人間の脳を模した学習装置「人工シナプス」は本物より1万倍速い

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神経と神経の間の情報伝達を担う「シナプス」を模した人工シナプスは、人間の神経細胞の1000分の1の大きさであるにもかかわらず、本物よりはるかに速い1万倍の速度で機能することが明らかになりました。

Nanosecond protonic programmable resistors for analog deep learning | Science
https://doi.org/10.1126/science.abp8064


マサチューセッツ工科大学のMurat Onen氏らは、プログラマブル抵抗器と呼ばれる人工シナプスを用いて、デバイス間のイオン輸送と電荷移動反応速度を解析する実験を行いました。プログラマブル抵抗器は電池と同じような電解質を用いて電子を遮断し、陽子を通過させるもの。これを用いて「ニューロン」と呼ばれる電気部品にデータが与えられ、画像を認識するなどの問題を解決するために働きます。繰り返し移動する陽子からさまざまな行動パターンが得られ、調整を重ねることで、どのパターンが最も良い解決策となるのかを導き出します。これは人間の脳を模した学習プロセスです。

Onen氏らが開発したプログラマブル抵抗器は従来の2端子から3端子に変化しており、遅延を大幅に短縮することに成功したそうです。


通常、神経伝達の際の電圧が1.23ボルトを超えると体内の水が水素と酸素に分解されてしまうため、動物の思考速度はミリ秒程度に制限されているとのこと。しかし、この抵抗器は制限がないため速度を突き詰めることができ、故障することなく数百万回程度計算を実行できるそうです。さらに大きさは神経細胞のおよそ1000分の1、10ナノメートル単位までスケールダウンすることができたとのこと。

Onen氏は「この新しいデバイスは、ディープニューラルネットワークと呼ばれる強力な人工知能システムの学習速度を向上させるのに役立つかもしれません」と述べました。

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