Facebookのソーシャルメディア企業からメタバース企業への移行についてMeta幹部が語る

GIGAZINE



2021年10月29日、Facebookは社名を「Meta」に変更すると発表しました。マーク・ザッカーバーグCEOはかねてより「私たちはソーシャルメディア企業というイメージからメタバース企業へ事実上移行します」と語っており、社名変更はこのメタバース企業への移行の一環でもあります。このメタバース企業への移行を主導するアンドリュー・ボスワース氏が、海外メディア・The Vergeのインタビューに答えています。

Meta’s Andrew Bosworth on moving Facebook to the metaverse – The Verge
https://www.theverge.com/22752986/meta-facebook-andrew-bosworth-interview-metaverse-vr-ar

John Carmack issues some words of warning for Meta and its metaverse plans | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2021/10/john-carmack-sounds-a-skeptical-note-over-metas-metaverse-plans/

Metaのメタバース事業を主導しているのは、同社で15年以上働くベテランのボスワース氏。同氏はMetaのVRヘッドセットであるOculus Questを含む消費者向けハードウェアおよびソフトウェアを開発するReality Labsのリーダーでもあります。Reality Labsには1万人を超える従業員が在籍しており、Metaは2021年だけで同部門に100億ドル(約1兆1000億円)以上を費やしています。ボスワース氏はReality Labs以前にFacebookの広告ビジネス部門を率いており、ニュースフィードやグループといったFacebookの主要機能の構築に参加してきました。同氏は2022年にMetaの最高技術責任者に就任し、Metaの人工知能(AI)およびエンジニアリングチームを統括していく予定です。

The Vergeが「Facebookがメタバース企業へのリブランドを計っていること」について質問したところ、ボスワース氏は「我々が多額の投資を行っているもののひとつにHorizon(Oculusの構築するVRワールド)があります。ある時点で、会社全体をメタバース化したいという考えが生まれたのですが、その中で『製品を持つ』というアイデアを選ばなければいけませんでした。そこで生まれたのが、Horizon WorldsHorizon WorkroomsHorizon Homeの3つです」と語りました。

Horizon HomeはMetaに社名を変更した2021年10月29日に発表された、VR向けのソーシャル機能。アバターを介してデジタル空間上で友人と一緒に時間を過ごしたり、動画やゲーム、アプリを楽しんだりすることが可能というアプリで、Slack・Dropbox・Facebook・Instagramなどの2DアプリをVR内で利用することもできます。

Announcing Horizon Home | Oculus Quest Platform – YouTube
[embedded content]

Facebookは2020年8月に、「2020年10月からOculus製デバイスにログインする際は、従来のOculusアカウントではなくFacebookアカウントでのログインを求める」と発表しました。これについてボスワース氏は、「当初、我々はOculusアカウント持っていました。Oculusアカウントが抱えていた問題点のひとつは、ユーザーがネットワークを構築していないという点です。『ネットワークがあればより楽しめる』というのが我々の考えだったため、同じ時間VRヘッドセットを使用していたとしても、ネットワークがあることでVRをより楽しむことができる、というのが私たちのアイデアでした。そこで、我々はOculusでFacebookのネットワークを使うというアイデアを思いつき、OculusでのFacebookアカウントの利用を必須としました。今にして思えば奇妙な組み合わせであり、奇妙な相性だったと思います。そしてMetaへの社名変更に伴い、Oculus Questは『Meta Quest』に名称を変更し、使用時にFacebookアカウントとの紐づけが不要になりました」とコメント。

Oculus製デバイスのログインにFacebookアカウントが必要に、旧Oculusアカウントのサポートは2023年1月まで – GIGAZINE


さらに、ボスワース氏は「このようなチグハグがあちこちで散発していました。ここ数年はFacebookという1つの製品を包括的なブランドにしようと努力してきましたが、これは私たちにとっても消費者にとっても本当に難しいことでした。消費者は『1つの製品を包括的なブランドとしてみなす』というメンタルモデルを持っていなかったのだと思います。一方で、例えば『InstagramやWhatsAppをFacebookアカウントと紐づけることについてどう思いますか?』と質問すると、消費者は感覚的に何が起こるかを理解できます。これは『製品とはどういうものか』という感覚を消費者が理解しているからです。我々はアカウントのようなメタレベルのものであっても、消費者は自分が提供することになるデータと、製品がどのように関連しているのかなどをしっかりと理解し、納得した上でサービスを利用できるようにしたいと考えています」とも語っています。

Metaが構築するメタバース、つまりはHorizonにより構築されるVRワールドについて、ボスワース氏は「Facebookから実際のニュースフィードがある場合を除き、メタバース上にニュースフィードが表示されることはありません」と語り、Facebookのさまざまなサービスがメタバースに統合されていくという考えを否定しました。

続いて、「2Dインターフェースが現実世界をナビゲートする方法の重要な要素となっているのと同じように、没入型のメタバースにおいても2Dインターフェースが重要なものとなる可能性は十分にあります。もちろんそのためにやるべきことはたくさんあるでしょうが、すでにさまざまな目的のために設計された参考となるサービスや業界が多数存在しています」と語り、既存のアプリケーションやサービスをメタバースへ移行するために必要な改善点はたくさんあるとしつつも、既存のサービスをベースにすることで簡単にメタバース向けにローカライズしていくことは可能なはずとしています。


加えて、ボスワーズ氏は「メタバースではさらに多くのことができるようになります。何が新しく、何が人気で、何が流行していて、何が起こっているのかを瞬時に把握できるような支援サービスは必ず必要になると思います。他の人は何をしているのか?友だとは何をしているのか?自分のスケジュールはどうなっているか?などなど、さまざまな物事を把握できるようなサービスは必要であり、それらにユーザーは興奮するはずです」とも語り、メタバース内でさまざまなサービスが生まれるはずと主張。

さらに、ボスワース氏は「メタバースは主に『同期の体験』であると思います。リアルタイムで遠隔地にいる人々と一緒の時間を過ごし、リアルタイムでさまざまな経験を積むことができます。このような同期体験は、ウェブ上で利用するようなサービスでは体験することができません」と語り、メタバースはこれまで存在したさまざまなサービス・ゲーム・コンテンツをVR上でさまざまな人と「一緒に」体験できる点が優れているとしました。


一方、Meta傘下のOculusで最高技術責任者を務めるジョン・D・カーマック氏は、Metaのメタバース構想について警鐘を鳴らしています。

カーマック氏は「私はメタバースを本当に気にかけており、そのビジョンには明確に賛同しています」としながらも、「社内でメタバースをスピンアウトするというアイデアが出てきた時から、かなり積極的に反対してきました」と語り、メタバースを早々にスピンアウトしていくことについては反対してきたと述べました。

同氏は「メタバースの構築に着手することが、実際にメタバースを完成させるための最良の方法ではないと信じるにはかなりの理由があります」と語り、「メタバースへの最も明白な道のりは、Robloxのような単一のユニバーサルアプリを持つことです。一方で、我々の単一のアプリケーションがすべてを引き継ぐレベルに達するとは到底思えません」と説明しました。MetaはHorizonというメタバースを生み出していますが、各アプリが別個に存在している点が乱雑であり最大の間違いであるとしました。

ただし、例えばHorizon Workrooms上でコミュニケーションをとることはビデオ通話で遠隔地の人と話すよりも「はるかに楽しい」とカーマック氏は説明しています。しかし、記事作成時点ではHorizon WorkroomsはMetaのメタバースビジョンからは「ほど遠い」とカーマック氏。Horizon Workroomsでは16人と同時にチャットすることができますが、Metaのメタバースビジョンは「何千人もの人々がVR空間をうろつき、気まぐれに会話したり会議したりするもの」と説明されています。そのため、カーマック氏は「来年の年次開発者会議のFacebook Connectは、メタバース上で実施する必要があります。もしも来年も今年と同じように現実のカメラの前で登壇者が話をしていたとするなら、それは本当にガッカリすべきものです」と語り、来年のFacebook Connectはメタバース上で開催しなければいけないとMetaの目標を挙げました。


「メタバースに取り組みたいと思う人は、誰でもメタバースの無限の可能性について語ります。しかし、それは無限ではありません。物事を適合させることは挑戦であり、何が重要かについてより懸命な決定を下し、最適化についての決定を下す必要があります」と語り、VR空間は事実上制限がないという主張は間違ったものであると指摘。例えばVR空間で利用するアバターの品質を向上させるには、アバターの処理の一部をクラウドコンピューターにアウトソーシングすることが役立ちます。しかし、それを行えば遅延や断片化、ローカルデバイスとの間の調整といった問題が多数生まれるため、別のリソース問題が生まれることとなると語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました