なぜオワコン政策が並ぶのか?:自民党総裁選の論点

アゴラ 言論プラットフォーム

自民党総裁選の政策発表、そしてそれに対抗しての立憲民主党の公約発表・・・これらを見て、その政策論争など、「政治が変わってきた」と思った人も多かっただろう。私も前よりは「まし」さらに、各候補の説明力、プレゼンテーション能力が素晴らしく、「対話できる政治家」という21世紀の条件が満たされているという印象を持った。政策もそれなりに話題になるものも多い。筆者が主張してきた東京一極集中問題についても、河野氏、岸田氏は強調している点は非常に評価したい。

しかし、残念な思いも同時に感じた。

自民党HPより

3つの特徴

第一に、「健康危機管理庁」「人権問題担当官」「情報通信省」「サイバーセキュリティ庁」などなど組織を作る、人を配置するという類のものが多いこと。組織や人を配置することの意味は、官僚制度の中ではそれなりに意味があるし、それなりの効果はある。しかし、大事なのは運用することが大事であって、官僚機構は肥大化するという特性を持っているので、あまりよろしくはない。機能させることが大事でありため、省庁を作ることよりも、権限の付与インセンティブやマネジメントが大事である。機能させるAIやRPA導入などでの業務効率化が進めば、業務が減るので、改革をしてからでいいだろうと個人的には思ってしまう。

第二に、具体策をどのようにやるのか?が見えない。各陣営「・・・をする」「・・・を推進」と勇ましいが、過去の失敗から見てもできるわけないのに、なぜまたやるのか?という疑問を感じてしまう政策もある。総括が欠けている。

特に、経済政策について。日本経済が先進国と言えない状況である。後述するが、1人当たりGDP、2019年のOECD内では21位であり、平均賃金も韓国に抜かれている。その中で「所得を倍増」させる方法は何かが全く持って見えない。多くの候補が、適切に配分することで不安解消につなげるということだそうだが、生産性の低い日本企業の競争力を見ていたら、それだけでは不十分なことが明らかである。

第三に、実行可能性が見えない。フィージビリティ調査(実行可能性調査)をやって、それが可能か、どこから人と予算を持ってくるのかの「かけるリソース」、どのレベルを目指すのかの「目標」、とどうした時に終了するのかの「EXIT(終了)プラン」が全く見えてこない。

喫緊テーマについての明確な指針は?

敵基地攻撃能力については、様々な場面で議論はされているが、それ以外のテーマについては進んでいないのが現実だ。あえて「分断」をあおる必要はないが、国内で考え方が割れていて、今後の日本の政策に重要なものはやはり深く議論するべきものについてもあいまいな議論のままなのである。

  • 石炭発電所をどうするか?
  • インボイス政策についてはどうするのか?
  • 安倍菅政権の「官邸官僚」の跋扈についてはどう考えるのか?

こういった点はこういうときだからこそ、考えてもらうべきだが、論点にならない。既得権益への配慮など、色々理由はあるのだろう。

そして、大事な経済は?

1人当たりGDPを超大国と言われる、アメリカ、日本、中国で比較すると、以下の図のようになる。

【出典】筆者作成

GDP合計で追い抜かれた中国に追いつかれる日もそう遠くないだろうという実感が持てる。そして、筆者もアゴラで執筆したような平均賃金では韓国に負けているのが現実である。

【出典】OECDデータより筆者作成

日本の推移を見てみると、この20年近くほぼ伸びていない一方、アメリカは4割、韓国は9割近く上昇、この原因を考えると以下のようになる。

【出典】西村健による分析

この図はあくまでも仮説だが、様々な理由があり、要因が絡み合い、複合的なものであることがわかる。とても複雑な問題なのだ。

端的に言うと、問題は3つ。

  • 【成長】経済成長しない
  • 【雇用レベル】労働分配率が低い
  • 【業務レベル】生産性が低い

これらの問題への政府の役割の範囲内での具体策が見えないのである。中国には先端技術や各方面で負けているなあ・・・と実感するし、皆さんもそうでしょう?候補者の経済政策は問題解決案としては不十分なのである。

過去の検証を

その意味で、ここ30年の経済政策の検証結果を出してもらわないといけないのだが、残念ながらそれは見受けられなかった。

あれもやる!、これもやる!で「やっている感」を出してきたのが安倍政権。安倍政権を支えていたのが今井尚哉さん(内閣総理大臣秘書官(政務)兼内閣総理大臣補佐官)が「影の総理」として活躍。権力集中した「官邸官僚」のなかで力を持っていたのが今井を中心とする経産省出身者グループである。「意味はないが大したカネをかけずに立派に見える政策」(古賀さん本より)を作るプロに依存した安倍政権のアベノミクス・経済政策では、根本的な問題解決は難しかったと言える。まだ党内で力を持つ安倍さんを考えると、検証は難しかったのかもしれない。

最後に、今回問われるべきはコロナ対策でもあったはず。なぜできなかったのか?みなさん政権で要職にいらっしゃいましたよね?と思う。

医師会との関係がコロナ政策にどう影響されたか?全く見えない。厚労省や医師会の利害関係者を説得して、コロナ病床を増やしていれば、こんなに長く緊急事態宣言も必要なかったし、国民の「経済的・心理的損害」がここまでなったことへの反省が見られない。」という指摘もあるように、特に医師会に影響されたコロナ対策についてどう検証するのか。

今更、「国公立病院をコロナ重点病院化」「国が主導して、野戦病院等の臨時の医療施設の開設や大規模宿泊施設の借上げを実施」と言われても・・・・という感じです。できなかった理由を教えてもらいたいものであります。

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