YouTubeの「荒らし」はどう防ぐ?–プーチン大統領演説もターゲットに

CNET Japan

 ウクライナ侵攻により、“フェイクニュース”“ディープフェイク”などの問題が続いている。そんな中、日本在住のウクライナ人YouTuberサワヤン兄弟は、「YouTube」の投げ銭機能「スーパーチャット(スパチャ)」で支援金を募り、日間ランキング世界一に。一方、サワヤン兄弟は誹謗中傷コメントをされ、プーチン大統領の演説配信動画でもスパチャでの荒らし行為が見られる状態だ。今回は、YouTube周りで起きていることについて見ていきたい。

寄付を募ったスパチャで日間ランキング世界一に

 日本在住のウクライナ人YouTuberサワヤン兄弟が話題となっている。サワヤン兄弟は、チャンネル登録者数125万人を超える人気ゲーム実況チャンネル「SAWAYAN GAMES」を運営している。

 サワヤン兄弟は、3月5日に行ったYouTubeでの「マリオカート8デラックス」の実況生配信でウクライナ支援を目的にスーパーチャットを358万円集め、日間ランキングで世界一となった。

 スーパーチャットはYouTube側に手数料を支払う必要があり、全額が手元に届くわけではない。ウェブブラウザやAndroidスマホなどから送った場合、Googleに手数料として約30%が支払われる。iOS端末から送った場合は、Appleにも手数料として約18%を支払う必要があるのだ。

 サワヤン兄弟はこの手数料分を自ら補填し、全額をウクライナ支援募金に寄付することを表明。7日には、ウクライナ大使館の寄付口座に振り込んだことを「Twitter」で報告している。

 手数料がかかるにも関わらずスパチャで寄付を募ったのには、少額ずつでも多くの人が寄付に参加しやすいことに意義があるのではないか。日間ランキング世界一になったことも、「日本にウクライナ支援者が多いこと」を示すことにつながったのではないだろうか。手数料を自ら補填することで、すべての人の気持ちを活かそうと考えたのだろう。

 なお、在日ウクライナ大使館が公開している寄附口座があるので、支援の気持ちがある方はこちらから直接寄付もできる。

プーチンに対してスパチャで日本語の悪ふざけ

 3月4日には、YouTubeでロシアメディア「RBC」によるプーチン大統領のウクライナ軍事特別作戦に対する会見動画が公開された。この動画に対して、英語やロシア語に混じって、日本語の書き込みも見られた。戦争反対を訴えるものもあったが、中にはあらしと見られる日本人らしきユーザーからのネットスラングや絵文字なども多く混じっていたことをご存知だろうか。

 それだけではない。中には、日本語コメントがついたスパチャも多く投げられていたのだ。それぞれのスパチャには、「プーチン頑張れファイト」(2000円)、「多くの日本人はロシアを応援しています!」(1220円)、「今日誕生日です。おめでとうお願いします」(610円)、「これライブだろ?すげー」(200円)など、色々な日本語のコメントが付いていた。

 スパチャは、配信者を応援すると同時に、メッセージを目立たせるという意味もある。確実にメッセージを届けたい場合に、スパチャは有効なのだ。おそらく、たった数百円から数千円でプーチンにメッセージを届けられる、世界に向けて悪ふざけのメッセージを届けられると考えたのだろう。これに対しては、「日本人の恥」「恥ずかしすぎる」という非難の声が集まっている。

 スパチャのメッセージは、前述のように、配信者と視聴者に対してメッセージを確実に届けることができる。誹謗中傷メッセージを送りつけるためなら、お金を払ってもいいと考える人達がいるのだ。このような「スパチャ荒らし」行為は、実は複数のVTuberなど、多くのところで起きている。

 チャット欄での荒らしを防ぐためには、チャット参加者をチャンネル登録者に限定することが有効だ。捨て垢からの誹謗中傷の書き込み、荒らしなどに効果があるだろう。また、紹介したようなスパチャでの特定の荒らし行為をするユーザーに対しては、ブロックをするといいだろう。

匿名の影に隠れた誹謗中傷は大きな問題

 サワヤン兄弟は、2日には「義勇兵に志願します」という動画も発表。そんなサワヤン兄弟の発信は、多くの人の心を動かしている。

 一方で、それに対して「お前の父親早く戦死しろ」「お前も早く義勇兵行って死ね」などの誹謗中傷も、コメント、DM、Twitterなどで送られているという。サワヤン兄弟はこのようなものすべてに目を通しており、手作業で消しているそうだ。サワヤン兄弟は、このような誹謗中傷に対しては訴訟を考えているとしている。

 プーチン演説に対する荒らし行為も、サワヤン兄弟への誹謗中傷も、根っこはつながっているのではないか。匿名の影に隠れて鬱憤を晴らしたり、行為の意味を考えず、その結果どのようなことにつながるかも考えずに悪ノリをしているだけだ。

 匿名での誹謗中傷は大きな社会問題となっており、法整備などの対策が進んでいるところだ。ネットでの書き込みは軽い気持ちでできるが、相手を深く傷つけたり、問題を引き起こしたりする可能性がある。YouTubeでのスパチャは支援にもつながったが、重大な誹謗中傷問題にもつながっていた。我々はそのことを忘れてはならないし、今後の対策を急ぐべきだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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