで約76.3fpsを記録。GeForce RTX 4070 Ti比で80~85%のパフォーマンスを発揮した。

【グラフ13】フォートナイト (v24.10)「Nanite/Lume=有効、アンチエイリアス=DLSS」

【グラフ14】フォートナイト (v24.10)「Nanite/Lume=無効、アンチエイリアス=TAA」

オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、描画品質をもっとも高い「エピック」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは600fps。

 GeForce RTX 4070は、フルHDで約279.6fps、WQHDで約196.4fps、4Kで約104.2fpsを記録。GeForce RTX 4070 Ti比で77~80%のパフォーマンスを発揮した。

【グラフ15】オーバーウォッチ 2 (v2.3.1.0.110340)

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、画質プリセットを「高」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。

 GeForce RTX 4070は、フルHDで約252.9fps、WQHDで約194.1fps、4Kで約96.1fpsを記録。WQHD以上ではGeForce RTX 4070 Ti比で約82%のパフォーマンスとなっているが、フルHDではGeForce RTX 4070 Tiとほぼ同等のパフォーマンスを発揮している。

 フルHDでGeForce RTX 4070とGeForce RTX 4070 Tiが横並びになっているのは、CPUのボトルネックによってフレームレートが頭打ちとなっているためだ。

【グラフ16】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v14.0.0.0)

Blender Benchmark 3.1.0

 Blender Benchmark 3.1.0では、標準で用意されている3つのシーン(monster、Junkshop、classroom)をテストした。テストに用いたBlenderのバージョンは「3.5.0」。

 GeForce RTX 4070の結果をGeForce RTX 4070 Ti比でみると、monsterで約79%、Junkshopで約83%、classroomで約80%のパフォーマンスを発揮している。この両GPUのパフォーマンス差は、高負荷なゲームでの差に近いものとなっている。

【グラフ17】Blender Benchmark 3.1.0 (Blender v3.5.0)

システムの消費電力とワットパフォーマンス

 ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、ベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 アイドル時消費電力については、56.3Wを記録したGeForce RTX 4070が、75.2WのGeForce RTX 4070 Tiより20W弱も低い結果となっている。ただ、ビデオカードがオーバークロック仕様かつ豪華設計のZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIROは、以前のテストでもアイドル時消費電力が高めであったため、純粋にGPUのアイドル時消費電力差が反映された結果ではない点は考慮する必要がある。

 ベンチマーク実行中のGeForce RTX 4070搭載システムは、平均消費電力で273.4~343.8Wを記録。これは、GeForce RTX 4070 Ti搭載システムが記録した323.9~439.4Wより9~25%も低い消費電力だ。こちらもGeForce RTX 4070 Tiがオーバークロック仕様のビデオカードである点を考慮する必要はあるが、GeForce RTX 4070が上位GPUよりもだいぶ省電力なGPUであることが伺える。

【グラフ18】3DMark実行中とアイドル時のシステムの消費電力 (平均/最大)

 ベンチマーク実行中の平均消費電力で、ベンチマークスコアや平均フレームレートを割ることによって求めた「ワットパフォーマンス」と、それをGeForce RTX 4070 Tiを基準に指数化して比較してみた。

 GeForce RTX 4070搭載システムのワットパフォーマンスは、GeForce RTX 4070 Ti比で98~108%となっている。実消費電力では大きな差がついていた両GPUだが、同じGPUアーキテクチャと製造プロセスを採用しているだけあって、ワットパフォーマンス自体はかなり近いものとなっていることが分かる。

【グラフ19】各GPU搭載システムのワットパフォーマンス(スコア/平均消費電力)

【グラフ20】GeForce RTX 4070 Ti 搭載システムのワットパフォーマンスを100%とした場合

高性能でより扱いやすいミドルハイGPU「GeForce RTX 4070」

 GeForce RTX 4070は、上位モデルであるGeForce RTX 4070 TiのGPUコアや一部の機能を削減したGPUであり、その結果としてGeForce RTX 4070 Ti比で8割前後の性能となっている。一方で、消費電力とそれに伴う発熱も相応に削減されているため、コンパクトなGPUクーラーでもしっかり性能を発揮できるGPUとなっている。

 既存のGeForce RTX 40シリーズ製品は巨大なGPUクーラーを搭載した製品が多く、それらは高い冷却性能と静粛性を提供する一方で、搭載可能なケースが限られたり、カードの重量が大きくなるなど扱いにくい面も生じていたが、NVIDIAがFounders Editionでコンパクトなデザインを示したことで、GeForce RTX 4070ではより小型で扱いやすい製品が増えることが期待できる。

 今回はGeForce RTX 4070 Tiとの比較のみで、その8割程度の性能という結果だったが、各ゲームで示したGeForce RTX 4070のパフォーマンスは、ミドルハイGPUとして十分に優秀と言えるものだ。599ドルという価格でゲーミング性能と扱いやすさを兼ね備えたGeForce RTX 4070は、自作PCユーザーやゲーマーにとって注目すべきミドルハイGPUとなるだろう。

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