2022年(令和4年分)年末調整の書き方 ~保険料控除申告書は計算ツールで超簡単に記入しよう~ 生命保険料控除の計算方法と「給与所得者の保険料控除申告書」の記入手順

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 サラリーマンの秋~年末の風物詩、「年末調整」がやってきた。読者のお手元には生命保険会社などから保険料控除の証明書が届いているだろう。初回は3つの申告書の記入例と「令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方を紹介した。2回目となる今回は 「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」 の書き方を見ていこう。面倒・複雑な生命保険料控除の計算・記入は、計算ツールを利用すると超簡単に記入できる。

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」とは

 「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険や地震保険、近年人気のiDeCoなどで支払った金額を申告し、納税する額を減らすための申告書だ。主役となる生命保険は複数に分類されていて、保険料から控除額を算出する式も分かりにくく、(手抜きをしないと)少々手間のかかる作業となる。

 生命保険は一度契約するとそのまま継続する人が多い。前年に記入した申告書のコピーを持っている人は、保険契約の変更がなければそれを見ながら記入すると楽だ。当然、今年書いた申告書はコピーを取るか、スマホで撮影して来年利用したい。

 この申告書は5つのブロックに分かれている。上段は会社名や自分の氏名、住所などを記入する欄。下段の左側、大きなエリアが主役となる生命保険。右側は地震保険、社会保険、確定拠出年金(iDeCo)などを記入する欄が縦に並んでいる。

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の5つのブロック

 最上段のブロックは会社名や自分の氏名、住所など記入する欄となっている。おそらく左端の所轄税務署や会社名、法人番号、会社の住所は会社が記入してくれるだろう。ご自身は氏名と住所を記入すれば終了だ。

主役の「生命保険」は新旧制度あわせて5種類

 国税庁の統計によると、生命保険料控除を受けている人は約8割。多くの人が記入するこの申告書の主役だ。まずは生命保険会社などから送られてきた控除証明書を手元に用意しよう。

 生命保険の控除は、平成23年(2011年)以前に契約した保険が「旧制度」、平成24年(2012年)以降に契約した保険が「新制度」となっている。さらに旧制度は「一般生命保険」(医療保険を含む)と「個人年金保険」の2種類、新制度は「一般生命保険」「個人年金保険」に「介護医療保険」を加えた3種類で、新旧あわせて5種類に分類されている。

生命保険料控除は「旧制度」「新制度」があり、旧制度は「一般生命保険」「個人年金保険」の2つ、新制度は「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つに分かれている

 自分がいつ生命保険に加入したかを覚えている人は少ないだろう。「えーっと、子どもが生まれた年に保険に入ったから……」と記憶をたどる必要はない。手元にある控除証明書に適用制度が旧制度か新制度か、一般(生命保険)用、介護医療用、個人年金用などが記載されているので、それを見ながら記入しよう。この証明書は提出時に添付する必要があるので、記入を終えた申告書と一緒に提出しよう。

生命保険料控除証明書には「旧制度」「新制度」「一般」「介護医療」などの分類が記載されている

保険料控除証明書がまだ来ない、見つからない……というときは

 筆者の手元に最初に届いた保険料控除証明書はアフラックで10月3日。次は別のアフラックで10月15日。ソニー生命は10月18日だった。「第一生命が来ないなぁ?」と思ったが、昨年60歳で保険の引き落としは終了、今年は保険金を払っていないので証明書が届くわけはなかった。最後がiDeCoで10月31日だった。

 同じアフラックでも2週間弱の差があり、保険会社から大量の証明書が順次発送されていると思われる。近年、年末調整の提出日が早くなる傾向があり、人によっては年末調整の提出日までに控除証明書が届かない人もいそうだ。

 事前準備は必要だが、生命保険料控除証明書は電子データのダウンロードができる。郵送の証明書が届く前に電子データをダウンロードできれば、「証明書がまだ来ない」人も期限までに提出できるかもしれない。控除証明書を紛失などで見つからない場合も同様。ハガキの証明書の再発行には、1)オペレーターに依頼、2)自動音声による再発行、3)インターネットによる再発行――がある。郵送の場合は数日かかるので、提出期限ギリギリの場合は電子データをダウンロードしよう。お勤めの会社がダウンロードした電子データでそのまま提出できる場合は電子データ、電子データ不可の場合はPDFを印刷して提出しよう。

 筆者が加入しているアフラック、ソニー生命、第一生命の証明書発行の方法は以下の記事を参考にしていただきたい。

「生命保険料控除」の計算

 生命保険料控除の計算は面倒くさい。ここでは計算方法を説明するが、もっと楽な方法を次項で紹介するので手計算をする必要はない。

 一応、面倒な計算方法を紹介しよう。加入している生命保険の1年間の支払額から「生命保険料控除」の額を算出するのだが、無駄や間違いを避けるため、記入を始める前に計算式を確認したい。申告書の最下段に「計算式I(新保険料等用)」「計算式II(旧保険料等用)」が用意されている。

計算式I(新保険料等用)

 新制度の保険料の合計額が2万円以下なら、合計額がそのまま控除額となる。例えば1万9860円なら計算は不要で1万9860円となる。8万1円以上なら控除額は上限の一律4万円となるのでこれも計算不要だ。複数の保険に加入しているときは、8万1円以上の保険が1つあれば上限額を超えるので、他の保険は記入不要だ。もし9万円、6万円、3万円の保険があったら9万円の保険だけ記入すればよい。年末調整が意味不明だったサラリーマン時代の筆者はこのことに気付くのに十数年かかった。生命保険を2つ、長女と長男の学資保険を毎年全部記入していた。

 旧制度の保険料は合計額が2万5000円以下なら、合計額がそのまま控除額となる。10万1円以上なら控除額は一律5万円となる。

計算式II(旧保険料等用)

 記事で紹介する事例は5万円、10万円など切りの良い金額となるが、実際の保険料はそうではない。難しい計算ではないが、新旧で計算式が違うので勘違いによる間違いもありそうだ。例えば3万3580円の介護医療保険(新制度)は以下の計算となる。

  3万3580円×1/2+1万円=2万6790円

 このように少々面倒な生命保険料控除の計算に役立つのが、生命保険会社が提供しているサポートツールだ。

保険会社の「生命保険料控除申告サポートツール」を活用しよう

 端数のある実際の生命保険料で複数枚の計算が面倒な人は、生命保険会社のサポートツールを利用しよう。「生命保険料控除 サポートツール」で検索すると、多くの保険会社の計算サポートサイトを見つけることができる。自分が加入している保険会社でなくても結果は同じなので、積極的に利用していただきたい。

 実際に使用してみた。旧制度の一般の生命保険料に8万9420円、新制度の介護医療保険料に4万8320円、旧制度の個人年金保険料に6万8920円と入力し[計算する]をクリックすると、それぞれの控除額が4万7355円、3万2080円、4万2230円となり、合計が上限の12万円を超えたので生命保険料控除額は12万円となった。保険会社のサポートツールは自動計算も楽だが、記入例も表示されるので迷わずに申告書に記入できる。

各保険に保険料を入力して[計算する]をクリック

自動計算に加え、記入例も表示される

「生命保険料控除」の記入

 生命保険料控除は納税者の8割が控除を受けているので、記入例をシンプルな例と複雑な例の2つを用意した。

記入例1:旧制度の生命保険のみの場合

 1つめはシンプルに旧制度の生命保険(+旧制度の医療保険)に加入している例だ。この例は死亡保険などの一般生命保険(旧制度)に12万円、入院給付金などの医療保険(旧制度)に9万円を支払っている。旧制度では介護医療保険の分類がないので、医療保険は一般生命保険と同じ分類となっている。

旧制度の生命保険のみの記入例

 矢印に沿って「(a)のうち旧保険料等の金額の合計額」をB欄に21万円(12万円+9万円)と記入し、下段の「計算式II(旧保険料等用)」に照らし合わせ控除額の5万円を算出し、その後も矢印に沿って記入すれば完成となる。記入例では保険料の合計が10万円を超えているので、控除額は上限の5万円。計算式を見ると10万1円以上は一律に5万円となっている。この記入例は生命保険だけで12万円なので、医療保険の9万円は記入する必要はない。前述のようにサラリーマン時代の筆者はこの記入例のように、10年以上、複数の保険を記入して無駄な労力を掛けていた。

記入例2:旧制度の一般生命保険+新制度の介護医療保険+旧制度の年金保険の場合

 2つめの記入例は新旧の保険がてんこ盛りだ。旧制度の一般生命保険に12万円、新制度の介護医療保険に9万円、旧制度の年金保険に12万円となっている。内容も図も複雑になったので、旧制度の一般生命保険は青文字/青実線、新制度の介護医療保険は赤文字/赤点線、旧制度の年金保険は緑文字/緑実線とした。

旧制度の一般生命保険、新制度の介護医療保険、旧制度の年金保険の記入例

 一般の生命保険料は、先ほどの記入例と同じだ。青の実線矢印に沿って計算し、控除額は5万円(イ)となる。新制度の医療保険は、下段の介護医療保険料の欄に記入する。赤の点線矢印に沿って9万円の保険料を「計算式I(新保険料等用)」に照らし合わせ、控除額の4万円を(ロ)に記入する。

 旧制度の個人年金保険料は、記入例の緑の実線矢印に沿って計算すると、控除額は5万円(ハ)。一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除額の合計は14万円となるが、生命保険料控除の全体の上限が12万円なので合計の欄は12万円となる。

「地震保険料控除」の記入

 右側の上段、「地震保険料控除」も証明書を手元に用意しよう。保険会社の名称、保険の種類、保険期間など証明書を見ながら記入すれば完了だ。

「社会保険料控除」の記入

 地震保険の下の「社会保険料控除」の欄は、毎月の給与から天引きされている厚生年金、健康保険などは会社が把握しているので自分でこの欄に記入する必要はない。記入が必要なのは、年の途中で就職し、それまでプー太郎(就職活動)をしている期間に自分で国民年金、国民健康保険を支払っていた場合や、20歳を超えた大学生の子の国民年金を代わりに支払った場合はこの欄に記入する。

「小規模企業共済等掛金控除」の記入

 最後は下段の「小規模企業共済等掛金控除」。「iDeCo、何それ?」という人はスルーだ。近年急増している個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している人はこのブロックに記入しよう。

確定拠出年金(iDeCo)の小規模企業共済等掛金控除証明書

 iDeCoに加入している人は控除証明書の合計金額に記載された金額を申告書に記入する。事例は個人型年金加入者掛金に証明書の合計金額12万円を記入している。

合計金額を申告書に記入する

個人型年金加入者掛金に証明書の合計金額12万円を記入

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入手順<まとめ>

 生命保険料控除で紹介した2つの記入例の申告書全体の画像を掲載しておくので、参考にしていただきたい。念のため付け加えると、この記事をPCで閲覧している人は各画像をクリックすると拡大画像が開く。さらに左上の+マークをクリックするとより高解像度な元画像を表示することができる

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例1

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例2

 前回も紹介したが、国税庁のサイトから年末調整の申告書の入力用ファイル(PDF)がダウンロードできる。手書きが苦手、小さい文字が書けないという人は、お勤めの会社がPDFデータ、あるいはPDFを印刷したものを受け付けてくれるならこの入力用PDFファイルを利用しよう。前年のPDFを保存しておけば、家族、加入している生命保険会社の社名など翌年コピー&ペーストできるので効率アップが可能だ。

「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」入力用PDFファイルの画面

 繰り返しとなるが、生命保険は10年、20年と変更なく加入し続ける人が多い。税制改正がなければ、ずっと同じ内容を記入することとなる。転職すると企業により提出時期は10月下旬~12月上旬と変わるかもしれないが、保険料控除の記入内容は同じなので、前年の申告書のコピー、写真、PDFなどを保存しておくと楽に記入ができる。「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入はこれで完了だ。

 今回はここまで。次回は最後の1枚、少しフォーマットが変更された「令和5年分 給与所得者の扶養控除等異動申告書」の記入手順を紹介しよう。

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