経済産業省は1月11日、フードチェーン3領域における食品ロス削減に関する取り組みとして、IoT技術を活用した食品ロス削減に関する実証実験を実施すると発表した。
同実験は、経済産業省委託事業「令和3年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した食品ロス削減の事例創出)」(委託事業者:日本総合研究所)を一部活用。産地および、スーパーマーケット、消費者の家庭における電子タグを活用した食品ロス削減に関する実験を1月12日から2月28日までの期間、東京都内で実施するものとなる。
なお、日本総合研究所、イトーヨーカ堂、今村商事、サトー、シルタス、凸版印刷、日立ソリューションズ西日本の7社が参画するSFC構想研究会の活動として行われる。フードチェーン全域を産地から小売店舗、小売店舗、小売店舗から消費者までの3つの領域に分け、それぞれ食品ロス削減に関する実証実験を実施するという。
産地から小売店舗における実証実験では、「青果物の持つ多様な情報による販促」と「リアルタイムの流通状況に応じた販促」をテーマに、青果物が持つさまざまな情報のうち、これまであまり利用されてこなかった情報を活用した新たな価値を消費者に提供する販促を店頭で実施。食品ロス削減への効果を検証する。
実施場所は、イトーヨーカドー曳舟店。実施期間は、1月12日から1月31日まで。対象商品は、アイコトマト、なめこ、ほうれん草。
具体的には、産地で生産者が入力した青果物の情報を販促用に加工し、店頭のデジタルサイネージや電子チラシアプリ(Shufoo!)を通じて発信。その情報を受け取った消費者が、店頭で商品を確認して購入できるようになる。青果物の流通状況は、生産出荷時にコンテナに取り付ける電子タグ(ZETag)を通じて、卸売業者、小売店舗での入出荷時に把握可能。電子タグを通じて、青果物の流通状況をリアルタイムで追跡しながら、消費者への販促を適切なタイミングで実施するという。
小売店舗における実証実験では、「店舗業務の効率化」と「効果的・効率的な売り切り促進」をテーマに、賞味・消費期限別に在庫を可視化し、電子棚札を活用したダイナミックプライシングを導入することによる、店舗における業務効率化と食品ロス削減への効果を検証する。
実施場所は、イトーヨーカドー曳舟店。実施期間は、1月12日から1月31日までと、2月9日から2月28日までの計40日間。対象商品は、デイリー・日配品から10SKU(同じ棚に陳列される同一SKU内で、賞味・消費期限のバラツキが発生することが多いものを選択)。
具体的には、商品の入荷時に、賞味・消費期限別のコードが印字されたラベルを発行して貼り付けるという。ラベルの発行データ(SKU×賞味・消費期限)を専用ツール「サトー・ダイナミック・プライシング・ソリューション(SDPS)」に取り込むことで、可視化された賞味・消費期限別の在庫状況を踏まえたダイナミックプライシングを実施する。
消費者は、電子棚札と商品に貼り付けられたラベルを確認し、商品を通常通りPOSレジで購入できる。
小売店舗から消費者における実証実験では、「購買データを活用した購買支援」「消費・廃棄データの取得による在庫管理」「データを活用した調理支援」「ゲーミフィケーションを活用した購買促進」「消費・廃棄データによるデマンド型の需給予測」という5つをテーマに行われる。
購買データや消費・廃棄データを「健康」という切り口で活用しながら、食品の購入・調理・保管を支援する消費者サービスとして提供し、家庭内での食品ロス削減への効果を検証するという。
実施場所は、イトーヨーカドー曳舟店および、参加者自宅。実施期間は、1月12日から1月31日までと、2月9日から2月28日までの計40日間。参加者は、20〜60代の男女(約100名)。
具体的には、参加者に食事管理アプリ(SIRU+)で買い物リストを作成してもらい、セルフスキャンアプリを利用しながら店頭で買い物を行ってもらう。なお、セルフスキャンアプリは、購入中のカート内の商品データや購買完了後の購買データを食事管理アプリと連携する。
また、食事管理アプリでは、セルフスキャンアプリによってスキャンされたカート内の商品データを基に、家庭の在庫状況および、栄養バランスを考慮した商品の購入を促すレコメンドも実施する。
加えて、購入した商品に対し、自宅でBluetoothタグを貼り付けてもらい、調理の際に残った商品を重量センサーで計測することで消費データを取得。イエナカデータクラウドを通じて、食事管理アプリ上の在庫情報を更新する(参加者自身で消費量・廃棄量を手入力することも可能)。
消費・廃棄データを取得・入力した際には、買い物に利用できるポイントが食事管理アプリ内で付与されるほか、健康的な食生活を楽しみながら行えるように、ゲーミフィケーションを取り入れ、購入した商品の栄養バランスに応じて見た目が変わるキャラクターを表示する。
さらに、栄養バランスや食品のおおよその賞味・消費期限との組み合わせによるレシピの表示にも在庫情報を活用し、家庭内の食品の使い切りを促すという。