昨年12月、京阪バスが中国・比亜迪(BYD)の電気自動車(EV)バスを採用し運行を開始した。同年4月の佐川急便の「中国製EV」採用報道は、正確には日本のEVベンチャー企業が企画・設計し中国メーカーに生産委託したもの(ファブレス生産)だったが、今回は中国製EVであり、BYDジャパンは日本で50台の販売実績を上げている。
中国では2020年にコロナ禍の中でも136.7万台のEVが生産されたが、21年には300万台を突破したとみられる。また、中国国内での自動車販売台数のうち11.6%がEVであった(21年1~9月)。
この急成長に政府補助金(1台当たり1.3~1.8万元=23~32万円)が大きな役割を果たしたことは事実で、23年の補助金撤廃後にこの勢いが続くかは断言できないが、EV市場はすでに一定規模に達しており、トップメーカー3社(BYD、上汽通用五菱汽車、テスラ中国)の生産台数(21年1~9月)はそれぞれ28万台、28万台、21万台で、コスト的に一般自動車と競争可能な水準である。
上汽通用五菱汽車製の小型EVは廉価で知られる (VCG/GETTYIMAGES)
振り返れば、18年にはEVなど「新エネルギー車」の生産への外国企業投資規制の撤廃で外資100%出資が可能となり、19年にはEV用蓄電池に関する規制も撤廃された。中国政府は、EV産業は自立可能になったと判断しているとみられる。加えて、21年上半期のEVの輸出は2万台、タイのEV市場でシェア90%を取るなど国際的競争力も備えつつある。中国のEV産業は地力をつけている。
中国政府は、25年までに新車販売の20%前後をEVにするとしてきたが、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でも二酸化炭素(CO2)排出削減目標(60年までに炭素排出量ゼロ)を示しており、追い風となる。同会議に合わせて、BYDは40年までの化石燃料車生産停止を、長城汽車は25年までに年間販売台数の8割、吉利汽車は同3割を新エネ車にする目標を打ち出した。
日本は中国のEV戦略、EVメーカーにどう対応すべきだろうか。京阪バスの例では国内製1台7000万円に対しBYD製は1950万円と報じられ、価格(生産コスト)では歯が立たない。ドイツのようにEV車購入に補助金を出すとしても限界がある。地道にコスト削減、使い勝手の良さを追求するしかないといえる。トヨタなど巨大メーカーはEV生産台数目標を明示したが、生産目標を達成するだけでCO2排出削減が果たされるものでもないとの見方もある。
複雑な連立方程式をどう解くのか、世界はまだ正解を見出していない。