欺瞞的で、利益追求に血道を上げ、広告の裁定取引で儲けているのは誰か。答えはMFA(made-for-advertising)サイトです。これら狡猾なサイトはオンライン広告の一等地を装い、騙されやすい広告主を策略の網に誘い込みます。日を追うごとに、だましの手口は洗練され、うま味のある詐欺行為が延々と続けられ、その勢いは衰える気配がまったくないのです。
ひどい話です。どれくらいひどいのか、なぜこんな悲惨な状況に陥っているのか、そしてそれに対して何ができるのか。それを知るためにも、ぜひこの先をお読みください。
――そもそも、MFAサイトとは?
そびえ立つようなバナー広告が乱立し、戦略的に配置された動画広告プレイヤーがいくつも並ぶウェブページを思い浮かべてください。そこではブラウジング体験が、不快な雑音を立てる儲け主義のカオスへと姿を変えます。
Advertisement
見識のある人の目には、この雑然とした広告と怪しげなコンテンツの融合は、典型的なデジタルの悪夢と映るでしょう。しかしその舞台裏では、広告購入を促進する機構そのものが、こうしたサイトを千載一遇のチャンスと見なしているのです。このようなサイトは人の目につく可能性が高く、ほかの多くの広告よりも安価です。そしてもちろん、こうした広告は間違いなく購入されているのです。
――では、これもまたプログラマティック広告の悪用の一形態なのですか?
そうです。それがこの問題の核心です。すべては、「完璧な品質の安価なメディア」という実現不可能な願望から始まります。いや、訂正しましょう。そういうメディアは確かに存在しますが、それはマーケターが営業上の真の成果よりも、ビューアブルインプレッション単価のような表面的な成功を優先する場合に限られます。
驚くことに、相当数のマーケターがそうする傾向にあり、こうした需要こそがMFAの存在を許すのです。
――これは不正行為ではないでしょうか?
場合によりけりです。業界標準に照らせば、MFAは無効なトラフィック(IVT)の基準を満たしていません。MFAサイトを通じて、マーケターは本物のコンテンツに接触する本物のユーザーにリーチできるが、その接触は長続きしないのです。これは往々にして、トラフィックが有機的に獲得されたものではなく、コンテンツレコメンデーションプラットフォームを通じて獲得された場合に発生します。
結果として、MFAは合法的なトラフィックと潜在的に不正なトラフィックの境界線上で危険な綱渡りをやってのけ、マーケターたちは消費者の行動にほとんど何の影響も与えない広告に投資させられることになるわけです。
英国を拠点とするパブリッシャーアライアンスのオゾン(Ozone)でCEOを務めるデイモン・リーヴ氏は、「MFAサイトは運用型広告のシステムを悪用する典型例だ」と述べています。「広告主もパブリッシャーもMFAサイトを好まないが、それでも広告主の予算はMFAサイトに流れる。広告主が予算執行で重視するアドテク指標に沿ってパフォーマンスを発揮するように設計されているからだ」。
――この問題の規模はどの程度なのでしょうか?
MFAの広がりについては、誰も確かなことは知らないのです(結局のところ、これはプログラマティックです)。とはいえ、MFAに関する限られた情報からは、憂慮すべき事態が浮かび上がります。
たとえば、ANA(全米広告主協会)が運用型広告の予算について調べたところ、監査の対象となった350億インプレッションのうち、MFAが21%を占めていました。これは21社の広告主が支出した1億2300万ドル(約178億円)の予算の15%に相当します。ただし、問題の規模は、この程度の数字では収まらない可能性が高いのです。
たとえば、ANAが公表した調査結果は、リアルタイム入札で広告の買いつけが行われる運用型広告のオープンマーケットプレイスのうち、ごくわずかを占めるプレミアム在庫に関するものだけです。残念ながら、MFAはこうしたオークションの枠内にとどまらず、実はPMPにも組み込まれているのです。
――ちょっと待ってください、PMPは本来そのような怪しい在庫とは無縁なはずなのでは?
PMPは理屈の上では最良の在庫で構成されているはずですが、現実は必ずしもそうではないのです。プログラマティック広告のコンサルティングを提供するジャウンスメディア(Jounce Media)も、はっきりそうと指摘しています。
同社は過去90日間に複数の売り手が参加する136件のPMP(いわゆるオークションパッケージ)を運営しました。驚くべきことに、このうち106件のPMPにはMFAの在庫が含まれていたのです。そして憂慮すべきことに、これらPMPの4分の1近く(全部で23件)では、予算の25%以上をMFA在庫に割り当てていました。これらのマーケットプレイスは、プレミアムどころか、プログラマティックのおとり商法とさえ言えます。疑うことを知らない無防備な広告主をおびき寄せ、劣悪な商品を売りつけたのです。
――広告主は憂慮しているのでしょうか?
見解はさまざまでしょうが、先週ANAの調査結果が公になるや、この問題をめぐる議論は白熱しています。広告担当幹部は一貫して、低コストで価値の低い在庫よりも、高品質のメディアを優先すべきと力説します。一方、マーケターはMFAの繁盛を許すアドテクベンダーに不満を表明しています。さらに、コンサルタントに意見を求めれば、一部の信頼できる売り手からのみ買いつけるべきと助言される。
問題は、口先だけなら何とでも言えるということだ。有言実行には、ときに思い切った行動が要求される。たとえば、より意味のあるKPIを導入し、具体的な業績指標に即してキャンペーンの成功を効果的に測定する必要もあるだろう。このような方向転換は、MFAの存続を可能とする基盤そのものを弱体化させうるが、その反面、現在使用している各種の指標が上辺をなぞるだけの代物だと認めることにもなります。
オゾンのリーヴ氏はこう述べます。「MFAがシステムを悪用するための手段にすぎないことを認め、これに代わるもの、つまり現実的で持続可能な営業成績につながる実績のあるチャネルに投資を行うことは、ブランドにとってめざすべきひとつの目標となるだろう」。
――マーケターがMFAの問題に真正面から取り組む可能性は?
過去のパターンから判断するに、その可能性は高くありません。これまで幾度もそのチャンスがあったにもかかわらず、マーケターたちはMFAのような問題の拡散を抑えることにことごとく失敗してきました。実際、すべての兆候は、今後もMFAが増加しつづけることを示しています。かつてはMFA在庫に否定的だったアドテクベンダーたちも、いまではこの種のインベントリーの活用に前向きで、こうした欺瞞的なインプレッションに大量の販売機会をもたらしています。パブリッシャーたちも機を見るに敏とばかりに、MFAのスペシャリストを雇い入れて広告収入の最大化に注力しはじめました。さらに、MFAサイトは著しく低いコストでトラフィックを獲得する手口を磨いており、問題は肥大化する一方です。
「これはブランドセーフティとブランドスータビリティの違いを示す好例だ」と、アドフォンテスメディア(Ad Fontes Media)のルー・パスカリス最高戦略責任者は、先週カンヌで開かれたパネルディスカッションで述べていました。そして、「MFAを構成する要素や要件について、業界が一定のコンセンサスに到達できれば、問題を軽減するのにいくらかの助けになるだろう」と示唆しています。
「MRC(Media Ratings Council)は、一般論として、こうしたMAFサイトはブランドセーフ(安全)だと言っている。しかし、悪辣あるいは極悪非道ではないにせよ、ユーザーエクスペリエンスは劣悪であり、ブランドスータビリティ(適合性)の面では問題がある」と、パスカリス氏は語っています。
[原文:WTF are made-for-advertising sites (MFAs)]
Seb Joseph(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)