「10年間で多くの選択肢が生まれた」:ハリーズ共同CEOレイダー氏が語る、カミソリ市場の進化

DIGIDAY

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ハリーズ(Harry’s)が創業した2012年当時、カミソリのオンライン販売ビジネスを築き上げる競争ははじまったばかりだった。

ダラーシェーブクラブ(Dollar Shave Club)は、カミソリがいかに高価で奇妙なものになってしまったかを皮肉る広告でバイラル化したばかりだった。多くの消費者にとって、カミソリをオンラインで、しかも店舗で見かけるものよりも安価に購入できる利便性は、まだ大きなセールスポイントだった。

デジタル技術を駆使したカミソリ販売の新興企業だったハリーズは、それから10年のあいだに、目新しい企業から大規模な事業体へと変貌を遂げた。同社は創業以来、3000万本のカミソリのハンドルを販売したと発表している。同社のカミソリ販売ビジネスの急速な成長はエッジウェル社(Edgewell)の目に留まった。同社はハリーズを買収しようとしたが、FTCによって契約が潰されてしまった。買収が失敗したあとで、ハリーズは新たに1億5500万ドル(約191億円)を調達して、さらなるブランドの買収に乗り出した。

しかし、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)やユニリーバ(Unilever)などの大手複合企業が独自のeコマース戦略を開発した現在では、これらの企業に先んじるには、より多くの条件が必要になった。そのためハリーズは3月28日、自社のカミソリの利点を顧客に改めて知ってもらうための新しい広告キャンペーンを発表した。

「ファーストネームを持つカミソリ」(razor with the first name)と名付けられたこの広告キャンペーンは、ハリーズが自社のカミソリの大きなセールスポイントとしている、耐久性、快適性、価格を強調している。このキャンペーンは、ストリーミングテレビやポッドキャスト、そのほかさまざまなデジタル広告チャネルで行われた。同社は、同社の代表的な商品であるトルーマン(Truman)カミソリにも、よりシャープな刃や、人間工学に基づいた新しいハンドルなど、いくつかのアップデートを行ったと述べている。

ハリーズの共同CEOを務めるジェフ・レイダー氏は、米モダンリテールとの電話インタビューで、「我々がハリーズを設立した頃よりも、市場には人々にとって多くの選択肢やオプションが存在しており、それは良いことだと思う。当社のブランドと商品についての認識を広めるためにもっとも重要なのは、普段周囲の人に話しかけるのと同じような形で、消費者に話しかけることだと考えている」。

レイダー氏は、ハリーズの創設後にカミソリ市場がどのように発展したか、そして同社がハリーズラボ(Harry’s Labs)部門で新しい商品やブランドを立ち上げるなか、どのように顧客への売り込みを行っているかについて、米モダンリテールの取材に答えた。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

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――ハリーズの創設後に、カミソリの分野はどのように発展したと考えているか?

より良い方向に進化していると思う。我々は自社の商品をより良いものにしてきた。そして、顧客の声に耳を傾け、顧客がカミソリとカートリッジに何を求めているかを理解し、実際にそれらの機能を商品に組み入れるという方法で、その改善を実現してきた。

当社が長年にわたって試みていることのひとつが、我々のブランドのことが純粋に好きで、そのメッセージを増幅する手助けをしてくれる人を探し続けることだ。そしてそのメッセージを、私たちが誰かと対話するのと同じ方法で世界に届ける。それが我々にとってコミュニケーションの重要な方法となっている。

私たちがハリーズを創業してから、業界の状況は大きく変化した。当社は常に、さまざまな方法と媒体を使ってコミュニケーションを試みている。我々は、多くの異なるチャネルでコミュニケーションを行っているが、これは良いことだと思う。異なる人々が、異なる場所で、当社ブランドを目にするからだ。

――御社のマーケティング戦略はどのように変化したのか? 今年新たなチャネルに投資する予定はあるか?

私が認識しているところでは、当社は現在15以上のメディアチャネルに参加している。新しいチャネルは常時テストしている。我々が行う作業のなかで、もっとも楽しい作業のひとつだ。

楽しく興味深い動画アセットには、明らかにチャンスがあると考えている。また、従来よりもはるかに短い形式で、さまざまなチャネル上で消費者と共有することが可能だ。人々はインスタグラムからTikTokまで、このようなコンテンツの視聴を好んでいる。Twitterのフィードを見て面白そうな動画をクリックする人々もいる。ごく短い、引き込まれるような動画コンテンツを好む人々は多い。このような短いビデオが目的を果たせるなら、YouTubeやストリーミングテレビなど、人々が普段の生活で動画を見るような多くの別の場所でも、同じように目的を果たせると考える。

――ハリーズのブランドに商品を追加していくとき、単一の商品に特化したキャンペーンを行う方が良さそうな場合と、商品をいくつかまとめた方が良さそうな場合とでは、どのように使い分けをしているか? 御社が最近行ったキャンペーンはどちらかといえば後者寄りだが、その事例について教えてほしい。

それは、いくつかの点において見られるだろう。まず、我々が自社の価値についてどのように語るかだ。我々は男性の外見を整え、内面を快適にしようと、多くの試みを行っている。当社はメンタルヘルスに多くの投資を行っている。さまざまなコミュニティや男性を支援するため、メンタルヘルス組織に8000万ドル(約98億4000万円)以上を寄贈している。人々が自分たちのイメージを、自分たちが快適に感じるように作り上げられるよう、我々は支援しており、それを人々に理解してもらうことが極めて重要だと考えている。

そして、何百万人もの人々に向けた広告となる小売店で、当社がどのような見せ方で小売を行うかだ。ここでは、当社が作り上げるそれぞれの商品が独自のもので、それぞれ大きく異なっていることを人々に示し、人々が当社の商品を試すべき理由を説明することが非常に重要だと考えている。彼らは、当社のブランドの精神、つまり我々は顧客の状況に寄り添うブランドであるということを全面的に信じてくれているが、同時に、その商品が実際に自分に適したものかといったことも同様に知りたがっているからだ。

我々には、ハリーズすべての商品の認知度を上げる機会がまだたくさんある。米国では、大多数の人々がハリーズというブランドについて聞いたことがなく、ハリーズの商品のことももちろん知らない。そこで、我々は多くの投資を行い、それぞれの商品が自分たちにどのように最適なのかを男性たちに本当に理解してもらうことが重要だと感じている。さらに、彼らがハリーズというブランドや商品のことを知ったとき、ほかの商品も同じアイデアや思想を共有しており、非常に優れた体験を提供できると理解してもらえるようサポートする。

――今年の成長計画について話してほしい。ポートフォリオのうち、拡大に特に力を入れようとしている部分はあるのか?

まず、シェービングブランドとしての認知を広めるために努力し続ける。また、我々が優れた商品を保有しており、長年にわたって大幅に改良し続けてきたこと、そして、この新しいカミソリは、それをさらに改善したものだということを人々に認識してもらうよう努める。当社には、シェービング分野の成長を推進し続けるチャンスがある。米国でハリーズの存在を知っている人々の割合は50%未満だと思うので、我々が作り上げてきた優れた商品を知ってもらう絶好の機会だと考えている。

イメージ重視のカテゴリーもいくつかあり、当社にとって非常に期待できるものだ。たとえばボディウォッシュはたいへん優れた業績を上げている。当社のなかでも非常に急速に売上を伸ばしているため、商品の在庫が追い付かないほどだ。今後も引き続き、男性の身支度をより良い体験にするような商品と体験のために投資していく。

[原文:‘More choices and options’: Harry’s Co-CEO Jeff Raider on the evolution of the razor market]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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