彭帥さん – PA MEDIA
中国のテニス選手で、安否が懸念されている彭帥さん(35)が19日、性的暴行の被害を告発したことはないと、シンガポールの中国語紙に語った。彭さんが外国メディアの取材に応じたのは、告発があって以降初めて。
彭さんは先月初旬、張高麗前副首相(75)から性交を強要されたとオンラインで告発。以来、公の場から姿が消え、安否を心配する声が世界中で上がっていた。
その彭さんが、シンガポールの中国語紙「聯合早報」の取材に対し、オンライン投稿には「多くの誤解」があったと述べた。
ただ、女子テニス協会(WTA)は彭さんについて、発言が中国当局の検閲を受けているのではないかとの懸念を示した。
「言っても書いてもいない」
今回の取材は、中国・上海のスポーツイベントの会場で行われたという。彭さんは他の中国のスポーツ選手らとともにイベントに出席していた。
彭さんは、聯合早報のビデオカメラに向かって、「誰かが私に性的暴行をしたと、言ったことも書いたこともない。このことは、極めて明確に強調しておきたい」と説明した。
また、監視はされていないと主張。「なぜ(私を)監視するというのか? (私は)常にまったく自由だ」と述べた。
WTAは今回の報道を受け、彭さんが「公の場に」姿を見せたことを歓迎すると表明。一方で彭さんの説明は、「彼女の安否と、検閲や圧力なしに話ができているのかをめぐる懸念を(中略)和らげたり応えたり」するものではないとした。
「私たちはなお、完全、公正、透明な調査を断固として求める。(中略)私たちが最初に懸念を抱くことになった、性的暴行の訴えに関する調査だ」
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1600字の告発
彭さんは先月2日、中国のソーシャルメディアの微博(ウェイボ)への約1600字の投稿で、張前副首相にたびたび性交を強要されていたと告発した。中国で低調な#MeToo運動において、大きな注目を集めた。
投稿では、張前副首相に性交を強要され、それ以来、関係が続いたと主張。「なぜあなたは戻って来て私を探し出し、自宅に連れて行き、性交を強要したのか」と書いた。
投稿は素早く削除されたが、すでに拡散されていた。
この一件があってから、彭さんは公の場から姿が見えなくなり、世界中で懸念の声が高まった。ツイッターでは#WhereisPengShuai(彭帥はどこ)というハッシュタグのキャンペーンが始まった。大坂なおみさんや、セリーナ・ウィリアムズさん、ノヴァク・ジョコヴィッチさんなどのトップ選手もツイートし、運動は一気に広がった。
メールも自筆と説明
中国の国営メディアはこれまで、彭さんの写真や、「万事大丈夫」などとWTA宛てに書いて送ったとされるメールを掲載した。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も、ビデオ通話で彭さんと会話し、彭さんは安全で元気でいると話したと説明した。
しかし多くの人々が、彭さんは当局の圧力を受け、発信は検閲されているとみている。WTAは、彭さんから送られてきたとされるメールの真正性を疑っている。
このメールについて彭さんは、19日の取材で、自分で中国語で書いたと述べた。また、中国国営メディアが英訳して掲載した内容は正確だと話した。
WTAは彭さんの問題を受け、中国でのすべての大会開催を停止すると発表している。IOCや他のスポーツ組織に同様の対応を取るよう圧力をかけた格好となっているが、他に続く組織は出ていない。