ドキュメント精神科病院×新型コロナを見て — 松橋 倫久

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NHKのETV特集を視聴しました。僕自身も統合失調症の精神障がい者ですが、世の中にこれほどまでに人権を無視された人たちがいることに、大変驚きました。

NHK ETV特集 ドキュメント精神科病院×新型コロナ

東京都中から精神疾患のあるコロナ陽性患者を受け入れている都立松沢病院のコロナ専門病棟。次々とクラスターが発生し、精神疾患があるが故に一般の病院での受け入れが困難とされた人たちが運び込まれる。ここにカメラを据えると、病院にしか居場所のない患者、受け入れを拒む家族、ひっ迫する医療体制の中で葛藤する医療者たち、行き届かない行政の指導の実態が見えてきた。コロナがあぶり出した日本の精神医療、その実態の記録。(番組HPより

特集の中では二つの病院が紹介されていました。どちらも、精神障がい者をひどく扱っている病院でした。一つの病院では、相部屋に陽性患者と陰性の方を混在させていました。もう一つの病院はもっとひどくて、陽性の患者を一つの部屋に集めて、南京錠でロックして部屋に閉じ込めているという状況でした。また、二つ目の病院では、保健所が患者のいるスペース全体をレッドゾーン(汚染区域)に指定するといったことをしていて、陰性の方もたくさんいるのに、これは病院だけの問題ではないなと感じました。

Pixelci/iStock

僕自身も精神科病院へ入院したことはありますが、これほどひどい扱いを受けたことはありません。ですが、自分が被害にあっていないからといって、このまま見過ごすにはあまりにひどい状態だと思います。海外では精神科病床が少なくなっていて、精神障がい者も地域で暮らしていると聞いています。日本でもそういう方向へ持っていこうとしたとき、取材でも答えていましたが、一番の抵抗勢力は「社会」だということは、一度皆さんに考えて欲しいことです。

私自身ももちろん考えなくてはならないのですが、私自身は「社会」のあっち側にいる人間であるので、力がありません。ダメな精神病院でも、つぶれるとそこに入院していた患者が行く場所がなくなります。家族に煙たがられている患者もたくさんいます。精神障がい者の家族だけに責任や面倒を押しつけることで良いのか、今一度考えてみてもらいたいと思います。

精神障がい者の中には、確かに扱いが難しい人もいるのは事実です。同じ障害を持った私から見ても、こりゃたまらんといった感じの人もいます。ただ、精神科病院へ入院した経験から言って、入院患者の多数派はおとなしく、暴れたりする人はあまりいません。奇声を上げたり、騒いだりする人も、それほど多くありません。一般の人の持っている精神障がい者に対するイメージと実際は、少し異なるかもしれないと思っています。

まずは一人一人が考えることが大事だと思います。健常者の方は普通に生活していれば、精神障がい者のことを考える機会はないかもしれません。ですが、もしこの文章を読んで、そしてNHKの特集を見て考えてくれる人が、一人でも増えればうれしく思います。私自身も、この問題について真剣に考えたいと思っています。

松橋 倫久
1978年青森県生まれ。中央大学、東北大学を経て2002年青森県庁に奉職。在職中弘前大学大学院修了。統合失調症を患い2016年同庁退職。現在は求職活動の傍ら、自治体行政のあるべき姿を研究中。

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