日大元総長「田中派を一掃する」 – SmartFLASH

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11月29日、脱税の疑いで逮捕された田中前理事長

 日本大学に巣くう黒い人脈が、徐々に陽の光のもとに炙り出されている。

 日大板橋病院の建て替え工事をめぐり、日大に4億2000万円の損害を与えたとして、元理事の井ノ口忠男被告(64)、医療法人「錦秀会」前理事長・籔本雅巳被告(61)が10月7日に背任容疑で逮捕されたのを皮切りに、ついに11月29日、理事長の田中英寿容疑者(75)が1億2000万円のリベート収入を申告しなかったとして所得税法違反容疑で逮捕された。

 本人は「カネは受け取っていないが、理事会に出席できない」として、理事長の辞任を申し出ていたが、12月3日におこなわれた理事会で解任が決まった。また、“田中一派” で構成されていたといわれた理事会も、同日に全員が辞任することになった。

「これでやっと日大から田中君を追い出すことができます。理事全員の辞任も画期的です」

 そう胸中を吐露するのは、1996年から2005年までの3期9年間、日大総長を務めた瀬在幸安氏(91)だ。瀬在氏は心臓外科の世界的名医として知られている。

「私が総長3期めの2005年、日大の広報担当者から、当時常務理事だった田中君に反社会的勢力とのつき合いがあり、さらに業者から裏金を得ている疑いがあると相談を受けました。そこで特別調査委員会を立ち上げて身辺を調査した結果、そういった疑惑が次々に明らかになったんです。

 ところが、私はちょうど総長の任期が終了して、辞めざるを得なかった。土俵際まで追い詰めた田中君をあのとき追放できなかったことは、今でも忸怩たる思いです」

 調査期間中、瀬在氏の自宅には脅迫状と実弾が送られ、周辺には街宣車がまわり「ほめ殺し」攻撃も受けたという。

 瀬在氏という “宿敵” がいなくなった田中容疑者は、学内で実権を握り、2008年に理事長に就任。同時に総長制を廃し、理事長が実質的なトップとなる組織改革をおこなった。

「私の総長時代、常務理事の田中君が書いた文章を一度も見たことがありません。彼は教育者でもなんでもないから、一筆したためることすらできないのです。大学を辞めて以降も、学内からさまざまな相談が私に寄せられていました。

 2018年のアメフト部の悪質タックル問題のときも、田中君の指示で井ノ口忠男理事(当時)らが学生に箝口令を敷きました。学生を守らず保身に走る姿勢に、怒りと恥ずかしさがこみ上げました。

 大学を食い物にした田中君を、私は最低の人間だと思っています。私が築いてきた日大は地に堕ちました。学生たちや親御さんに向ける顔がありません」

 瀬在氏は、田中容疑者が逮捕されても「復活を警戒しないといけない」と戒める。

「日大OB組織である校友会から、田中君を完全に締め出す必要があります。また、田中君は院政を敷こうとするでしょうから、断固阻止しないといけない。私は背中に日本大学の看板を背負っていますから、今こそ私が日大のために、今度という今度は学内から田中派を一掃する覚悟です」

 こうした瀬在氏の動きに呼応する人物もいる。「反田中派として瀬在氏が復帰すべき」と語るのは、右翼系新聞「敬天新聞」社主の白倉康夫氏(70)だ。

 白倉氏は、日大アメフト部元監督・篠竹幹夫氏の秘書を10年間務めるなど、日大の内部に精通している人物。10年以上前から日大の諸問題を追及し、今回の事件では情報を求め報道陣が殺到した。

「日大の理事や職員は、少しでも学内の問題点を指摘すると必ず左遷させられた。今後このような体質を糺し、田中前理事長の影響力を完全に排除するには、天敵である瀬在氏が、一時的にでも復帰したほうがいいでしょう。日大上層部の間でも、瀬在氏の復帰を求める声が上がっています」

 はたして日大は再生できるのか。ある日大関係者は「そう簡単にはいかない」と語る。

「田中前理事長の逮捕は、あくまで脱税のみ。背任横領は問われていません。理事が全員辞任しても、利権構造がすぐに崩れることはありません」

 実際、今回の逮捕は日大を蝕む “田中利権” の氷山の一角が明るみに出たにすぎない。ある捜査関係者が語る。

「2020年1月、警視庁は都内在住のある男(69)を詐欺容疑で逮捕しました。日大板橋病院近くに調剤薬局の出店を確約できるとして、保証金名目で大手薬局から2億円を騙し取った容疑でした。

 男は病院の詳細な設計図を持っており、日大上層部との深い繋がりがあったことは明らかです。この男は日大の田中前理事長の “裏の仕事” を請け負っていた人物で、東京地検特捜部は当初からこの男に注目していました」

 田中派の反撃もいよいよ始まる。私学の雄の復活へ、権力闘争の火蓋は切られた。日大は膿を出し切ることができるのかーー。

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