映画「アルマゲドン」では地球に衝突しそうな小惑星の内部に核爆弾を仕掛け、爆発によって軌道を変えるというミッションに挑む主人公らの姿が描かれています。アメリカの研究チームが発表した論文では、実際にこうした「小惑星を核兵器で爆破する」という解決策が地球滅亡を回避する上で有効だと示されました。
Late-time small body disruptions for planetary defense – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0094576521003921
Late-time small-body disruptions can protect the Earth | Lawrence Livermore National Laboratory
https://www.llnl.gov/news/late-time-small-body-disruptions-can-protect-earth
Nuking an Asteroid to Prevent Armageddon Could Actually Work, Study Shows
https://www.sciencealert.com/our-last-line-of-defence-against-an-asteroid-hit-actually-works-study-shows
小惑星が地球に衝突すると甚大な被害を引き起こす可能性があるため、NASAなどは地球に接近する地球近傍天体の観測を行い、衝突するリスクがあるかどうかを調査しています。また、NASAは地球近傍天体に宇宙船をぶつけて軌道を変える「DART」というミッションにも取り組んでおり、2021年11月23日にDARTの実験機を打ち上げ、直径160メートルのディモーフォスという小惑星に衝突させる実験を計画しています。
一般的に、衝突まで10年以上の時間が残されている小惑星については、少しずつ運動エネルギーを加えることで軌道をズラし、地球と衝突するコースから外す解決策が推奨されています。しかし、衝突する可能性がある全ての小惑星が、地球から遠く離れている段階で検出できるとは限らない上に、当初の計画が失敗してしまう可能性もあります。そこで、ジョンズ・ホプキンズ大学の物理学者であるパトリック・キング氏らの研究チームは、地球に衝突しそうな天体の中でも特に「衝突を回避するまでの時間があまり残されていないもの」の対応に焦点を当てる研究を行いました。
研究チームは直径100メートルの小惑星が地球に接近する軌道を5パターン想定し、小惑星の表面から数メートル離れた場所に設置した1メガトン(100万トン)級の核爆弾を爆発させ、地球への被害がどれほど軽減できるのかをシミュレーションしました。今回は、衝突の1週間前~6カ月前の異なるタイムスパンでもシミュレーションを行い、地球への被害が時間的猶予によってどれほど変化するのかも調査したとのこと。
研究チームが行った、小惑星の表面で核爆弾を爆発させるシミュレーションの様子は、以下のムービーで確認できます。
Late-time small body disruptions for planetary defense – YouTube
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画像下部の白い点が小惑星です。
表面で核爆発が起きると……
小惑星を構成する岩石が砕けて、宇宙空間に飛び散ります。
爆発の衝撃は小惑星の裏側にもおよび……
最終的に、小惑星は粉々になって吹き飛びました。小惑星で核爆弾を爆発させた後で細かい破片がどこに到達するのかを把握するため、研究チームはSpheralというモデリングツールを用いて、重力やその他の力で破片が到達する場所を特定したとのこと。
シミュレーションの結果、地球に衝突する2カ月前に爆発させれば地球に降り注ぐ質量は0.1%まで減少することが判明。小惑星の質量がさらに大きくなると爆発による分散速度は減少するものの、6カ月前に爆発させれば地球に衝突する質量は1%まで減らせる可能性があると研究チームは報告しています。
論文の共著者であるローレンス・リバモア国立研究所のマイケル・オーウェン氏は、今回の研究は地球に接近する危険な小惑星を破壊した結果と要件を理解するために重要だと主張。「地球に衝突する運命にある天体を発見したが軌道を変えるには遅すぎる場合、残る最善の選択肢は、それを完全に破壊して生じる破片の大部分を地球からそらすことです」と述べました。
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