これが現在の悪魔オールスターズ
数年前、ローソンに「悪魔のおにぎり」という商品が売っていた。
悪魔が人間の世界を席巻するかのような人気ぶりだったが、いつの間にか販売は終了。
それ以来、もう悪魔はいなくなったと思っていたのだが・・
悪魔を分かっておきたい
このあいだ、名前に「悪魔」がつく商品を同じ日に2つ見かけた。
いなくなったと思っていた悪魔が復活していることに気づく、まるでホラー映画のはじまりのような1日だ。
さらに調べてみると、「悪魔の〇〇」系の商品は他にもたくさん出ている。私たちはいつの間にか悪魔にとり囲まれていたのだ。
仲よく共存していくため、今のうちに「悪魔の〇〇」を食べくらべて、悪魔とは何なのか分かっておきたい。
ただ、1人で立ち向かうのは心細かったので、悪魔にゆかりのあるこちらのライター・編集部の皆さんに集まっていただいた。
大北さん
酔っ払うのは悪魔のせいだと信じていて「悪魔よ、去れ〜!」と叫びながら酒を飲んでいる。
月餅さん
「悪魔」の、字面にしてはかわいい響きに納得がいっていない。
高瀬(筆者)
「あくまでも」と聞くと悪魔が頭をよぎるほど、日常にひそむ悪魔に敏感。
混ぜ込み悪魔めし
最初に召喚する悪魔は、今回の食べくらべのきっかけにもなった「混ぜ込み悪魔めし」。
始祖である「悪魔のおにぎり」の流れをくむご飯系だ。まずはそんな教典のようなものから、悪魔の基本を学んでおきたい。
消費量が悪魔
石川:高瀬さん、すごい量つくってきましたね。
高瀬:2合炊いてきました。僕こういうみんなでいろいろ食べる撮影って初めてで、量の加減が分かんなくて。こんなには食べないもんなんですか?
大北:もう少しちょっとずつ食べますかね。味見だから、1口2口ぐらいずつ。
高瀬:晩ごはんどきだし、お腹いっぱい召しあがっていただこうっていう気持ちで持ってきちゃいました…。
月餅:実家みたいなやさしさですね。
大北:でもこれ、160グラムのご飯に大さじ2杯ってことは…?
高瀬:ご飯2合だと、この素を2袋入れる感じです。
大北:2袋!?けっこう多いな。すぐなくなりますね。
石川:消費量が悪魔だ。
大北:ご飯の色変わってるもんね。
「濃い」と書いて「うまい」と読む
高瀬:ふふ、ふふふ、めちゃくちゃおいしいですね。
月餅:味が濃くて・・・、おいしい。
大北:うん、濃い濃い濃い濃い、しっかり濃い。チャーハンより濃いもんこれ。おいしいなー。
月餅:これは悪魔って呼ばれてるの分かりますね。モリモリ食べちゃう。
石川:ご飯って食べすぎたときの弊害が分かりやすいから、おいしいご飯は悪魔っていうのはすごい分かる気がしますね。これうまいっていって1人で2合食べちゃったらけっこう問題あるじゃないですか。
一同:あーー!!
大北:砂糖みたいなもんってよく言われるもんね、米が。
石川:体に良くないの似合いますよね、悪魔は。
2合は多かったはずが・・
大北:(小声で)あの、おかわりいただいてもいいっすか?
月餅:おかわりが発生した。
大北:ほんとね、あなどってました。これはもうちょっとした快楽ですね。石川くんの食べかけのやつも奪って食べたいぐらいです。
石川:盗みをはたらいてまで…。悪魔にとりつかれてる。
高瀬:いっぱい作ってきてよかった。
結局このあと全員がおかわりをして、多いと思われていた2合のご飯はほぼなくなった。
とにかく味が濃い。でもそれがおいしくて止まらなくなる。悪魔のおにぎりはよく「やみつきになる」と紹介されていたが、まさにそれだ。
我々は、まずはそんな悪魔のセオリーを体感した。
悪魔のビール
ここからは、悪魔としてはあまりなじみがないご飯以外のものに入っていく。
まずはこちらの「悪魔のビール」。意外なことに、日本酒のイメージが強い黄桜から発売されているクラフトビールだ。
大北:悪魔って「ごはんに合う」ってことだけじゃないんだね。
高瀬:これはそういうことじゃなさそうですね。あっ、でもお米入ってますよ。
石川:ほんとだ、米って書いてある。さすが黄桜。
大北:あー、じゃあ日本酒っぽいビール?でもIPAって書いてあるな。グレープフルーツみたいな味ですよね。
月餅:缶の色からするとレッドアイ的な可能性もありますか?
日本酒メーカー・お米が入っている・IPA・赤い缶、とパッケージだけでもいろいろな要素があり推理がふくらむ。いったいどんな味がするのか。
悪魔からの接待
大北:んー、普通においしいIPAだ。
石川:あっ美味い!うまいなー。普通のビールよりこっちの方が好きですよ。
月餅:たしかにIPAだ。でも飲みやすい感じしますね。ちゃんと苦いけど、グレープフルーツの爽やかな感じ。
高瀬:悪魔の毒々しさみたいなのを期待して飲むとちょっと肩すかしな感じしますね。なんかすっと通り抜けていくんで。
石川:むしろすっきりしてて飲みやすい。
高瀬:うん、おいしーーー、おいしいよー!
大北:あー、好き好き好き好き、好きだなー。
月餅:うっふっふ、これはうめー!普通に飲んじゃう。
高瀬:赤ですっきりしたやつ飲んでノドうるおした後に、もう一歩コクのあるビール飲ませていただいて。
月餅:悪魔様に感謝してる。
大北:順番も完璧でしたね。
高瀬:そうですね、この順番がいいですねー。めちゃくちゃ接待されてる、悪魔に。うめーー!
石川:これは黄桜さんにすっかりやられちゃいましたね。帰りにスーパーとかコンビニにあったら買うな。安かったら2本。両方買って、今日と同じ順番に飲もう。
飲みすぎているのは悪魔ではなく私たち
クラフトビールらしいしっかりした味わいはありつつも、すっきりしていて飲みやすい。悪魔のビールの悪魔性は、そんないくらでも飲めてしまうところにありそうだ。
高瀬:缶に書いてありますよ。「普段は怖い悪魔たちも、美味しすぎてついつい飲みすぎてしまう」
大北:実際おかわりしたい気持ちはあるから、止まらないっていうのは分かるね。
月餅:でもこれ悪魔が主語なんだ。
高瀬:これだけ読むと悪魔の自滅ですけど、いま止まらなくなってるのは我々ですよね。悪魔の手のひらの上にいる状態。
石川:悪魔の正体をあばくつもりが、飲みくらべ記事になってる。
大北:怖いよー。
悪魔の塩辛
続いては「悪魔の塩辛」。見た目は普通の塩辛だが、カニみそが入っているところが悪魔ポイントのようだ。
悪魔ローテーションの入り口
大北:その手があったか。
月餅:あーカニみその匂いする。おいしい。
高瀬:食べてないけどもう美味しい。
月餅:うん、そして食べてもおいしい。あっ、でもしょっぱいな・・。
石川:ご飯ありますよご飯。
大北:そっちはそっちでしょっぱいんだよなー。
月餅:あー、しょっぱい。ダメです、これはダメです。
大北:のど乾いたって言って海水飲むようなもんだもの。
月餅:ほんとしょっぱい・・でもおいしい・・、あーおいしいです。
大北:わーほんとだ、これ一番の悪魔ですね。しょっぱいよー。
石川:避難所が倒壊したみたいな感じありますね。
月餅:箸やすめってものを知らなすぎですよ。全足し算。
高瀬:あっ、でもビールに逃げるとめちゃくちゃうまいですよ。
月餅:ほんとだ!救いですね。
石川:悪魔ローテーションが始まった…
悪魔におどらされる人間たち
さて、ここまで3つの悪魔を紹介してきたが、私たち悪魔調査隊がやったことといえば、ご飯をたらふく食べることと、ビールをスイスイ飲むこと。そして誘われるがままに悪魔ローテーションにはまること。
肝心の「悪魔を分かる」についても、「やみつき」「止まらない」「飲みやすい」など一般的に思われている以上のことは見出せていない。
悪魔の正体をあばくはずが、完全に悪魔におどらされている状態だ。
大北:これ予想だけどさ、普通においしいっていうのがずっと続くのかな。
高瀬:だとしたらちょっと悪魔ですね。。
石川:悪魔の撮影・・
しかしここから、さすがにまずいと思った人間たちの逆襲がはじまった。「やみつき」にとどまらない悪魔の正体が次々と明かされていく。
小悪魔チキン
そしてここからは、少し変わって「小悪魔」ゾーンとなる。その1つ目は「小悪魔チキン」。プレーンのサラダチキンに、こちらのタレをあえて作るものだ。
ただの悪魔とは何か違いがあるのだろうか。
演出された地獄感
大北:あっ、ついに唐辛子が出てきたんじゃない?
月餅:辛いイメージありますもんね、悪魔。
大北:でもベースはトマトなんだ。イタリアンっぽい。
月餅:あーほんとだ、めっちゃイタリアンの匂いだ。
高瀬:勝手に韓国系の、ヤンニョムみたいなことかと思ってました。タバスコっぽい匂いもしますね。
大北:タバスコっぽい、たしかに。メキシコっぽさはなんかありますね。
高瀬:見た目の悪魔感も出てきましたよね、さっきより。地獄色というか。
石川:赤パプリカとか入ってるし、赤に寄せようとしてる感じはありますね。
月餅:ビーツも赤いやつですか?
大北:赤かぶですね。
高瀬:地獄を演出してるんだ。
大北:あっ、これミツカン、愛知県だ。さっきの悪魔めしもミツカンですか?
高瀬:悪魔めしは浜乙女、海苔とかふりかけ系のメーカーですね。
月餅:浜乙女の住所、名古屋市って書いてありますよ。
高瀬:愛知が悪魔を生み出している・・。
大北:味が濃い文化だからかな。
石川:あー、たしかにたしかに。
高瀬:あっ、でもけっこう辛さきますね。舌がピリピリします。
大北:小悪魔でも辛いんだ。ちょっといたずらするみたいなイメージですけど。
高瀬:あー、でもそうか、これ小悪魔の辛さか。口の中全体ががっつり辛いっていう感じじゃなくて、舌がピリピリっとくるぐらいの辛さで。
石川:納得できるんですね、小悪魔に。
高瀬:悪魔より小悪魔っていう感じはしますね。
月餅:でもミツカンって何となくやさしい味なイメージありますよね。
大北:こんな辛いもん出して大丈夫かな?ってなったかもしれないですね。
月餅:自分たちでも異色の商品だと思ってるよっていうことをアピールするために「悪魔」って言ってるとか。
高瀬:でも実際につけた名前は「小悪魔」。悪魔って言いきらなかったのは何か躊躇があったんですかね。
大北:会社の大きさとかあるんじゃないですか?「悪魔」ってつけちゃうのは企業倫理として良くない。もうちょっとインディーズ系の企業じゃないと出せない名前だろ。みたいな意見が会議であがって。
高瀬:「小悪魔」が落としどころになったと。見たかったですね、その会議。
小悪魔の悪戯(いたずら)
最後に登場するのは「小悪魔の悪戯」。
珍味系のおつまみをいろいろ扱っている「ホタルノヒカリ」というお店が出しているもので、甘エビをそっくりそのまま乾燥させたものだ。
大北:これってもう刺身にするような甘エビですよね。すごい立派。つやっつやだなぁ。
石川:きれいですよね。
大北:この色ツヤの良さ、ブローチとかで見るやつだよ。
高瀬:うわー、すごいー
月餅:宝物のように見てる
高瀬:なんかこういうキラキラしたものにときめいてる自分にビックリしてます、今。
石川:キラキラしたものに魅入られてるのはちょっと悪魔感ありますね。
月餅:「甘えびの頭にはトゲがあり、口腔内で刺される恐れがあります」って書いてありますね。
大北:あー、そこが悪魔か。
高瀬:物理攻撃だ。
大北:へー、「取り除いてから食べてください」って。トゲってどれのこと?
月餅:この頭からはえてるやつ全部じゃないですか?鋭っ!
石川:でも教えてはくれるんですね、トゲがあるから危ないよって
高瀬:企業の倫理観が悪魔に勝った。
月餅:んっ、いい音!
高瀬:エビだ!今までの悪魔の感じからするともっと濃い味ついてるんだろうなって思って食べたんですけど、すごいそのまんまエビです。
月餅:素干しって書いてありますもんね。
一同:あっ!
石川:原材料も甘エビのみなんだ。
高瀬:だからか、塩とか全然使ってないんだ。
月餅:かっこいー。
小悪魔の悪戯の味は、「素材をいかす」どころではなく「素材そのまま」。それに加えて上品な甘さもあり、味自体には悪魔は全く感じられない。
むしろ、贅沢なお料理を食べさせていただいているという気持ちになる。
石川:あー、うめー!たしかに品がある。パワーで押してないですもんね。
大北:食べ物として対極じゃない?悪魔めしとかとは。
石川:これ塩辛系の旨味がありますね。海産物ならではの。腹わた系ってことなのかな。
月餅:お刺身で甘エビ食べるときって、頭の部分チューチューするじゃないですか。それも一緒に楽しめるっていう。
石川:悪魔のはらわた?
大北:映画の邦題だ!
大北:これほんとにうまいですね。3つぐらい食べ進めると美味さが立ち上がってくる。
高瀬:ここへきて止まんなくなってきてますもんね。最初はそこまでじゃないと思ってたのに。
月餅:アミノ酸ってこういうことかって思いますよね。ぜったい使ってないのにミリンっぽい感じもあって。照りもそうだし。
大北:これ、いくらぐらいするんですか?
高瀬:500円ぐらいです。
大北:あー、これで500円ぐらいなんだ。それはちょっと罪悪感あるわ。
高瀬:1尾100円ぐらいですもんね。
石川:金額考えるとちょっと罪悪感が。
高瀬:バクバクいけないですね。
大北:ポテトチップス5袋分ぐらいだもんね。
結局、悪魔とは何なのか?
この日食べくらべた「悪魔の〇〇」は以上となる。
たくさんの要素があがり悪魔の輪郭は広がるだけ広がったが、結局悪魔とは何なのだろうか。
石川:どれがいちばん悪魔だったかって言われたらダントツで米でしたね。
月餅:米はほんとに完食でしたね。
高瀬:おいしいっていうことと悪魔とはちょっと違いますよね。
大北:やめろっていうぐらいの力がありますよね、悪魔は。
石川:だからやっぱこれを2合ぐらい食べちゃったときに、なんてことをしてしまったんだって思う。その時に責任転嫁する先が用意されてるってことじゃないですか?悪魔のせいだっていう。
月餅:なるほど。
石川:これはあなたが悪いんじゃないよ、悪魔が悪いんだからしょうがないよっていうちょっとした許しみたいなのが悪魔っていうネーミングにはあって。
大北:それってもしかしたら原始的な悪魔の発生なんじゃないですか?
石川:おっ、なるほど!
月餅:核心に近づいてきた。
大北:泥棒とかした人が、いや私じゃない、悪魔がやらせたんだって言うみたいな、罪悪感の転嫁。
高瀬:ビールもそうですもんね。飲みすぎちゃったとしても、ですもんね。
石川:あと悪魔って「うま煮」みたいな意味になってるってことですかね。「うまいですよ」ってことを代弁してもらうというか。
月餅:人間が伝えきれないものを悪魔に託して伝えてもらう。
石川:誰も反論できない存在に。
高瀬:「うま煮」って自分で言うのってちょっと気がひけますもんね。ハードル上げちゃうから。
石川:でも田舎のおばあちゃんが謙遜して「これ悪魔煮です」って出してきたら・・。なんか材料が悪魔なのかなって想像しちゃいますね。悪魔のろっ骨の煮つけみたいな。
高瀬:おばあちゃん、しばらく会わない間に魔女になっちゃってますね。
悪魔は翌日まですみついた
撮影が終わった後のテーブルを見ると、すがすがしいほどジャンクフードばっかり食べたな―という光景だった。でもいいのだ。おいしかったし、ぜんぶ悪魔のせいだから。
味の濃いものをたくさん食べたので、その日だけでなく翌日まで、ずっと体が水分を欲していた。悪魔がすみつくってこういうことだったのか。