直近に行われた買収・採用案件の概要を素早く手短に伝え、業界の最新情報を届けることを目的としているDIGIDAY DealBook。今回のテーマは、注目を集め続けるイーロン・マスクとTwitter、エディトリアル部門強化に乗り出したシャッターストックの近況、シェリル・サンドバーグ氏のメタCOO退任の話題などだ。
直近に行われた買収・採用案件の概要を素早く手短に伝え、業界の最新情報を届けることを目的としているDIGIDAY DealBook。今回のテーマは、注目を集め続けるイーロン・マスクとTwitter、エディトリアル部門強化に乗り出したシャッターストック(Shutterstock)の近況、シェリル・サンドバーグ氏のメタCOO退任の話題などだ。
Twitterの一部株主がイーロン・マスク氏とTwitterを提訴したことで、同社はこの週も注目を集めつづけた。訴えの内容は、マスク氏が買収交渉の行方に疑念を抱かせるようなツイートを投稿したことにより、同社の株価を下落させたというもの。原告らは5月25日、マスク氏が株価を操作するなど、カリフォルニア州会社法に違反したとして、同氏を相手取り集団訴訟を提起した。
注目のテック各社の動き
マスク氏の買収提示額が明らかになって以降、Twitterの株価は12%下落したが、テスラ株の値下がりはさらに深刻で、40%近い急落を喫した。一方、Twitterは米連邦取引委員会(FTC)と法務省から、電話番号を含むユーザーアカウントのセキュリティデータを広告目的等に使用しないという2011年の和解条件に違反したと認定され、1億5000万ドル(約200億円)の制裁金を支払うことになった。Twitterはこのセキュリティ情報を広告のターゲティングなど、自社の利益のために使用していたという。
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メディア領域で事業の拡大を進めるシャッターストックは、エディトリアル部門の強化を目的として、スプラッシュニュース(Splash News)を買収した。スプラッシュは各種のイベントや授賞式のコンテンツを強みとしており、CROのジェイミー・エルデン氏は「セレブリティとエンターテインメントのプレミアムコンテンツ」と表現している。シャッターストックは5月にもポンド5(Pond5)という世界最大の動画コンテンツマーケットプレイスを2億1000万ドル(約280億円)で買収している。これらの買収を通じて独占的なコンテンツを追加することにより、エディトリアル部門の「ニュースルーム」セクションを拡充させたいとしている。スプラッシュの買収により、同社保有の2700万超の画像が、シャッターストック保有の6000万点の画像アーカイブに加わることになる。
消費者インサイト分野の主要企業2社がそれぞれ資金調達と買収を完了した。まず、人工知能(AI)を活用したカスタマーエンゲージメントプラットフォームのモーエンゲージ(MoEngage)が、一部ゴールドマンサックスが支援するシリーズEの資金調達で7700万ドル(約100億円)を確保した。モーエンゲージはプラットフォーム横断的に消費者のエンゲージメントを追跡できるリスニングツールだ。数百万ドル規模の資金調達としては、過去12ヶ月で3度目となる。次に、成長著しいリスニングツール分野のアンサーザパブリック(AnswerThePublic)が、パフォーマンスマーケティング企業のNPデジタル(NP Digital)に買収された。アンサーザパブリックは検索エンジンリスニングツールで、オートコンプリート機能を活用して検索キーワードを追跡し、アルファベット(Alphabet)傘下のGoogleを含め、1日に30億件の検索をリスニングしている。
その他のニュース
- メタ(Meta)のCOOで、創業者マーク・ザッカーバーグ氏の右腕として知られるシェリル・サンドバーグ氏が、6月1日、退任の意向を発表した。後任は6月9日に現CGOのハビエル・オリバン氏と発表された。メタのティッカーシンボルがお馴染みの「FB」から「META」に正式に変更されたのも同じく6月9日だ。ティッカーシンボルの変更ひとつにも、同社のリブランディングとメタバースへの注力を強調するザッカーバーグ氏の強い意気込みがうかがわれる。
- ミッションドリブンな企業に出資するベンチャーキャピタルファンドのジンク(Zinc)が、喫緊の社会問題に取り組むミッション型の起業家への投資を継続するために、3400万ドル(約46億円)の資金を集めた。新たに調達した資金は、500社の新会社と、ヴィラヘルス(Vira Health)やトーナス(Tonus)を含む100社の既存企業に出資する。今回の調達では、ブリティッシュビジネスバンク(British Business Bank)のエンタープライズキャピタルファンズプログラムからの出資金がその大部分を占める。
- 半導体ソフトウェアメーカーのブロードコム(Broadcom)が、大手仮想化ベンダーのヴイエムウェア(VMware)を610億ドル(約8兆2000億円)で買収した。同社が今年に入っておこなった買収としては2番目に大きな金額となる。ヴイエムウェアのソフトウェアはクラウドコンピューティングの発展に欠かせない技術で、顧客にはAmazon、Microsoft、Googleら、大手企業が名を連ねている。
- オーディオOOHの広告プロバイダー、ヴァイブノミクス(Vibenomics)が広告配信先の小売店網を拡大する原資として、シリーズBで1230万ドル(約16億円)を調達した。この投資ラウンドは、テクノロジー系ベンチャーファンド大手のパノラミックベンチャーズ(Panoramic Ventures)が主導した。
- ラブコメ専門のポッドキャスト制作会社、ミートキュート(Meet Cute)がレインジメディアパートナーズ(Range Media Partners)と提携関係を結んだ。A+Eネットワークス(A+E Networks)の支援を受けるレインジメディアは、この提携を通じてミートキュートのポッドキャスト番組をテレビシリーズ化する権利を獲得する。
- フォーブス(Forbes)がSPAC(特別買収目的会社)による上場計画を中止した。昨年8月に、マグナムオパスアクイジション(SPAC)との合併後の時価総額が6億3000万ドルとなる見通しが発表されていた。
- 英国の競争・市場庁(CMA)がBTスポーツ(BT Sports)とワーナーブラザースディスカバリー(Warner Bros Discovery)の合弁事業計画を調査することになり、同計画の先行きに不透明感が漂っている。同庁は、メディア市場の競争を不当に制限する可能性を判断するためとして、この計画に待ったをかけた。
- eコマース企業のビジュアリゼーションとマーチャンダイジングを支援するエヌフィニット(Nfinite)が、ソフトウェア投資家のインサイトパートナーズ(Insight Partners)の主導のもと、シリーズBで1億ドルの資金を調達した。エヌフィニットは、eマーチャンダイジングの普及を進めるとともに、AIを用いたバーチャル試着の提供など、オンラインショッピング体験のさらなる進化に注力したいとしている。
Carly Weihe(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)
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