「Kindle Paperwhite(第11世代)」は、E Ink電子ペーパーを搭載したAmazonの電子書籍端末だ。画面が6型から6.8型へと大型化したほか、USB Type-Cの採用など最新のフォームファクタを採用したことが大きな特徴だ。
Kindle Paperwhiteは、2014年に日本上陸と同時に発売された初代モデルが、同一の筐体デザインのまま繰り返しマイナーチェンジが行なわれ、2019年に初めて従来とは異なる筐体デザインへと一新された。今回のモデルはそこからわずか2年で、再びフルモデルチェンジが行なわれたことになる。
今回のモデルチェンジの目玉となるのは画面の大型化だ。最近はスマートフォンの画面も大型化の傾向があり、また電子書籍端末についても、ライバルの楽天Koboは7型や8型のモデルを相次いで投入している。かつて主流だった6型が時代遅れになりつつある昨今、主力であるKindle Paperwhiteの大画面化は、必然だったと言える。
今回は筆者が購入したモデル(広告なし)を用い、従来モデルとの違いを中心に、その使い勝手を検証する。
筐体サイズはなるべく維持しつつ画面サイズを大型化
まずは従来モデルとの比較から。
Kindle Paperwhite (第11世代) | Kindle Paperwhite(第10世代) | Kindle Paperwhite(第7世代) | |
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発売月 | 2021年10月 | 2018年11月 | 2015年7月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 174×125×8.1mm | 167×116×8.18mm | 169×117×9.1mm |
重量 | 205g | 約182g | 約206g |
画面サイズ/解像度 | 6.8型/1,236×1,648ドット(300ppi) | 6型/1,072×1,448×ドット(300ppi) | 6型/1,080×1,440ドット(300ppi) |
ディスプレイ | Amazon Paperwhiteディスプレイ、16階調グレースケール | Carta電子ペーパー技術採用6インチAmazon Paperwhiteディスプレイ、16階調グレースケール | Carta電子ペーパー技術採用6インチAmazon Paperwhiteディスプレイ、16階調グレースケール |
通信方式 | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
内蔵ストレージ | 約8GB | 約8GB(ユーザーー使用可能領域:約6GB) 約32GB(ユーザーー使用可能領域:約27GB) |
約4GB(ユーザーー使用可能領域:約3.1GB) |
フロントライト | 内蔵(暖色対応) | 内蔵 | 内蔵 |
ページめくり | タップ、スワイプ | タップ、スワイプ | タップ、スワイプ |
防水・防塵機能 | あり(IPX8規格準拠) | あり(IPX8規格準拠) | – |
端子 | USB Type-C | microB | microB |
バッテリ持続時間の目安 | 最大10週間 明るさ設定13、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時 |
数週間 明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用時 |
数週間 明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用時 |
発売時価格(税込) | 14,980円(広告あり) 16,980円(広告なし) |
13,980円(8GB、広告つき) 15,980円(8GB、広告なし) |
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15,980円(32GB、広告つき) 17,980円(32GB、広告なし) |
14,280円(キャンペーン情報つき) 16,280円(キャンペーン情報なし) |
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備考 | ストレージ32GB、ワイヤレス充電に対応したシグニチャー エディションも存在 | 4Gモデルも存在 | 3Gモデルも存在 |
この表からもわかるように、画面サイズが6型から6.8型と大型化しただけにとどまらず、細部に渡ってブラッシュアップが図られている。フロントライトは暖色にも対応したほか、充電ポートはmicroBからUSB Type-Cへと改められている。
画面の大型化に伴い筐体はひとまわり大きくなったが、ベゼルがスリムになっているので、そこまで巨大化したようには感じない。重量も従来の182gから205gへと増加したが、もうひとつ前の第7世代モデルは206gだったので、元に戻っただけという見方が正しい。今後歯止めがかからなくならないか心配なのは事実だが、やみくもに増えたわけではない。
ストレージ容量は8GBと標準的だが、楽天Koboの新モデルが軒並み32GBなのと比べると、あまりお得感はない。遅れて発売される本製品の「シグニチャーエディション」は32GBを搭載するので、容量重視ならばそちらを選ぶべきだろう。未使用のコンテンツを端末から削除する「クイッククラウド保存」機能も活用したいところだ。
なお写真でもわかるように、ベゼルと画面に段差のないフラットなデザインや、電源ボタンとUSBポートが並ぶ底面、滑り止め加工がなされた背面など、2018年発売の第10世代モデルと基本的なデザインは同一で、新鮮味があるわけではない。とはいえベゼルが細くスタイリッシュになったことで、一旦新モデルを目にすると、従来モデルは古臭く感じる。
興味深いのは、これまで「数週間」というアバウトな表記だったバッテリの持続時間が「10週間」という具体的な表記に改められたことだ。本製品は新たにUSB Type-Cポートを搭載し、満充電までの時間も3時間→2.5時間に短縮されているが、これと関係あるかは不明。いずれにしても仕様がより具体的に表記されるのは悪いことではない。
その一方、従来の4G/3G搭載モデルが姿を消したのも、時代の流れと言っていい。KindleのLTEモデルは、近年はコミックのダウンロードができなくなり、テキストコンテンツのダウンロードや既読位置の同期にしか使えないという、不自由な状態になっていた。
また、かつてに比べ、スマートフォンを用いたテザリングが一般的になったこともあり、かねてよりAmazonにとって負担になっていたであろう4G/3G搭載モデルを打ち切るのは、自然な流れだろう。ユーザーの多くも、「困るけれども仕方ないし事情もわかる」という人が大多数ではないだろうか。
と、4G/3G搭載モデルが廃止される一方で、Wi-Fiは依然として11n止まりなのは困りものだ。本製品は2年前にフルモデルチェンジしたばかりで、画面サイズ以外はそれほど変化がなくとも不思議ではないのだが、5GHz帯対応だけは今回の4G/3G搭載モデル廃止のタイミングでサポートしてほしかった。この仕様のおかげで自宅Wi-Fiを5GHzに統一できず困るユーザーもいるはずで、なおさらだ。
7型とほぼ同等サイズ。ページめくりの速さは上位モデル並み
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。
本製品の解像度は従来モデルと同じ300ppiで、それゆえクオリティ的な問題はない。6→6.8型への大型化は、ほんのわずかなサイズ差に見えるが、両者を並べると想像以上に開きがある。テキストは文庫本サイズが単行本サイズになったように感じるし、コミックの見た目も明らかに違う。
ちなみにコミックは、見開き表示にも対応する。本体が縦向きを前提としたデザインゆえあまり向いていないように感じるが、実際には大画面スマートフォンでコミックを表示するのとサイズ的には同等で、問題なく使える。少なくとも6型クラスの製品と比べると実用性は段違いだ。
ほかのデバイスとも比較してみよう。まず7型のKindled OasisおよびKobo Libra 2とは、ページめくりボタンの有無が異なる程度で、画面サイズの違いはほとんどない。これらとの比較において、画面サイズの大小を気にする必要は、ほぼないと言っていいだろう。
一方でタブレットとの比較では、8型のFire HD 8 Plusや8.3型の第6世代iPad miniとは、明らかにサイズ感が異なっている。この両製品はコミック表示では見開きに耐えうるサイズで、単ページ表示では大きすぎる印象なので、並べると本製品はどうしても小さく見える。重量もこれらは300g前後と、205gの本製品に比べると明らかに差がある。
画質については、解像度がワンランク低いFire HD 8 Plusを除けば、どれもほぼ同等で違いはない。ただし(以下の作例画像にはないが)ベタ塗りの箇所を見比べると、本製品は黒がより引き締まって見える特徴があり、画面全体が白っぽいイメージのあった従来モデルとの違いを感じる。
レスポンスについてはどうだろうか。多少もっさりした印象のあった従来モデルと違い、本製品のページめくり時の速度は圧倒的に速い。上位モデルのKindle Oasisと比べても同等で、これだけでも買い替える価値はあるだろう。それ以前の古いモデルからの買い替えだと、相当なカルチャーショックを受けるはずだ。
また挙動を見る限り、ページが切り替わる時の残像など、E Inkならではの特殊な挙動もかなり軽減されている。仕様欄には記載されていないが、前述のように黒が引き締まって見える特性も踏まえて考えると、Koboにも採用されているE Ink Carta 1200か、その亜種にあたるE Inkパネルが新たに採用されていると見てよさそうだ。
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実際に使っていて気になったのが、ダウンロードにかかる時間だ。コミック1冊をダウンロードする場合、iPad miniであれば数秒で済むのが、本製品だと1分近くかかる。実際には進捗10%程度で開けるので、読めるようになるまでひたすら待つ必要はないとはいえ、それでも複数冊まとめてダウンロードする場合の待ち時間は相当なものだ。
これらの原因がCPUやメモリにあるのか、Wi-Fiが5GHz帯に非対応なのが問題なのか、それともサーバー側に原因があるのかは不明だが、ページめくりなどのレスポンスが高速化した現在、現状はここが最大のネックといえる。ページめくりが遅い楽天のKobo Libra 2でも、十数秒もあればコミック1冊がダウンロードできるので、なお気になる。
このほか、本製品を長時間使っていると、スワイプでのページめくりは、一定の割合で空振りが発生する。従来モデルでも見られた傾向で、それゆえページめくりはスワイプではなくタップで行なったほうがストレスにならない。具体的な裏付けがあるわけではないが、タッチパネルの感度は世代を重ねるごとに低下している印象はあり、少々気がかりだ。
必然だった画面の大型化。Kindle Oasisのモデルチェンジにも期待
もともと6型という画面サイズは、電子書籍がテキスト中心だった頃に生まれたもので、コミックのニーズが増えた最近は、やや息苦しさがあったのは事実だ。またかつてと違って現在はスマートフォンが広く普及しており、電子書籍を単に表示するだけであればそちらで十分だ。つまり専用端末ならではのプラスアルファが求められていると言える。
こうした中、主力モデルであるKindle Paperwhiteについて、スマートフォンにはない大画面を搭載してきたのは、自然な成り行きだろう。スマートフォンの小さな画面で電子書籍を読むことに不満を感じたユーザーが新たに購入する1台としてはもちろん、高速化も図られていることから、従来モデルからの買い替えにも適した製品に仕上がっている。
こうした中、次に期待がかかるのは、上位モデルKindle Oasisのさらなる大型化だろう。現時点で何らかのアナウンスがあるわけではないが、画面サイズで本製品にほぼ並ばれた現在、強みが実質ページめくりボタンだけというのはいかにも弱い。近い将来にフルモデルチェンジが行なわれても不思議ではなく、今後はそちらにも期待したいところだ。
最後になったが、本製品には遅れて発売になる上位バージョン「Kindle Paperwhite シグニチャー エディション」が存在する。こちらはストレージが8GBから32GBに増量されているほか、ワイヤレス充電に対応、さらに明るさの自動調節にも対応している。本稿執筆時点では未発売だが、これから購入を検討するならば、こちらも視野に入れておきたい。
ただ、一度の充電で10週間使える本製品において、ワイヤレス充電スタンドが必要かどうかはやや疑問だ。置き場所ができるという意味では便利だろうが、同じくワイヤレス充電スタンドをオプションで用意するFireタブレットと違い、スタンド設置時にAlexa端末として使えるようなギミックもない。より慎重になったほうがよいのではというのが、個人的な考えだ。
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