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Amazonは6月21日、同社のコンシューマー向け事業の新CEOに、同事業にエグゼクティブとして長年携わってきたダグ・へリントン氏を任命した。へリントン氏はシアトルを拠点とする同社に17年前に入社し、同社においてさまざまな役割を果たしてきたが、なかでももっとも目覚ましい活躍は、eコマース大手である同社が食料品配達サービスのAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)を立ち上げるため尽力したことだ。
Amazonの最高経営責任者を務めるアンディ・ジャシー氏は6月21日付のメモで、「彼は、優れたチームを構築し、小売、食料品、需要創出、商品開発、そしてAmazonでの経験を活かしてくれる」と、記載している。
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へリントン氏は、Amazonが近年でもっとも難しい期間に直面している時期に、コンシューマー事業の指揮を取ることになる。同社は4月、2015年以来はじめての四半期損失を計上し、同社のフルフィルメントと輸送ネットワークの過剰設備に起因する追加コストは数十億ドルにのぼった。へリントン氏のこれまでの経験から、専門家は、この厳しい小売環境のなか、同氏はAmazonの浸透が低い食料品事業などのカテゴリーを新たに重視していくようになると考えている。
成長が期待される食料品事業
発表の一部として、ジャシー氏は同社がコンシューマー部門をAmazonワールドワイドストア(Amazon Worldwide Stores)という名前に変更することを発表した。また同氏は、上級副社長のジョン・フェルトン氏を、同社のデリバリー部門からへリントン氏直属の新しいデリバリー責任者として任命した。ヘリントン氏は同社に長年勤務しており、最上位のリーダーシップチームに10年以上在籍してきた。
ピュブリシス(Publicis)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、「Amazonにとって、食料品は、大規模で急速な成長の機会であることは明らかで、これはヘリントン氏の経験分野ともよく一致している」と述べている。「へリントン氏のもとで、Amazonフレッシュの食料品店開設が加速すると考えるのは妥当なことだ」。
同氏は、「食料品は、消費者支出のトップカテゴリーのひとつであり、デジタルの浸透がもっとも急速に成長しつつあるカテゴリーのひとつでもあるため、Amazonにとっては巨大な未開拓分野だ」と付け加えた。
インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、へリントン氏のこれまでの役割と経験の規模や範囲を考えると、同氏が選ばれたことは当然だとしている。へリントン氏は、直近では、米国、カナダ、メキシコにおける同社のコンシューマー事業を率いるシニアバイスプレジデントだった。
「同氏はAmazonフレッシュを立ち上げており、食料品はAmazonにおける同氏の職歴の多くを占めてきた。これは、売上増加のために同氏が次に活用する大きなカテゴリーとなるだろう。同氏はeコマースにおける食料品の取り扱いを増やし、Amazonフレッシュストア(Amazon Fresh Stores)を築き上げ、1兆4000億ドル(約190兆円)の食料品市場に浸透し続けるため注力するだろう」と、リプスマン氏は述べている。
横ばいが続くAmazonフレッシュ事業
Amazonがスーパーマーケットチェーンであるホールフーズ(Whole Foods)を買収してから5年が経過し、食料品配達サービスのAmazonフレッシュを立ち上げてからは15年が経過した。
Amazonフレッシュ事業の範囲は拡大され、食料品の配達だけではなくなった。また同社は、Amazonフレッシュのブランド名を使用して店舗も開設した。Amazonフレッシュの店舗が最初に開設されたのは2020年8月のことだ。それ以来同社は、カリフォルニア、イリノイ、ニュージャージー、バージニア、ワシントンの各州にわたって23を超える店舗を開設してきた。
同社は2022年の第1四半期に実店舗で46億ドル(約6260億円)近い収益を生み出したが、この分野における成長は過去数四半期にわたって横ばいが続いている。
へリントン氏は、食料品以外の実店舗の大部分を閉鎖するなど、戦略的大改革の真っただ中にある小売業を引き継ぐことになる。Amazonは2022年3月、米国と英国に存在する自社の4スター(4-star)ブランドの書店、ポップアップ店舗、および玩具や家庭用品を販売している店舗、合計68店をすべて閉店したと、ロイター(Reuters)は報じた。同社はその代わりに、自社のジャストウォークアウト(Just Walk Out)テクノロジー、ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)、Amazonフレッシュ、Amazon Goの拠点に集中することになる。
ゴールドバーグ氏は、Amazonが苦闘している課題のひとつは、へリントン氏が主導するAmazonフレッシュのような社内での食料品に関する取り組みと、ホールフーズの買収をどのように統合するかだと付け加えている。
「Amazonフレッシュはホールフーズとしばしば対立してきたため、両社の関係が進展し得るのか、またどのようにして進展するのかは興味深いところだ」と同氏は述べている。
困難な時期における着任
しかし、へリントン氏課せられた使命は、成長だけでなく、どこを切り捨てるべきかを見極めることかもしれない。Amazonを辞任するグローバルコンシューマー責任者のデイブ・クラーク氏は、同社の高速配送の成功の立役者であり、パンデミックの最中には同社のフルフィルメントセンターと倉庫空間の大規模な拡張を主導した。しかしここ数カ月で同社はひっそりと倉庫空間のまた貸しをはじめ、今では、使いきれないほどの倉庫空間が存在するため、他社との新規契約を拒否しはじめた。
リプスマン氏は、Amazonがこの過剰容量を成長に活かせると主張する。「短期的にブレーキをかければいいだけだ」とリプスマン氏は述べている。
へリントン氏は、Amazonの運用に関して大量の知識を持ち合わせて新しい職務を開始するわけだが、経済的に困難な時期に同社の小売ビジネスを成長させるという使命も負わされることになる。「同氏はAmazonにおいて深い経験があるがゆえに、Amazonの抱える課題と機会を新鮮な観点で見直すことに困難を感じるかもしれない」とゴールドバーグ氏は指摘している。
[原文:How new consumer chief Doug Herrington may usher in new era of grocery at Amazon]
著者:Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)