ANAによる アドテク 透明化プロジェクト、PwCとのパートナーシップを終了も完成を予定

DIGIDAY

2021年12月、全米広告主協会(The Association of National Advertisers、以下ANA)は、プログラマティック広告のメディアバイイング市場にさらなる透明性をもたらすことを目指し、画期的な研究の主導パートナーとしてプライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers、以下PwC)と提携した。

しかし18カ月後、ANAはPwCの仕事成果に不満を持ち、関係を終了。すでにANAは代替パートナーを確保していると、DIGIDAYの取材に応じた情報提供者たちは述べた。両者が最初に合意した契約条件については、認定(アクレディテーション)問題などを中心に意見の不一致があるため、まだ話し合いが必要だとされている。

この遅延があるものの、ANAはプロジェクトを完成させることが予定されている。カンヌ・ライオン国際クリエイティビティフェスティバル(Cannes Lions Festival of Creativity)の前に初期の調査結果を発表、そして包括的な研究は「夏の後半」に発表する予定だ。

「PwCのレポート部分はすでに完成している」と、ANAの広報担当者は電子メールで記し、「ANAはこの企画の次のステップを主導することを楽しみにしている」と述べている。なお、PwCの代表者はDIGIDAYからの複数のコメントリクエストに応えていない。

初期の摩擦から生まれた不満

PwCが昨年20社の競合他社を退けて勝ち取った、ANAの透明性に関するプロジェクトの契約には、調査会社のクロール(Kroll)や、4A’s、ANA、IABが共同で設立した情報共有・分析組織のタグ(TAG)、そして金融系ITサービスを提供するフィデューシア(Fiducia)もそのRFP(提案依頼)に参加し、競っていた。

研究の初期の設計者たちは、イギリスにおけるANAと言える英国広告主協会(Incorporated Society of British Advertisers、以下ISBA)と、PwCのロンドン支社による共同調査結果を再現することを期待されていた。ISBAとPwCによるこの2016年の研究では、全広告主のプログラマティック支出のうちパブリッシャーの収益となっているのは半分であることが判明し、15%の「未知の差分」が指摘された。

一方で、大西洋を挟んだアメリカでは、マーケターたちがプログラマティックメディアバイイングに対して今年だけで1230億ドル(約17兆5450億円)以上、そして来年には1420億ドル(約20兆2577億円)に増える投資を行うことが、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によって予測されている。そうしたなか、PwCの監査人たちは米国での「アドテク税(アドテクを通過することで減る収益)」の評価に苦労した。

2022年半ば、複数の情報提供者がDIGIDAYに対して、「ディアジオ(Diageo)、P&G(Procter & Gamble)、ユニリーバ(Unilever)などの著名広告主が本調査への参加を控え、『既得権益』による遅延が生じた」と述べた。

調査が抱える複雑さ

たとえば、Googleは買い手側と売り手側のアドテクツールのどちらも大規模に提供しているため、豊富な情報源になり得た。監査人たちはGoogleにアプローチし、調査に参加するよう要請したが、参加を全面的に拒否することはなかったものの、提示された条件には細かな機微が加えられていた。プログラマティックメディア取引の複雑さを解明しようとする誰にとっても、それは障壁となることを示していた。

Googleは監査人に対し、自社のDSPである「DV360」のデータへのアクセスを(クライアントの許可があれば)許可したが、DIGIDAYの情報提供者によると、売り手側からの洞察をGoogleから得ることはそれよりも難しかったようだ。

オンライン広告の大御所であるGoogleは監査人に対し、「売り手側のデータに我々はアクセスできない」と告げた。情報はパブリッシャーが所有しているからだ、とDIGIDAYの取材に応じた情報提供者は言う。これはGoogleのデータ保存方法では、プラットフォーム全体にわたる洞察を外部者に提供する能力を持っていないことを示唆している。

広告主のフラストレーション

自社でデータを提供するのではなく、リクエストされた情報を個々のパブリッシャーから収集することをGoogleは監査人に対して推奨したと言う。業界最大の独立したDSPであるザ・トレード・デスク(The Trade Desk)が参加を辞退するという流れもあるなか、Googleによるこの対応は大手広告主の参加候補者のフラストレーションとなった。

また、別の情報提供者によると、「米国での監査人はタグとフィデューシアによる分散型台帳技術を使用することをANAに提案したところ、報告においていくつか差異が生じ、このことも広告主の熱意をそそるものではなかった」と述べた。

これらの困難にもかかわらず、マーケターたちはアドテクへの投資を大幅に抑制する可能性は低いだろう。さまざまな会社におけるメディアバイイングチームたちは独自の「サプライパス最適化努力」を続けており、ANAが今年後半に提出するだろう「透明性に関する推奨」にも勢いを加えそうだ。

[原文: The ANA parts ways with PwC in its ongoing ad tech transparency project

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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