ウェールズで子どもへの体罰が違法に、保護者が子どもをたたいてるのを見たら警察か福祉局に通報してと政府

GIGAZINE
2022年05月01日 20時00分
メモ



グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国の構成国の1つであるウェールズで、2022年3月21日から子どもに体罰を加えることを禁止する法律が施行されました。

Ending physical punishment of children | GOV.WALES
https://gov.wales/ending-physical-punishment-children

Wales introduces ban on smacking and slapping children | Wales | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2022/mar/21/wales-introduces-ban-on-smacking-and-slapping-children

Nothing wrong with lightly smacking your child, says education secretary | The Independent
https://www.independent.co.uk/news/uk/politics/smacking-ban-light-smack-zahawi-b2062194.html

ウェールズで3月21日から発効した「Children (Abolition of Defence of Reasonable Punishment) (Wales) Act 2020(子どもに対する合理的な処罰の抗弁の廃止に関するウェールズ法)」は、イングランドとウェールズのコモンローで「親は子どもの悪いところを正す目的で、適度で妥当な体罰を与えることができる」として認められていた子どもへの体罰を禁止する法律で、2020年に施行されていたスコットランドの同様の法律に追随するものです。

この法律により、大人への暴行が禁じられているのと同様に、ウェールズで子どもに対するあらゆる体罰が違法となりました。対象となる行為はたたく、殴る、平手打ち、揺さぶりなどですが、これ以外のあらゆる物理的な行為も含まれます。ただし、道路に飛び出さないよう制止したり、他の子どもに危害を与えないように押さえたりする行為は除外されます。また、ウェールズにいる全ての人が対象となるため、例えば海外からウェールズに旅行している家族の親が自分の子どもをたたくことも、違法として警察に通報される可能性があります。


ウェールズ政府は、この法律についてのQ&Aサイトの中で、「子どもに体罰を加えるのは法律を破ることになり、暴行罪で逮捕および起訴されるリスクがあり、これによって前科がつく可能性もあります」と説明しています。また、子どもが体罰を受けているのを見た人に対しては、最寄りの社会福祉局に相談するか、緊急の場合は警察に通報するよう呼びかけました。

20年以上にわたって今回の法改正に尽力してきた社会サービス担当副大臣のジュリー・モーガン氏は、「これは、ウェールズの子どもたちとその権利にとって体罰が過去のものになるという、歴史的な瞬間です」と述べて、法律の発効を歓迎しました。

また、児童福祉団体・NSPCC Cymru Walesの広報担当者であるビブ・レイング氏は、「これまで、子どもたちは私たちの社会で、ある状況下でなら殴ってもいい唯一の存在でした。大人や動物を殴ることは許されないのに、長らく子どもだけは殴ってもよかったのは不条理です」とコメントしました。


一方反対派や保守派の人からは、この法律が親を犯罪者扱いしたり、身近な人を不正に密告したりする「シュタージ(秘密警察)文化」につながるのではないかと懸念する声も上がっています。保守党の議員で、野党議員が組織する影の内閣で社会サービス大臣を務めているガレス・デイビス氏は、「私はウェールズでシュタージ文化が助長されるのではないかと大変心配しています。そのような社会では、正しいと考えられる方法で自分の子どもをしつける親が警察に密告されるようになるでしょう」と述べました。

また、スコットランドとウェールズでは子どもの体罰が違法化されましたが、イングランドや北アイルランドでは同様の法律に関する議論が進んでいないなど、子どもへの体罰の是非についてはイギリスの中でも温度差があります。イギリスの教育大臣であるナディム・ザハウィ氏は、ラジオで「私の信念は、親を信頼することであり、親には子どもをしつける権利があるべきだということです。腕を軽くたたく程度のことを悪いと思う人はいないでしょう」とコメントしました。

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