今日、ゲーミングキーボードとしてさまざまなメカニカルキーボードが市場に登場しているが、長い目でみるとここ数年で一気に増えてきたカテゴリがロープロファイル仕様のキースイッチを搭載した製品だ。
ロープロファイルとはその名の通り通常のメカニカルキーボードで使用されているキースイッチと比べて背が低くなっていることが特徴となる。
今回はロープロファイル仕様のキースイッチと、実際に搭載したメカニカルキーボードの製品を紹介したいと思う。
ロープロファイルだと何が違うのか
通常のキースイッチとの大まかな違いは以下の通りとなる。
ロープロファイル | 通常 | |
---|---|---|
キーストローク | 約3mm | 約4mm |
アクチュエーションポイント | 約1.5mm | 約2mm |
キーストロークは底打ちまでの深さ。アクチュエーションポイントは作動点、つまりキーが入力されたとPC上で判定されるポイントとなる。
ゲーミング用途を考慮すると、ロープロファイルの方がアクチュエーションポイントまでの距離が短いため素早くキーを押すことができることが期待できる。また、キーストロークが短いためキーを押して戻る動作までの距離が短くなることが期待できる。
期待できると書いたのはあくまでも仕様上の話で、最終的には使う人の向き不向きに左右される程度と思って良いだろう。
ロープロファイル仕様でも通常のメカニカルキーボードと同じく「茶軸」、「赤軸」、「青軸」などの違いがある。厄介なのは、この○○軸という表現はキーボードメーカーもしくはスイッチメーカー独自の分類となるため、大まかなフィーリングの判断には役に立つが最終的な味付けは実機を触らないと最終的には判断できない。
一例としてKailh製のロープロファイルスイッチの仕様書より、茶軸、赤軸、白軸の3つの特性をグラフで確認すると以下のように分かれている。
仕様書にある「pressure point」の位置を超えるとカチッとした感触が発生、「operating point」へ到達して文字が入力される。赤軸の場合はカチッとした感触がなく直線的に変化するため「pressure point」は存在しない。「reset point」はキーが入力前の状態に戻る距離となる。
軸 | 分類 | 特徴 |
---|---|---|
赤軸 | リニア | 力がストロークに応じて直線的(リニア)に変化 |
茶軸 | タクタイル | 軽いキータッチとクリック感 |
青軸・白軸 | クリッキー | 軽いキータッチとクリック感およびクリック音 |
スピード軸(銀軸) | スピード | リニアでアクチュエーションポイントが短い |
キースイッチメーカー
キースイッチは中国ローカルメーカーを含めると数多く存在しているが、今回は紹介する商品に関係のあるキースイッチメーカー2社を紹介する。
Cherry / Cherry AG
1983年にCherry MXスイッチが開発されてから長年愛されているドイツのキースイッチメーカー。メカニカルキーボード向けスイッチのデファクトスタンダードと呼べる位置づけで一般的な○○軸もCherryの製品がベースとなることも多い。
2008年にZFフリードリヒスハーフェンに買収されたが、2016年に再び独立している。
Kailh(Kaihua) / 東莞市凱電子有限公司
Cherry MXスイッチ互換の製品を製造しシェアを伸ばしてきた中国広東省の東莞(深センの北西)にあるメーカー。過去Razer製キーボード向けのスイッチも作っていたが、現在はLogicool向けのスイッチも手がけている。
キーボード向けスイッチに注目されがちだが、マウス用のスイッチでもKailh製のものが多く使われており、PCユーザーには意外となじみのあるメーカーと言える。
ロジクール G ゲーミングキーボード G913
ロジクールのハイエンドゲーミングキーボード。遅延の少ないLIGHTSPEEDワイヤレスとBluetooth接続の両方に対応している。
スイッチはロジクール独自のロープロファイルGLスイッチを採用しているが、Kailh Choc V1スイッチをベースにしていると考えられる。
リニア、タクタイル、クリッキーと3バージョン存在しているため「選べる」モデルとも言えるが、間違えて買ってしまう確率も高いため、購入前に正しいか何度もチェックした方が良いだろう。
あくまでもゲーミング向けではあるが、キー左端に配置されたプログラマブルGキーによりマクロを呼び出すことができるため、ゲームはもちろんオフィスアプリや画像処理を多用する読者にもおすすめだ。
テンキーレス版も発売されているが、独立したGキーはないため注意したい。
ロジクール G ゲーミングキーボード G813
G913の有線版がG813だ。こちらも同様にリニア、タクタイル、クリッキーと3バージョン存在している。
接続方法が有線USB接続となるが、G813だけの特徴としてキーボード裏にUSBポートが設けられている。こちらは内部でUSBハブ使い分岐をしているわけではなく、元の独立したUSBケーブルをそのまま延長しているだけとなり、結果2本のUSBコネクタが存在する仕様となっている。
ロジクール KX850FL MX MECHANICA
ゲーミング仕様となるG913、G813とは違い、ビジネスユーザーやクリエイター向けとなるMX MASTERシリーズに位置する製品となる。バックライトを搭載しているため暗い場所での作業も安心できる。
バリエーションはG913、G813と同じくリニア、タクタイル、クリッキーと3バージョン存在している。
キースイッチに関してはロープロファイルということしか情報がないが、Kailh Choc V2スイッチそのものかベースとしたモデルとなっている。
Kailh Choc V2はCherry MX向けキーキャップと互換のある形状だが、キーキャップ側がロープロファイルを想定した設計になっていないと干渉してしまう点については注意が必要だ。
テンキーレス版となるロジクール KX850CL MX MECHANICAL MINIも販売しているが、筆者としてはEnterキーの右側にキーを配置するキーボードは買えない呪いにかかっているため購入検討には入らなかった。
FILCO Majestouch Stingray
長年Cherry MXスイッチを採用したメカニカルキーボードを手がけてきたダイヤテックが販売するロープロファイルメカニカルキーボード。
本シリーズはCherry MX Low Profile Switchを採用している。バリエーションは赤軸、スピード軸の2種となる。
見た目は通常のCherry MXスイッチを採用したモデルと変わらないし、光ることもない。目新しさこそないものの、むしろそれが良いと考える読者には最適だろう。
MSI VIGOR GK50 LOW PROFILE TKL JP
マザーボードやビデオカードで有名なMSIから発売されているゲーミングキーボード。有線USB接続タイプとなる。
テンキーレス仕様となっており、フルサイズの109Aキーボードからテンキー部分を取り除いた80%サイズと呼ばれる分類に属する。Kailh Choc V1スイッチが使われているが、ラインナップはクリッキーのみとなる。
実勢価格で1万円を切っておりコストパフォーマンスは高い。
コンパクトさはもちろんのこと、ケーブルの脱着も可能なためキーボードを持ち運びたい読者にもおすすめできるだろう。
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