突然だが、チョコレートソフトクリームってウンチみたい! なんて思ったことはないだろうか?
筆者はある。もちろんある。前々から思っていたけど、チョコレートソフトをクルクルと巻くのってビジュアル的に反則でしょ。そんなこと言ったら偉い人に怒られそうだから内緒だけど……。
なんて本来であればタブー視されがちなチョコレートソフト=ウンチ説、堂々と真っ正面から主張しているお店を発見したので訪ねてみたぞ!
・避暑地 清里高原の名物ソフト
山梨県北杜(ほくと)市にある避暑地、清里高原にある清里レストラン&コテージ睦(BOKU)。パッと見は古風で落ち着いた雰囲気の店舗なのだが……
なにやらウンチの気配を、
感じさせて……いや、臭わせてくるのだ。
扉に貼られているメニューを見てみたところ、
あった! 「開うん ク・ソフト」税込550円なり!!
「そのままでは見せられないよ!」ということだろうか。ク・ソフトの写真だけが色鉛筆画のようなフィルターをかけられていた。
・いよいよウンチなソフトクリームとご対面
平日オープン直後の店内には筆者以外の客はなく、寡黙な雰囲気のご主人にしょっぱなから「ク・ソフトひとつ」と注文するのは勇気が必要であった。
ドキドキしながら作業を見守ること約30秒、こちらに向かってきたご主人から手渡されたのは……
…………!
ウ、ウンチだぁぁぁーーーーーーー!!!!
特注で作っているという容器はどう見ても和式便器だし、黒糖かりんとうがぶっ刺さっているのなんて確信犯としか言いようがない!
ご丁寧にも木製スプーンの先にはハエのイラストのシールまで貼られている。芸が細かすぎるんだよ。
手に持つとズッシリと重いが、無理はない。なんていったってサイズ感はこんな感じ。
一般的なソフトクリームの1.5倍ほどの量があるだろう。近隣のお店に比べると550円という値段は高めの設定なのだが、この量とクオリティであれば余裕で納得である。
さっそく一口いただいてみる。
美しいフォルムを崩すのは気が引けるが、夏と言うこともあって写真を撮っている間にどんどん溶けていくのだ。ドロドロのウンチなんて最悪だからな。サクッと食べ切ってしまおう……って、
!!!!
予想外に美味しいな!?!?
見た目に惹かれて購入したのだが、ただのネタ商品だと思ったらバチが当たりそうだ。外見にまったく釣り合わないほど(と言ったら失礼かもしれないが)本当にビックリするぐらいに美味しい!
まるで生チョコを食べているようなコク深さと濃厚さ。舌触りも滑らかだし、カカオ感もミルク感もたっぷりと味わえる。
もしかしたら筆者がこれまで食べたチョコソフトの中でナンバーワンかもしれない。しっかりと味にこだわって作られた本格ソフトなのだ。
ただし食べている途中の絵面はとても汚い。
持ち手に入っていたコーンフレークの軽い食感は、濃厚なソフトクリームの後半戦においてかなり良い仕事をしてくれた。……が、そんなことどうでも良くなるぐらいに画が汚い。
・実は歴史あるク・ソフト
一体どうしてこんなに禍々(まがまが)しい見た目のソフトクリームを生み出してしまったのか。オーナー夫婦の奥さんにお話を聞いてみたところ、驚きの回答が返ってきた。
オーナー「実はク・ソフトはうちが考案したのではなく、数年前に別のお店から引き継いだ商品なんです」
な、なにぃ~~!? 言われてみれば、表に出ていた看板に書かれていた店名は「ぺるーしぇ」。睦(ぼく)という現在の店名と違うことに疑問は感じていた。
オーナー「20年ほど前に誕生したク・ソフトは当時から様々なメディアに取り上げられて人気だったんです。残念ながらそのお店が閉店することになった際、店長さんが「これだけファンがいるのだから」ということで引継ぎ先を探していて、うちにも話がまわってきたんです」
元々ク・ソフトを提供していた店舗は睦のすぐ裏で廃墟となっていた。
オーナー「最初はお断りしようかと思っていました。あまり上品とは言えない商品ですし、なによりうちには『生チーズソフト』というイチオシのソフトクリームが既にあったので。だけどこれだけ人気な商品が消えてしまうのはもったいないし、皆さんが笑ってくれれば良いかなって思ったんです」
こちらが睦イチオシの生チーズソフトクリーム(税込450円)。
まったりとした口触りと濃厚なチーズ感、優しい甘みがベストマッチしている。レアチーズケーキやチーズ蒸しパンが好きな筆者にはクリティカルヒット。ク・ソフトだけ食べて帰る人はもったいないぞ!
オーナー「今ではク・ソフトを引き継いで良かったと思っています。昔食べたっていうお客様が来られるとき、うちでしたら以前のお店のすぐ隣にあるからわかりやすいでしょう? それにいざ引き継いでみたら楽しくなっちゃったんですよね」
その言葉通り、店内にはポップなウンチグッズがたくさん並べられていた。
オーナー「ク・ソフトも生チーズソフトもどちらもすごく味にこだわって作りました。清里高原にはうち以外にもソフトクリームを出している店がたくさんあって、どこも違う味なんです。是非コンプリート目指して食べに来ていただきたいです」
てっきり悪ノリで作られた商品だとばかり思っていたのだが、意外な人間ドラマと味へのこだわりが詰まっていた開うん ク・ソフト。
パッと見はふざけていても、実は本気で作っているからこそ長年ヒットし続けているのかもしれない。
参考リンク:清里レストラン&コテージ睦
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.