当サイトでは以前も紹介させてもらい、今も変わらず愛用中の椅子内蔵型リュック、正式名称「シュパッと1秒!どこでも座れるリュック」。
あまりにも好きすぎるので、発売元である「サンコー株式会社」におじゃまし、開発者さんたちに直接お話を聞いてきてしまいました!
「椅子内蔵型リュック」が好きすぎて
生活がちょっと便利で楽しくなるアイデア商品を多数発売し、今やその分野では独走状態の「サンコーレアモノショップ」。インターネットをしていると、その名前を聞く機会は多いですよね。
かくいう僕もそちらの商品「シュパッと1秒!どこでも座れるリュック」の愛用者であり、以前当サイトで、こんな記事を書かせてもらいました。
ざっくりどんなものかを説明すると、
一見なんの変哲もないスタイリッシュなバックパックでありながら、
という、まさに「椅子内蔵型リュック」というわけなんです。
僕には「チェアリング」という趣味もあり、本気でこの商品を愛用しているんですが、使えば使うほど、非の打ち所のない完成度に感心してしまうんですよね。
一体どんな人がどんな経緯で生み出した商品なんだろう? そんなことを考えていたら、ある日、もはや衝動を抑えることができなくなってしまい、気づけばサンコーさんに取材を申し込んでいました。すると速攻で「ぜひどうぞ!」とのお返事が!
というわけで今日は、「2ヶ月待ちの人気商品であるサンコーの食洗機を買って生活が変わった」という経験を持ち、同じく興奮気味の担当編集古賀さんとともに、サンコー株式会社にやってきました。
今回、お話を聞かせてくださるのはこちらのおふたり。
どんなお話が聞けるのかな〜。わくわく。今日はよろしくお願いします!
大躍進の歴史
パリ:本日は「椅子内蔵型リュックの話が聞きたい」というまことにピンポイントな取材をお受けいただき、本当にありがとうございます。が、まずはその前に、気になることが山ほどある「サンコー株式会社」自体のこともお聞きしたく。設立が2003年ということで、個人的にはかなり初期のころから、PC周りのおもしろいグッズなどを開発されている会社として、存在を知っていた気がします。そして今や、家電のヒット商品を次々連発する大人気メーカーになられて。
﨏晋介さん(以下ekky):ありがとうございます。2016年から本格的に、家電分野に参入しました。きっかけは、設立当初からの「『面白く』て『役に立つ』」というコンセプトを、家電のフィールドで展開しても勝負できるんじゃないか? という想いからでした。
パリ:家電分野への参入からさらに勢いがついた印象がありますが。
ekky:そうなんです。なかなか年商10億円を超えられなかったんですが、家電をやりはじめてやっとそこを突破し。
パリ:コロナ禍のニーズに合致した商品も多く開発されているから、近年勢いはさらに増していそうですよね。
ekky:そうですね。2020年の4月には、突然通販サイトのアクセスが5倍になったり。家飲み需要の高まりから、アイデア調理家電などもご好評いただいてます。あと、いちばん大きく売り上げが伸びたのが「ネッククーラー」。当社は、コロナ禍において業績が250%アップしたんですが、実はそのうちの4割を締めているのがネッククーラーの売り上げ。これがなければここまでの成長はなかったと思います。
パリ:この商品は、どこが革新的だったのでしょう?
ekky:使っている素材自体は、PCを冷やす用途やミニ冷蔵庫にも使われている「ペルチェ素子」というものなんです。ただ、それを体につけて冷やす商品は、2015年に当社が初めて開発を始めていまして。そこから改良を加えていって、2019年に発売した「ネッククーラーmini」が、小さくて使いやすいということで、約1万8千台売れたヒット商品になりました。そこで翌年、さらに小型化した「ネッククーラーNeo」を発売したところ約25万台、2021年にはコードレス化した「ネッククーラー Evo」が約47万台と、当社最大のヒット商品になったんですね。
パリ:すごい! 桁がどんどん増えていく!
ekky:もちろん、ペルチェ素子をただ流用したというわけではなく、効率的に熱を逃がし、長時間快適に冷えた状態を保つ仕組みには、弊社独自のノウハウがたくさん詰まっています。そこは、企画部長の山岸が大変努力してくれたところで。
パリ:山岸さん、すごい! サンコー大躍進の立役者じゃないですか!
山岸:ありがとうございます(笑)。
アイデア商品を次々生み出せる理由
パリ:それから先ほどもお話に出ましたが、僕はお酒が好きなので、家飲みに使ったら楽しいだろうな〜と、見ているだけでわくわくしてしまうような製品ラインナップの数々にも興奮します。
ekky:当社の商品って「こういうものがあったらいいな」という想いから開発していくものが非常に多いんですね。コロナ禍で、「卓上でお酒を飲みながらちょっと美味しいものをつまみたい」という声が非常に増えましたので。
古賀:最高……。
ekky:(笑)。そこで、自動で回る「自家製焼き鳥メーカー」や、さまざまなニーズに合わせた「焼肉プレート」を開発したりしました。わざわざキッチンに行かずとも、飲みながらゆっくり美味しいものを食べられるというのがポイントで。
パリ:事前に見せていただいた資料によれば、アルバイトの方も含めた全社員が、毎週新商品の提案をするのがルールだそうですが。
ekky:そうですね。新商品の提案というと大げさなイメージですが、単純に「今こんなことに困ってます」「こういう悩みを解決したいです」というレベルの意見でぜんぜんいいんです。それをまた社員でブラッシュアップしていったりとか。
ちなみに上の写真は、自動でうちわがあおげる「USB電動静音うちわ」という、なんと実際に発売された商品!
パリ:そうやって、毎週2製品という驚異的な商品発売ペースが実現しているんですね。流行中のアウトドア飯ごう「メスティン」を家電化して、卓上で使えるようにした「エレクトリックメスティン」もそうですが、「楽はするけど楽しさはきっちり味わえる」みたいな商品は、もはやお家芸というか。
ekky:そうなんです! 「楽をしたい」というのはもう、我が社の大きなテーマのひとつで。「寝ながらパソコンができる」とか「クッションでうつぶせ寝を楽に」とか(笑)。
パリ:ちなみに、並行してどのくらいの商品を開発されるものなんでしょう?
山岸:50くらいですかね。ジャンルは様々ですが、共通しているのは「ぐうたら精神」です(笑)。
いよいよ本題「椅子内蔵型リュック」の話へ
ekky:そういう意味では、パリッコさんも愛用してくださっているという「シュパッと1秒!どこでも座れるリュック」も同じ発想なんですよね。当社は秋葉原に実店舗(サンコーレアモノショップ 秋葉原総本店)があるので、コミケに行かれるお客様なんかにも非常に重宝していただいて。
パリ:なるほど! 行列に並びながらもすぐに座れるという。そうか、僕の「いつでもどこでも座りたい」という欲求のほうが異常で、「待ち時間を楽にする」というのが本来のコンセプトなんですね。
ekky:そうなんです(笑)。
山岸:この座れるリュックも、2014年の発売当初から何度も改良が加えられているんです。もともとはハイキングに行くようなリュックに椅子がついたデザインだったんですが、現行品は、街なかでも違和感なく使えるようになっていて。
パリ:そう。デザイン自体がかっこいいんですよ。使っていて人から普通に「そのかばん、かっこいいですね」と言われることが本当にあって。そしたら内心しめしめですよね。すかさず「実は椅子にもなるんですよ!」と教えてあげると……。
古賀:「おそれいったか!」って(笑)。
ekky:(笑)。ちなみに資料をご用意したんですが、初代の「どこでも座れるリュック」はこのようなデザインで。
パリ:あ〜、ほんとだ! いわゆるアウトドア系の。というか、この資料に興奮してます、僕。
ekky:ただ、この時は、椅子の組み立てが今よりもずっと大変だったんです。ポールとポールを噛み合わせるのに、ぎゅっと体重をのせないといけないので、女性は特に苦労するような。ぱっとすぐに座りたいから開発した商品だったのに、そこがちょっとネックだったんですよね。
パリ:今の便利さを知ってしまうと、確かに……。
ekky:そこで翌年に発売したのが、「どこでも座れるリュック Plus」。これは、組み立てはもう不要。
パリ:1年でそこまで進化したんですね!
ekky:当社は、現行の商品に改善点があれば、それを改善して新商品として発売するというパターンも多いんですね。特にニーズのある商品に関しては、常に進化していきます。「どこでも座れるリュック」シリーズはご好評をいただいているので、2016年にはカラーバリエーションなどを増やした「どこでも座れるリュック2」が、2018年にはかなり現行のものに近い改良が加わった「ぱっと変身!どこでも座れるリュック tall」が発売されました。ここから、開発に山岸が加わりまして。
パリ:山岸さん来た! こちらはどういう商品だったんですか?
山岸:実はそれまでの商品は、お客様から「立ち上がるのがちょっと大変」というご意見をいただいていたんです。そこで、商品名に「tall」とついていますように、9cm椅子の高さを上げました。それだけでぜんぜん立ち上がりやすさが違って。またこの時、社長から「1秒で椅子が出てくるようにしてほしい」とリクエストがありまして。
パリ:組み立てが不要になっただけでは物足らず(笑)。
山岸:それでいて値段は上げたくないということで、どうしてもアナログ的なシステムで椅子を飛び出させる必要があった。そこでゴムバンドを利用した仕組みを考えて。
パリ:社長は、けっこうそういう無茶を言ってくる方なんですか?
山岸:う〜ん……(笑)。とにかく「楽をしたい」という強い想いがあるんです。椅子を引き出すのすらめんどくさいと。
パリ:そこまでいくと信念ですね(笑)。そこからさらにもう一段階バージョンアップしたのが現行のものなんですよね?
山岸:そうですね。というのも、社長からさらに「1秒でしまいたい」というリクエストが出まして(笑)。そこから1年間くらい、う〜んう〜んと考え、試作をくり返しました。現行のものを切って縫って、なにか使えるものはないかと試行錯誤して、やっとのことで、ベルトを引っぱると1秒で椅子が収納できるシステムが完成しまして。そうやって2020年に発売されたのが「シュパッと1秒!どこでも座れるリュック」なんです。
パリ:僕が見つけて何気なく買った座れるリュックにそんな歴史があったとは。今、完全に感動してます……。
古賀:本当にすごい……。
山岸:さらに、「どこでも座れるリュック tall」はサイドがチャックだったんですが、それを開ける手間もかからないように磁石式にしまして。
パリ:やっぱりいい座り心地だな〜。ちなみに今のところ、さすがにそれ以上のリクエストは、社長から出ていないですよね?(笑)
山岸:それが実は……「背もたれが欲しい」と。
パリ:わはは!
山岸:耐久性、重さ、コストなど、さまざまな面で、現状なかなか難しいんですよね。
パリ:そりゃあそうでしょう! でもきっと山岸さんならば、いつかとんでもない発想で実現してしまうと思えてなりません。
かばんとしての機能性について
パリ:興味がつきずに申し訳ないのですが、この「シュパッと」は、デザインはもちろん、かばんとしての機能もかゆいところに手が届きまくってると思うんです。そのあたりのこだわりに関しては?
山岸:自分は電車をよく使うので、まずは交通系ICカードを入れられる小さなポケットがサイドについていること。もちろん、背負ったまま取り出せる位置に。
パリ:そうなんですよ!
古賀:あ〜!
パリ:僕がリュックを選ぶときのポイントがまさにそのサイドポケット、それから同様に、ペットボトルホルダー。さらに、背負ったままでも手を伸ばせば背面のポケットが開けられて、財布が取り出せること。これ、「シュパッと」はすべて兼ね備えていて。これを考えた人、わかってるよな〜って、ずっと思ってました。偉そうにすみません!
山岸:ありがとうございます。自分が欲しい機能を詰め込んだだけなんですが。でもそれらすべて「楽をしたい」の精神から生まれているので(笑)。
パリ:さすがです。やはり初代のころよりは、街なかなど、使われるシーンも幅広くなっているんでしょうか?
ekky:そうですね。特にコロナ禍になって、人との距離をとりたいという基本的なニーズがありますので、公園のベンチに座るよりは自分の椅子のほうが安心という方も多く。また、忙しいビジネスマンの方が、「ぱっと座ってパソコンをひざに置いてメールの返信ができるのがいい」と重宝してくださったり。それから最近は「チェアリング」もブームになってますよね。
パリ:チェアリング!
古賀:ekkyさん、ちなみに、チェアリングを考えたのがパリッコさんってご存知でしたか?
ekky:え! 失礼しました。不勉強ながら、一般的な言葉として使ってしまいました。
パリ:いえいえ、むしろ光栄です(笑)。僕と友達のライターのスズキナオさんとで勝手に名前をつけてやっていたら、それが少しずつ広まっていったという感じで。だからこそ「シュパッと」の完成度の高さが身に染みているんですよ。だって、これさえ背負っていれば、いつなんどきでも、思い立った瞬間にチェアリングができるんですもん!
ekky:景色のいい場所を見つけて、ちょっとだけ座ってリラックスして過ごすのって、本当にいいですよね。また、公園などで、ちょっとお子さんを休ませてあげるのにも便利だと言ってもらえたり。
パリ:そうそう。街なかでちょっと疲れて辛そうにしているご老人とか、突然具合が悪くなってしまった人なんかを見つけて、どうぞと座らせてあげることができたらかっこいいですよ〜。まぁ、今のところそんなシチュエーションはないですが(笑)。
ekkyさんと山岸さんのこと
パリ:ちなみにおふたりはそれぞれ、どんな経緯で今のお仕事をされているんですか?
山岸:僕はもともと知人の紹介で、店舗のほうに接客で入って、最終的には店長もやっていたんです。ただ、物づくりが好きで、専門学校で美術を専攻していたことなどもあって、それを知った会社から「企画をやってみる気はないか?」と言われ。
パリ:名采配! お話を聞く限り、すごくやりがいのありそうな仕事ですよね。
山岸:そうですね。企画した商品をたくさんのお客様に喜んでもらえるというのは、本当に嬉しいことです。同時にけっこうプレッシャーもあるんですが……。
パリ:確かに、責任も大きな役職ですもんね。
パリ:ekkyさんはいかがでしょう?
ekky:僕は、2015年に営業として入ったんです。ただ、それ以前に広報の経験もあって、もう少し広報に力を入れたほうがいいんじゃないかなと思って提案し、入社後3ヶ月くらいで広報も兼任することになったんです。その後、だんだんと広報の仕事が増えてきて、ひとりで兼任することが難しくなり、2016年に広報部を立ち上げました。
古賀:逆に、それまではなかったんですね!
ekky:そうなんです。それからひたすら、ひとりでメディア対応などをさせてもらっています。今日の取材もそうですが、ありがたいことにたくさんお声がけをいただいて。
パリ:ところで、ekkyさんの一度見たら忘れられないキャラクターはどのように誕生したんでしょう?
ekky:ありがとうございます(笑)。もともとはもちろん、普通に白いワイシャツを着て、メディア出演時にはベージュのエプロンをする、くらいだったんです。最初にこのオレンジのシャツを着たのは、2018年に「タモリ倶楽部」に出演させてもらった時。その後蝶ネクタイが加わり、このオーバーオールスタイルにたどり着いたのが昨年ですね。
パリ:少しずつキャラが確立されていったんですね。
ekky:やはりこういうスタイルのほうが、少しでも楽しい雰囲気になりますし、一度見た方に覚えてもらいやすいんですよね。おかげさまで、広報専門誌「PRマガジン」主催の、2021年度に最も活躍した広報担当者に贈られる「ベストPRパーソン」にも選んでいただきまして。
古賀:すごい! ekkyさん、やり手ですね〜。
パリ:すごすぎる! もちろん、ekkyさんご自身の優しくほがらかなキャラクターが大前提だとは思いますが。
以上、大好きな商品を作った人たちに会いに行ったら、案の定素敵な人たちで、会社ごとすっかり大好きになってしまったという話でした。
社長の「楽をしたい」というモットーと自由な社風のもと、柔軟な発想で物づくりをする人たち。なんて素晴らしい会社なんだろうと、本当、お話を聞きながらずっと感動していました。
サンコー株式会社のみなさん、これからも、世の中を明るく楽しくする商品(と、背もたれつきの座れるリュック)の登場を楽しみにしています〜!