若者からの支持を集められなかった立憲民主党
衆院選での惨敗を受けて、立憲民主党の枝野幸男代表が辞任することが決まった。
この4年間、改めて振り返ってみると、若者からの支持は一向に得られなかった。
一方、2014年の衆院選以降、若者は自民党を支持するようになっており、安定して勝ち続けている一因にもなっている。
諸外国のどの国を見ても、野党の方が若者から支持を得るのが一般的だが、なぜ立憲民主党は若者からの支持を得られなかったのか。
細かい理由を挙げればキリがないが、大きくは下記の点が挙げられる。
・若者の政策ニーズとのズレ
・怒りっぽい人を嫌う風潮
・旧民主党と変わらない布陣
・コア支持者ばかりを見ている
それぞれ詳細を見ていこう。
若者の政策ニーズとのズレ
まずこちらが決定的ではあるが、若者が求めている政策を掲げていない(一部方向性は合致していても実現性が低い)。
初期から立憲民主党を支えている60代以上の高齢者に目を配っており、そもそも本気で若者からの支持を得る気があるのかさえ不明ではあるが、基本的には高齢者向きの政策が多い。
これまでの国会活動を見ても、将来的な持続可能性を高める年金制度改革、現役世代の負担を軽減する後期高齢者の医療費負担増に反対したのが典型例であるが、一方で、労働組合の要求をそのまま飲み、国家公務員の定年年齢の引き上げを推進している。
しかし、国家公務員の平均年齢は年々上がっており、人事制度改革なしに定年年齢の引き上げのみを実施すれば、若手への負担は重くなる一方であり、さらなる官僚離れを引き起こす可能性が高い。
もちろん、ジェンダーなど、若者が期待する政策を推進していないわけではない。
が、多くの有権者が求めているのは、経済政策であり、あくまでそこがセンターピンに来るべきだ。
後述するように、小選挙区制においては、自民党を消極的に支持している中道右派も含めて支持を獲得しなければならないが、特に近年の立憲民主党は全体的に左に寄りすぎており、中道左派でさえ、支持できない状況になっている。
一方の自民党は、中道左派の支持を集めるためにむしろウイングを広げており、企業経営者が嫌がるようなリベラル政策も実施している(最低賃金の引き上げ、長時間労働への規制強化、厚生年金の適用拡大など)。
若者がどういう政策を重視しているかは、今回の衆院選の出口調査を見てもわかる。
10代を筆頭に若い世代ほど、「ジェンダー平等の推進」を求める傾向にあるが、それでも「外交・安全保障」より低い。
「成長」か「分配」か
そして肝心の経済政策が、あまりにひどい。
今回の衆院選において、立憲民主党は、「所得を再分配し『1億総中流社会』を取り戻す」(枝野代表)として、その財源を法人税の累進税率の導入、金融所得課税の引き上げを求める一方、年収1000万円程度までの個人の所得税を時限的に実質免除、低所得者に年額12万円の現金給付、時限的に消費税率5%の引き下げを掲げていた。
経済に悪影響を与える社会主義政策を掲げる一方、保守的な減税も掲げる。
全方面にいい顔をしようとして、一貫性のない、あまりにも安直な政策になっている。
これらの政策を見て、社民党、日本共産党と見分けがつく人がどこまでいるのだろうか。
それぐらい左に寄っている。
コア支持者は、自分たちが「正しい」と考え、なぜ伝わらなかったのか、有権者は「愚か」と考えている風潮が強いが、まずは自分たちが支持されていない純然たる事実を重く受け止め、本当に正しい政策を掲げていたのか、自省すべきである。
政治家には言えないから僕が言うが、日本の有権者はかなり愚かだ。
— 前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民) (@brahmslover) November 3, 2021
また、「成長」か「分配」か、というのが一つ争点となっていたが、日本経済新聞の世論調査によると、世代間によって意見は分かれており、若年層ほど「成長」を優先してほしいと考えている。
世代別にみると18~39歳は「成長」が59%で「分配」の31%より多かった。年齢が上がるほど「分配」支持が増え、60歳以上では逆転した。
60代以上は「分配」支持というまさに立憲民主党の支持層と重なるが、若者からすれば、日本が持続的に成長することが重要であり、そもそもここ20〜30年間、日本は低成長が続いている。
しかも、高齢世代の医療費負担を支えるために現役世代の社会保険料は増え続けており、すでに現役世代から高齢世代への再分配は進み、可処分所得は下がる一方となっている。
もちろん、格差が大きく、米国のように富裕層が多くの資産を占めている国であれば(米国では上位1%世帯の資産が全体の40%を占める、日本はドイツ、フランスなどよりも少なく12%)、再分配強化によって消費が増え成長も実現する可能性はあるが、日本の問題は、全体的に収入が減り、中間層が没落していることであり、全体の底上げ、パイの拡大が求められる。
そして所得格差(再分配所得後のジニ係数)自体も2010年代から縮小傾向にあり、特に高齢世代で大きく改善している。
こうした実態を踏まえれば、重要なのは、全体を底上げするための成長施策であり、再分配をするにしても、職業訓練などの投資性の高いものにすべきである。
また、「子ども・子育て予算倍増」というものも掲げていたが、予算を増やすこと自体は必要であり重要だが、実現性は非常に乏しい。
たしかに、日本政府の家族関係政府支出(対GDP比)が、欧州に比べると半分程度であり、将来的に欧州と同じ水準にすることを目指すべきだが(関連記事:少なすぎる少子化対策予算。国は現役世代への公的支出増で待機児童解消を)、予算額で考えると令和元年度で9.6兆円程度である。(「家族」項目=児童手当、児童扶養手当、施設等給付、育児・介護休業給付等)
倍増ということは、同額の予算を増やすことになるが、恒常的にどう確保するつもりなのか。
こうした「詰めの甘さ」が山のようにあり、掲げている公約に期待することさえ難しい。
比例代表制であれば、ジェンダーなど個別テーマに重点を置くのもアリであるが、日本は現行、小選挙区制を軸にした制度である。
改めて、国民の大多数である労働者のための政党であることを再認識した方が良いのではないだろうか。
現状は、現役世代から支持を得られていないのを見ても、労働者のための政党にはなれていない。