動物と暮らしている方なら「動物の怪我は治りやすい」というのを聞いたことがあると思います。
私、獣医さんから何度か言われたので、動物って生命力が強いんだな〜と思っていました。でも、それって動物だから特別早いというより、人間が遅いのかもしれません。
琉球大学国際地域創造学部の松本晶子教授率いる研究チームが発表した研究成果によると、私たち人間の傷は、他の霊長類に比べて治癒までに約3倍もかかるらしいのです。
ヒヒとの比較で見えてきた驚きの事実
松本教授は、ケニアで野生のヒヒを観察している中で、興味深い発見をしました。ヒヒたちは喧嘩で深い傷を負っても、驚くほどの速さで回復していたのです。この気づきから、松本教授と研究チームは「人間の治癒速度は他の哺乳類と比べてどうなのか?」というテーマで調査を開始しました。
比較対象は、チンパンジー、アヌビスヒヒ、ベルベットモンキー、サイクスモンキーの4種類の霊長類に加え、ラットやマウスといった齧歯類も含まれました。研究の結果、人間の傷は1日に0.25mmしか治らないのに対し、他の霊長類は0.61mmも回復することが判明したんです。
まさかこんなにも差が出るなんて。
なぜ人間だけが遅いのか?
研究チームはこの原因について、進化の過程に秘密があると考えています。人間が体毛を失い、汗腺を発達させました。この皮膚の違いが治癒速度にも影響しているのではないかと推測されます。
この研究を取り上げたIFLSのホリー・ラージ記者は、社会的な支援も関係している可能性も示唆しています。たとえば、180万年前のホモ・エレクトスの頭蓋骨には歯が全て抜け落ちたものが見つかっていますが、栄養を得て生き延びていました。これは仲間が食事を準備していた証拠であり、社会的な支援が傷の治癒の遅さをカバーしていた可能性がある、と伝えています。
人間は進化の過程でツルツルな肌と発達した汗腺を手に入れた代わりに、治癒速度が遅くなるというトレードオフを選んだのかもしれません。
Source: IFLSIENCE