終電を逃しても自力でなんとかしたい
都心にいて終電を逃してしまったとき、お金をあまり持っていない学生などが取れる方法は、家まで歩いて帰ることだ。
でもそれは家が都心に近い場合にしかつかえない。たとえば終点ちかくの人にはとてもムリだろう。
なんとか終点までタダで帰る方法はないか。
しかも始発より早く。
自転車でためしてみました。
※2006年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
京王線で始発と勝負
今回は、東京の京王線でためしてみた。
新宿で終電を逃したあと、自転車で終点の高尾山口駅に向かい、やって来る始発電車に追い抜かれずにゴールしたい。
これができれば、どの駅に住んでいても終電は逃し放題ということになるはずだ。
新宿駅へ
まずは新宿駅の京王線ホームに向かう。
今日の最終電車は0時18分高幡不動行きらしい。いつもならあわててかけこむところだけど、今日は余裕たっぷりに終電を見送ろう。
予定よりやや遅れて、0時22分に終電が発車した。急いで、地上にとめておいた自転車に向かう。
まだ見ぬ始発が来るまえに、終点へと向かうのだ。
いよいよ出発
0時33分、新宿を出発。
ここからはもくもくと自転車をこぐのみだ。終点までの距離はおよそ40km。さしずめマラソンのランナーのようなものかもしれない。ランナーよりずっとラクだけど。
新宿駅の周辺にはまだ残っている人がいる。
彼らもやはりわざと終電を逃したクチだろうか。ともにがんばろう、とひそかにエールを送る。
甲州街道ぞいに、0時30分だというのにまだ営業しているくだもの屋さんがあった。
そういえば途中の食べ物のことを考えていなかったので、食べやすさを考えてバナナをもらっていくことにした。
1時4分。明大前駅。
明大前駅の飲み屋街に、とんぼ屋という広島風のお好み焼き屋さんがある。おいしいので同僚とよく行っていた。今日も見てみたけど、残念ながら閉まってるみたいだった。
ついでにふみきりを渡ってみた。
終電後のふみきりはたいていあいている。たまに貨物列車とかが来るかもしれないので、ずっといるのはもちろん危ないけど。
1時15分。下高井戸駅ちかく。
京王線と並行して走る甲州街道には、ところどころに起点からの距離をしめした標が立っている。
見にくいけれど、この写真では「日本橋から14km」とある。考えてみれば昔は甲州街道こそが人々の輸送路だったに違いない。当時の人は、その道のとなりに鉄の道ができて人々を運ぶようになるなどと想像しただろうか。
出発から1時間たった。
午前1時30分。新宿駅で出発してからちょうど1時間になった。すすみ具合はどうだろう。
現在地は東京都調布市仙川町3丁目。
京王線の仙川駅にちかい。仙川は新宿駅から13番目の駅で、終点の高尾山口は39番目。おおざっぱにいうと3分の1の行程を来たことになる。
新宿に近いほど駅が密集しているので単純に考えることはできないけど、1時間で33%というのはなかなかいいペースだ。始発はたぶん夜明け後に来るはずだから、5時としてあと3時間半。このペースで行けば大丈夫そうだ。
1時37分。つつじヶ丘駅(14番め/39駅中)ふきん。
滝坂という結構な坂を下る。
下り坂は自転車にとっては天国だけど、いっぽうで次にくる登りを予感させるため、手ばなしでは喜べない。京王線は多摩川上流にむかってゆるやかに登っているはずだから、下ればそのぶん上がらなきゃならない。
京王線は確かに上っているはずだけど、電車に乗っていて気づくのは相当むずかしそうだと思った。
午前1時55分。
電気通信大学前では学生たちが話をしていた。ふつうに勉強の話をしているのかもしれないけど、うす暗がりのこの雰囲気だと何か違う話をしているんじゃないかと思ってしまう。
午前3時。多摩川をこえる。
出発から2時間半。多摩川をわたる関戸橋にやってきた。
地理にうといせいで、多摩川のむこうは神奈川県だと思ってしまうくせがある。向こう岸は東京都稲城市。聖蹟桜ヶ丘駅方面だ。
すすみぐあいはどうだろう
関戸橋は京王線聖跡桜ヶ丘駅(27番め/39駅中)にちかい。残り11駅で夜明けまで2時間。このままのペースなら間に合うはずだ。
まってろ、始発め。
ここはどこなのか
京王線南平駅(30番め/39駅中)ふきん。
そろそろ地理についての常識のなさが発揮されてきて、案内板の行き先に書かれた地名が本当に東京のものなのか自信がなくなってくる。道沿いの銀行には山梨の名があり、まさか山梨県に入ったわけではないだろうけど、などと心配してしまう。
しばらく行くと「東京薬科大学」という看板を発見。
おもわず安堵。
夜が明けてきた
午前4時。北野駅(33番め/39駅中)ちかく。
すでに空が本格的に明るい。ニワトリはコケコケ鳴いているし、新聞配達屋さんも明かりがついている。そろそろ時間がなくなってきた。
なんとか到着
北野駅以降、高尾山に向かう道はずっと上り坂になっていて、ペースはがた落ちになってしまっていた。
体じゅうが、顔から手から汗まみれになっている。そろそろ体が溶けはじめそうになったとき、ようやく終点の高尾山口駅がみえてきた。
時刻は午前5時ちょうどだった。
ぎりぎり30分ぐらい勝った
高尾山口から、電車で帰るとちゅう、3つめのめじろ台駅の手前で下りの電車とすれ違った。ちょうど5時半くらい。なので、始発が動き出す前に到着する、という意味ではぎりぎり30分くらいの余裕しかなかったということになる。
ちなみに、ぼくは自転車で40kmを4時間半で走ってきたことになるけど、これはマラソンの選手よりもずっとおそい。いっぽうで、自転車の選手は時速60kmくらいで走るので、高尾山までもし信号がなければ40分でついてしまう。こういう人たちはもうほんとに電車なんか乗らなくていいと思う。