宇宙を題材にしたレゴセットの歴史とこれから

最近のレゴと宇宙セットと言えば、同社の幅広い品ぞろえの中で最も重要かつ影響力の大きなシリーズの1つ『スター・ウォーズ』を即座に思い浮かべる人も多いかもしれません。

レゴ社は今年、スター・ウォーズとのライセンス商品の発売25周年を迎えますが、同作品よりも遥かに前から宇宙に関心を示していました。

レゴが地球上で最も人気のあるオモチャの1つへと変化していくなかで、その野望を形作っていったのが宇宙のセットでした。黎明期を経て1980年代の象徴的な宇宙のサブテーマの誕生、そして90年代の多様化を越え、スター・ウォーズに触発されたレゴのブランド戦略ラッシュのときに宇宙というテーマは静かに撤退していきました。

でもこの数年は時々思い出したかのように宇宙モノがリリースされており、久しぶりの復活の予感を漂わせているような…。レゴの宇宙セットがたどってきた歴史を、Bricksetからの画像とともに振り返ります。

宇宙テーマ誕生以前の宇宙系セット

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Image: Lego

構想の具体的な部分を固めるのは数年先になるものの、レゴが宇宙探査に大きな関心を持ち始めたのは1970年代初めのことでした。

1964年にレゴ史上初の「宇宙ロケット」のセットが発売されましたが、レゴ社の宇宙モノの構想の土台となったのは1973年の「ロケット基地」と1975年の「月面着陸」でした(後者はミニフィグ誕生以前の時代にブリック製の宇宙飛行士3体を同梱)。

その後の40年に及ぶレゴ宇宙シリーズを通して見られる、テーマの色は青という非常に重要な事柄を定着させたのも、これらのセットでした。

クラシックスペースの始まり

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私たちが知っているミニフィグの第一弾は街(現シティ)、お城(中世の建築シリーズ)、そしてもちろん宇宙といったレゴの最も長く続くテーマと共に1978年に登場しました。

最初の宇宙セットには、宇宙モノのブランド戦略を定めることになるアイコン的な宇宙飛行士のミニフィグ(当時は白色と赤色)が付属していました。そしてそれ以来クラシックスペースの証しとなっている、惑星をぐるっと回るロケット船のロゴが施されていたのです。

宇宙セットの色要素は一貫して青色でしたが、この時代の早い段階で古典的なレゴのSFのカラーリングとして、世代を超えて子供たちの記憶に強く残る色の組み合わせが確立されました。同ラインのトレードマークであるカクカクとした空飛ぶ乗り物や地上用の探査ローバーの大部分を構成するクールグレーとの配色です。

色合いが変わる

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1980年代半ば、宇宙シリーズはもっとユニークなパーツとともに進化し、発売されているセットに変化・多角化をもたらすべく色をもっと取り入れました。宇宙飛行士のフィギュアには新たに黒色と青色が追加。初期のミニフィグには主にヘルメットのアゴ紐部分があまりに細くて小さいため簡単に折れてしまうという問題点がありましたが、レゴはヘルメットデザインに改良を加えて解決を試みました。

セット自体はというと、初期の宇宙の乗り物のデザインを特徴づけていた、ふんだんに使われていたグレーが白と青の配色に取って代わられることに。その変化は、1980年代の終わりに何かもっと大きなものが来ることの前触れでした。

フューチャロン、ブラックトロンなどの勢力

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この時点まで、レゴの宇宙テーマには独自のストーリーがありませんでした。子どもたちに自分たちでシナリオを想像してもらうことが狙いでしたが、レゴはセットを漠然と宇宙探査というアイデアをテーマとしたものとして示していました。

その当時存在していた宇宙探査のアイデアに根付いたというよりも明らかにSF的ではあったものの、これらのセットは対立が中心ではなく研究と探査に焦点を当てていたのです。

それが変わったのは1987年、レゴが宇宙シリーズ初の勢力をデビューさせたとき。フューチャロンとブラックトロンという2つの対立する宇宙テーマに発展しました。

フューチャロンは乗り物の白と青の配色を含め、クラシックスペース後期の独自のデザインの大部分を保っていました。

その一方でブラックトロンは名前が示すように、メインに黒を使ったデザインに黄色がアクセントで加わっており、見た目も印象もよりアグレッシブなセットを売りにしていました。

彼らはレゴが発表した最初の明らかな悪党グループの一派で、1990年代を通してレゴ宇宙となるものを定義付けるきっかけとなりました。

次の世代

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初代のブラックトロンを追う形で1989年にスペース・ポリスが登場し、レゴの発展していく宇宙シリーズにおいてのちにイデオロギーの異なる3つの勢力となるヒーロー、悪役、そして中間にある民間の探査者たちの基盤が築かれました。

このトレンドは、レゴが宇宙シリーズの内外で定期的に新しい勢力とストーリーテリングを繰り返していた90年代を通して続きました。

フューチャロンはエムトロンに道を譲り、そのエムトロン自身はアイスプラネット 2003の雪の中を探検する者たちへと移行。その一方でスペース・ポリスとブラックトロンの新世代が宇宙を舞台にした警察と敵役のような対立を発展させた後に、スパイラスとユニトロンなどの完全に新しい勢力へと取って代わられました。

エイリアンの襲撃

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90年代そしてレゴの勢力間の争いというアプローチが続くなかで、宇宙モノは人間同士が対立するストーリーを越えた展開を見せました。

エクスプローリアンシリーズでロボットキャラのミニフィグを発表し、その1年後の1997年にはロボフォースでさらに多くのアンドロイドのキャラクターを売り出しました。

その後まもなくUFOそしてインセクトイドのローンチで史上初のヒト型ではないエイリアンのミニフィグを発売。典型的なSFの曲線を再現するための大型パーツといった高度な設計技法や、インセクトイドの名が示すような昆虫っぽいデザインテーマが取り入れられました。

しかしこの時期はレゴの宇宙モノにとって全く違う理由でも重要な時期でした。90年代終盤、レゴ社は前例のない戦略的な動きを発表します。新三部作をひっさげてきたシリーズに基づく初のライセンス商品です。1999年10月に263ピースのXウイング・スターファイターの発売でレゴ® スター・ウォーズ™が登場し、すべてが変わりました。

赤い惑星

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2000年代初め(そしてスター・ウォーズがレゴ社をさらなる高い高みへと推し進める中で)、同社は宇宙シリーズを星間での戦争から遠ざけて再編成しました。

21世紀最初のオリジナルの宇宙テーマは、火星の未来の植民地にて共存する人類(宇宙シリーズの以前の“善玉”勢力の白と青という昔ながらの配色を使用)と現地の火星人をイメージした、ライフオンマーズでした。

その数年後、レゴとディスカバリーチャンネルとのコラボであるISSや火星ローバーといった現実世界の宇宙探査の取り組みからアイデアを得たセットで、私たちの世界の話に戻りました。

ライフオンマーズは短命に終わりましたが、6年後にレゴはマーズ・ミッションでそのアイデアに立ち戻ります。ただし今回は、人類と侵略するエイリアンとが赤い惑星を巡って争うという、またしても明らかに対立的な構図でした。

時代の終わり

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マーズ・ミッションは、ライセンス商品以外の正規のSFレゴシリーズの終わりの始まりを象徴していました。2009年に復活したスペース・ポリスは、スパイや泥棒ではなくエイリアンの脅威に対して応戦する勢力としてイメージを刷新。

同時に、エイリアン・コンクエストギャラクシー・スクワッドといった後続のシリーズは、レゴの宇宙テーマの中核としての人類 VS エイリアンの対立を改めて主張していました。

より現実に即したレゴ宇宙の探査モノのモデルは続きますが、それは独立したラインでではありませんでした。2011年から定期的な繰り返されるテーマとして、現レゴ®シティの重要なサブテーマとなったのです。

宇宙船ったら宇宙船!

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クラシックスペースの懐かしさを呼び起こしたのは、意外な存在でした。2014年の大ヒット作『レゴ®ムービー』でチャーリー・デイが声を演じブレークしたキャラクター、ベニーです。宇宙シリーズ初期を思い出させるミニフィグで、ヘルメットの壊れたアゴ紐まで再現されています。

ベニーは映画のクライマックスで、他のヒーローたちを助けるため夢にまで見た宇宙船を組み立てるという重要な役を担い、当シーンをもとにしたセットへの道を開きました。元祖宇宙シリーズセットのカクカクした形状、ディテール、そし青とグレーのカラーリングへのラブレターと言えるでしょう。

現実路線へ

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それと同時期にレゴ社の宇宙セットの焦点はオリジナルのストーリーから離れていき、代わりに現実世界の科学的な取り組みに注力するようになりました。

コミュニティが支えるシリーズであるレゴ®アイデア(元LEGO® CUUSOO)は、2010年代半ばまでにJAXAの小惑星探査機「はやぶさ」やNASAの火星ローバー「キュリオシティ」といった現実世界のプログラムからアイデアを得たセットを発表。おまけに初期のクラシックスペースに着想を得たエクソスーツまでも発売しています。

その間、他のレゴテーマも現実世界の宇宙探査をレゴ化し続けました。レゴ®シティの宇宙を題材にしたセットの定期的なサイクル以外に、この数年はクリエイターシリーズがスペースシャトルと調査ロボットをリリース。サブラインのクリエイターエキスパートは、大人向けにアポロ11号月着陸船やスペースシャトル「ディスカバリー号」といった上級者向けプロジェクトを発表しました。

ノスタルジアに浸るセット

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2022年、レゴは過去の懐かしいセットを復刻させて創業90周年を祝いました。そしてもちろん宇宙を題材にしたセットでは、1979年に発売された銀河探検隊の忠実な改良版という形で復刻されました。

『レゴ®ムービー』とその続編のセットにゴーサインを出したことを除けば、レゴ社がクラシックスペースのセットをリリースしたのは数十年ぶりでしたが、同社がその名を活用するのはこれが最後ではないでしょう。

今後はどうなる?

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そして2024年の今、宇宙モノは戻ってきましたが、独立したテーマとしてではありません。現在、宇宙を題材にしたセットとその象徴的なロゴはレゴの多岐にわたる各テーマ内で見つけることができます。シティやテクニック、クリエイターのような堅実なものから、ミニ人形にフォーカスしたフレンズシリーズや新しいオリジナルテーマのドリームズまで、同社の商品ラインナップから宇宙探査をテーマにした数々のセットが少しずつ出てきました。

レゴ® スター・ウォーズ™シリーズが25周年を記念すると同時に、レゴ宇宙は以前よりもさらにパワーアップして復活しました。今や独立したテーマではなくなったとしても、再びレゴ社の計画の重要な一部となったのです。

Source: Brickset, LEGO(1, 2, 3,),

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