東芝、30TB超のニアラインHDDを開発へ。11枚の多層化技術を活用

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 東芝は、2022年度上期連結業績を発表。その中で、今後のHDDの開発ロードマップを示し、2024年度にリーディングエッジ製品として、29TBの製品を投入する計画に言及した。さらに、2025年度には11枚の多層化技術を活用し、30TB超の実現を目指すという。

 東芝のHDDは、スピントルク発振素子を利用したアシスト記録技術である「磁束制御型マイクロ波アシスト記録(FC-MAMR )」を採用するとともに、データを記録する際に、屋根に瓦を葺くように、前回記録したトラックの一部に重ねてデータを記録し、記録ヘッドの幅を狭めることなく、トラック密度を高める瓦記録技術(SMR方式=Shingled Magnetic Recording)を採用。これにより、2022年度には、20TBのニアラインHDDを実用化している。

 東芝では、HDDメディアメーカーである昭和電工と、ヘッドメーカーであるTDKとの協業で、新たな次世代磁気記録技術として、「共鳴型マイクロ波アシスト記録 (MAS-MAMR)」を開発。マイクロ波を記録メディアに局所的に照射することで記録能力を向上させることができるため、さらなる大容量化につなげることができるという。

 30TB以上の製品には、この技術を採用することになる。2023年度にMAS-MAMRの記録密度検証を行ない、信頼性検証を経て、同技術の製品化につなげる考えだ。

 東芝は、HDDメーカー3社のうちで唯一、ヘッドとメディアを購入して、開発・製造を行なう水平分業型の事業を50年以上継続している。今後の大容量化においても、この体制を維持する考えを示す。2024年度までに22TB、24TB、29TBの製品を投入する計画だ。

 東芝デバイス&ストレージの佐藤裕之社長は、「2020年代の10年間は、データの10年である。2021年から2025年までの4年間でデータ生成量は2.2倍、稼働するストレージ容量は2.0倍、そのうちのHDDの稼働容量は1.9倍という大幅な伸びが想定されている。特にニアラインHDDは、容量と速度、コスト、品質のバランスに優れ、大容量データセンターのストレージの主要な領域を担っている。

 東芝は、大手クラウドサービスプロバイダ上位10社のうち、8社に導入実績を持ち、今後のシェアアップに向けて新製品を投入する。東芝のHDDの成長戦略として、ニアラインHDDへの資源集中を継続していく」とした。

 だが、HDDの主力工場であるフィリピン工場では、データセンター向け市況の悪化に伴う生産規模の減少に伴い、同工場の全従業員の16%にあたる1,500人の人員削減を実施している。

 東芝デバイス&ストレージの佐藤裕之社長は、「生産規模減に伴う人員抑制として1,300人、生産性改善による省人化で200人を削減した。間接員の増強計画を延期するとともに、増産および更新設備への投資時期の見直し、経費の削減などにより、約50億円の固定費削減を実施した。

 現在、広告収入などに頼るクラウドサービスプロバイダにおいて、景気の不透明感を背景にした投資抑制があり、需要減によるデータセンター向け市況の悪化が見られる。だが、これは、一時的なものであると判断している。2023年度には本格回復するだろう。次世代の高容量実現のための研究開発投資は実施していくことになる」とした。

HDDの品質保証で130億円計上

 なお、東芝全体での2022年度上期(2022年4~9月)連結業績は、売上高が前年同期比3.2%増の1兆5,952億円、営業利益は93.9%減の27億円、当期純利益は68.3%増の1,006億円となった。

 HDD事業における製品保証引当金として約130億円を計上したことや、HDD市場の急激な市況悪化により、営業利益が減益となっている。また、プリンティング事業ののれん減損として約100億円を計上している。

 「HDD事業における製品保証引当金は、特定顧客において発生した品質問題により返却されたものへの対応であり、現象については相互で確認し、最大限の情報共有を行なった中で、保守的に引き当てを行なっている。これを最大額と考えている」(東芝デバイス&ストレージの佐藤社長)としたほか、「製品保証引当金とHDDの市況悪化は、いずれも一時的要因ではあるが、この影響により営業利益の通期見通しを下方修正した」(東芝の代表執行役専務 CFOの平田政善氏)と述べた。

東芝デバイス&ストレージの佐藤裕之社長

東芝 代表執行役専務 CFOの平田政善氏

 通期見通しは、売上高は前回公表値に比べて500億円増の3兆3,500億円としたが、営業利益は前回公表値に比べて450億円減の1,250億円とした。

 2022年度上期のデバイス&ストレージソリューション事業の売上高は前年同期比7%減の4,032億円、営業利益は42%減の202億円。そのうち、HDDその他事業の売上高が前年同期比27%減の1,905億円、営業利益は255億円減のマイナス135億円の赤字。

 東芝の平田CFOは、「モバイルやデスクトップPC向けHDDの市場縮小、ニアラインHDD市場が調整局面に入ったこと、製品保証引当金が影響した」と発言。「モバイルおよびデスクトップPC向けHDDについては、今後も楽観はできない」(東芝デバイス&ストレージの佐藤社長)とした。

 また、半導体事業は売上高が23%増の2127億円、営業利益が49%増の337億円。「半導体の市況は堅調であるほか、円安効果の寄与、ニューフレアテクノロジーのマスク描画装置の販売増が貢献した」とする。

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