7月27日の東京都のコロナ感染者は2848人と過去最多を記録した。なぜこうなったのか。
東京五輪の招致が決まって以来、日本の政治は全て五輪優先で動いており、その弊害は様々なところで露呈している。その最たるものがコロナ対策であり、五輪関係者に対し、国の基本方針の例外となるような優遇措置を与え、国民の顰蹙を買っている。
無観客になって人の流れは抑制されているのに、五輪期間中は首都高の通行料金を1000円値上げするという。おかしな話である。自宅でのテレビ観戦を勧めるのなら、選手の移動はあっても、首都高は混まないはずである。迷惑を被るのは利用する国民であり、その不満は高まる。タクシーの運転手からは、料金が高すぎて高速を使わないお客さんが増え、かえって潤滑な交通が確保できなくなると不満が出ている。
選手村の管理やバブル方式と呼ばれる感染防止対策にしても、ルールを守らない選手や大会関係者が出てくれば、一気に感染が拡大する恐れがある。
ところで、政府や東京都は、感染拡大は居酒屋などでの夜の飲食が原因だとして、営業停止などの強硬措置をとることにした。ただ、それを立証する科学的データが示されてないので、説得力に欠ける。
そのような中で、西村大臣は、7月8日、金融機関に対して営業自粛などの政府の要請に応えない業者に圧力をかけるように求めたが、大きな批判を浴びて1日で撤回した。
また、酒類販売事業者に対して、内閣官房と国税庁が、自粛に応じない店に対して取引を止めるように8日に文書で通達したことも明るみに出て、与党の自民党からも反発の声が高まった。その結果、政府は、13日にこれも撤回したのである。
西村大臣の「金融機関に圧力行使を求める」発言の問題は、国会が定める法に基づかない点である。民主主義の観点からは、この手法は危うい。
酒の卸業者に取引停止を求める文書を、政府は7月11日に全国の自治体に事務連絡として送付しており、その指示に従って、東京都、大阪府、愛知県なども同様の依頼書を業者に送っていたのである。
その後、6月11日にも酒類販売事業者に対して酒提供店との取引停止を依頼するように都道府県に通知していたことが判明した。この通知も、政府は撤回している。そのため、東京都、大阪府、愛知県は、酒販売業者からの支援金の申請を受け付ける際の誓約書に、休業要請などに応じない飲食店との取引を行わないように努めるという項目を盛り込んでいたが、この項目を削除した。
金融庁や財務省など関係省庁の官僚たちはこの暴走に疑問符を感じていたというが、どうやら首相官邸官僚の独断だったようである。何としてもコロナの感染拡大を阻止したいという菅首相の意向に沿おうとして無理をしたのではいか。
菅政権にとっては、今やワクチン接種が頼みの綱であるが、自治体や職場、そして開業医から、ワクチンが約束通り届かないという苦情の声が多数寄せられている。
デルタ型変異株の市中感染が進んでいるのだろう。ワクチン接種のスピードが変異株の感染力に追いついていない。緊急事態宣言もあまり効果がないようだ。とにかく全世代にワクチン接種を急ぐしかない。この点は、五輪に熱狂しても忘れてはならない。
・ ※この記事は舛添要一氏のツイートを時系列順に並べたものです。 ・