川や湖なんかに景色が映った「水鏡」。リフレクションともいって、写真を趣味にしている人なら、積極的に狙いたい要素のひとつだ。わかりやすくキレイなので、パッと見の印象もいい。
その王様ともいえるのが「逆さ富士」の構図である。お山が上下対称に映っていて、めちゃ美しい。
ただ、そういう水面を使った写真って、撮影条件が難しいらしい。
どうにか手軽に撮影できないか考えたところ、鏡を使うことを思いつきました。
まずはご覧ください!
被写体となる山があって、大きな水面があって、波が立ってなくて、天気がよくて……。「水鏡」に映る逆さ富士を撮影しようと思うと、いくつもの条件が重なる日を選ばなければならない。
しかしこの構図、誰でも簡単に撮影できる方法を編み出しました!
まずは撮った写真からご確認ください。
すみません富士山ではないんですが、どうですか、バッチリ撮れていると思いませんか!
タイトルにも書いているのでお気づきかと思いますが、こちらの写真、水鏡ではなくて、鏡を使って撮影しました。
けっこう簡単にできますので、その方法をお伝えします。
お風呂用の鏡を使います
この写真を撮影するために必要なのは、お風呂用の鏡だ。
実はお風呂用でなくてもいいけど、“フチ”のない鏡がいいので。なぜか浴室用の鏡にはフチがないやつが多い。
人間も裸になる場所なので、鏡もまたネイキッドな姿のものが選ばれるのかもしれない。
この鏡を、カメラ(スマホ)のレンズの下にセットする。
これだけで、どこでも絶景が撮影できるようになる。水鏡が難しければ、鏡を使えばいいじゃない。
水面に見立てられるような直線が必要
このスタイルを考案して、最初に撮影した写真がこちら。
近所の川沿いから撮った、都富士(比叡山のことですね)。
上手く撮ればなんとかなりそうな手応えはあるものの、じっくり見ると不自然な部分が目につく。
鏡を使う都合上、横幅いっぱいに水面が広がる構図を撮影することになる。
ということは、ロケーションを選べば上手くいくのではないか。
そこで、近くの土手を映した写真がこちら。
急にそれっぽくないですか??
画面を横切る直線(川の土手とか、山の麓とか)に鏡面を沿わせれば、自然な感じで鏡をフェードインできる。
あと、レンズのすぐ近くに鏡を持っているので、どうしても鏡面が小さくブレてしまうんだけど、そのブレが小波の立った水面のようでリアルだ。
なんか楽しくなって、しばらく鴨川沿いの土手をバシャバシャ撮りまくってしまった。
覚えた技術はすぐ使うのが楽しい。
なんでも絶景っぽくなるので調子に乗ってしまう。
これは山だけでなく、京都の観光名所もキレイに撮れるのではないか!
そう思って、朝から意気揚々と金閣寺にも出かけたのだけど、境内では営利目的の撮影はNGであった。
ちょっと我に帰った。
いざ、近江富士(三上山)で撮影
冷静になったところで、いよいよ「逆さ富士」の撮影にもチャレンジしたい。
とはいえ、私は関西在住である。富士山に行くのはちょっと大変すぎるので、「近江富士」と呼ばれている三上山(滋賀県)を撮影しに行くことにした。梅雨どきということもあって、遠出して天気が悪いとダメージも大きいし(ってことにしておきたい)。
近江富士なら、京都からバイクで1時間ちょっとの距離。雨雲レーダーを見ながら出発できる。
というわけでやって来ました。山の西側には幹線道路も走っているけど、東側にまわると田園風景が広がっている。
田んぼの水の張り具合や天気など、条件がよければこの場所から天然の「逆さ富士」が撮影できるのかもしれない。でも、今回は、道具(鏡)を使わせていただきます!
では、いよいよ逆さになっていただきましょう。
到着時には曇り空だったお天気も、だんだん太陽が出て明るくなってきた。そんなときに撮れたのが、冒頭でも紹介したこの写真だ。
天気がいいと、いい写真が撮れる。これはよく知られていることだが、さらに青い空の面積も、増やせば増やすほど気持ちいい写真になる。これは意外と盲点なのではないか。鏡を使えば、青空の面積だけでなく、被写体の面積まで2倍にできてお得だぞ。
自分でやっているとはいえ、いきなり逆さ富士が出現するので、いちいち「オオ!」とか言ってしまう。
目の前の景色はわりと平凡だけど、スマホの中には絶景が出現するのだ。カメラロールもキラキラします。
これからは、旅先に小さな鏡を持っていって、気軽にいろんな景色を逆さにしていきたい。
個人の思い出のためなら、金閣寺とかも逆さにできるはず!
みなさんもお試しください。
もしかしたら、Photoshopとかを使ってデジタル処理すれば、簡単に線対称の写真が作れるのかもしれない。
しかし、鏡を使った写真は「物体から発せられた光の像を、センサーで結んでいる」という点では紛れもない「写真」であって、ズルというよりは工夫の範囲に収まるんじゃないだろうか。少なくとも、撮影するのは楽しかったです!