米DIGIDAYの取材に応じたパブリッシャー5社によると、そのうちの数社では直接販売広告の売上が1桁台から25%ほど予測を下回る水準を行き来しており、オープンプログラマティック市場のRPMは対前年比で20%から55%下がっている。しかしながら、旅行、自動車、消費財(食品と非食品)の広告カテゴリーはどれも堅調だそうだ。
「経済減速が始まると経済のあらゆる面が等しく影響を受ける――というのが従来の想定だった。しかし、2023年の年初を含め、ここ数四半期はそうではない」と、匿名を条件に米DIGIDAYの取材に応じたあるメディア幹部は話す。
一方、同様に匿名を条件に話した買い手側の幹部2人によると、今四半期の広告主の予算は2022年第1四半期に比べて平均5%から20%減少しているという。また、クライアントによって予算削減に対するアプローチは異なり、そのクライアントのカテゴリーも広告費に影響しているとも話す。今のところ、パブリッシャーの第1四半期広告売上は全体的に下降傾向だが、その原因はすべての広告カテゴリーにあるわけではないようだ。
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主なポイント
- パブリッシャー5社によると、これまでのところ今四半期の広告費1位のカテゴリーは「旅行」。
- 一方、テクノロジー系の広告は第2四半期まで戻ってこないと見られる。
- 現在、金融カテゴリーは好不調が入り混じっており、パブリッシャー5社中4社が減少、1社が増加を報告している。
以下では、今四半期でパブリッシャーに広告費をかけている広告カテゴリー、かけていない広告カテゴリー、少しだけかけている広告カテゴリーに分けて見ていく。
広告費をかけているカテゴリー
・ 旅行
ほぼすべてのパブリッシャーが、対前年比で最も広告費が多い広告カテゴリーは旅行だと話している。あるメディアバイヤーは、景気悪化で最も影響を受けていないのがこのカテゴリーだと証言した。
旅行カテゴリーはコロナワクチンが広く普及してから安定して好調で、ここ数四半期の広告費は2019年に比べても増えている。最初のメディア幹部は「当社では旅行はいまやパンデミック前の水準を超えている」と話している。
・ 自動車
1人のメディアバイヤーは今四半期に自動車のクライアントの予算が下がったと述べたが、自動車カテゴリーが順調だと話すメディア幹部も3人いる。最初の匿名のメディア幹部は「自動車は今、最高にホットだ。2023年は数多くの新型車の発売が予定されている。EVにものすごく力が入っており、新車発表に投入されるマーケティング予算も規模が大きい」と語った。
・ 消費財(食品と非食品)
3社のメディア幹部が、今四半期の広告費トップは消費財だと話している。最初のメディア幹部は「消費財はかなりの利益があるようで、あまり広告の減速もなかった」という。
匿名が条件の4人目の幹部も、「今四半期は非食品の消費財と食品・飲料のどちらのカテゴリーも拡大している」と述べた。また、厳密には消費財カテゴリーではないが、医薬品も、消費財と旅行と同じように増加していると幹部たちは話す。
匿名が条件の5人目のパブリッシャーは、サプライチェーンの改善に触れ「膨大なオポチュニティが見られるのが消費財だ」と語った。
広告費をかけていないカテゴリー
・ テクノロジー
メディアレーダー(MediaRadar)のデータによると、テクノロジーの2023年の広告費は2022年1月比で2%減少している。取材に応じたどのメディア幹部も今四半期に広告費をかけていないカテゴリーとして名前を挙げたのがテクノロジーだ。現在テック業界で進むレイオフの規模を考えると、これは驚くべきことではない。
匿名を条件に2人目のメディア幹部は次のように話している。「テックは当社にとって最大カテゴリーのひとつだ。レイオフの状況を見れば理由は明らかだが、彼らにはマーケティング予算に関わろうという気持ちが単純にない」。このパブリッシャーの広告主の上位にはGoogle、Amazon、セールスフォース(Salesforce)が名を連ねているにも関わらず、どの企業も2023年第2四半期までは広告キャンペーンに資金を投じる予定はないそうだ。
秋に新製品リリースの予定が多いテック業界では広告費が暦年の後半に偏ることが多いため、これ自体はそれほど珍しいことではないが、最初のメディア幹部によると従来の第1四半期のペースと比べても「大手テック企業の一部には大きな減速が見られる」という。2022年の中盤から終盤にかけてはまだかなり活発な状況だったにもかかわらずである。
・ ビューティー
3人目のメディア幹部は「ビューティーに関しては、クライアントの話から受ける全体的な印象としては、年末年始のホリデーシーズンの売上がそれほど好調ではなく、それが第1四半期の予算の一部に影響しているようだ」と語った。
どちらともいえないカテゴリー
・ 金融・保険
メディアレーダーのデータによると、金融の2023年の広告費は2022年1月比で16%減少している。匿名条件の3人目のパブリッシャーは、テック同様B2Bと金融も「かなり軟調」だという。さらに3人のパブリッシャーが、第1四半期にこのカテゴリーが減ってきていることに同意見だった。
2人目のメディア幹部は「金融は本当に低調で動きがなかった。例年であれば11月に来るRFPがようやく(1月中旬に)届いたばかりだ。このため第1四半期には計上できないかもしれないが、来ただけありがたい」といい、届くタイミングは遅かったが、2022年の同時期に比べて予算削減は一切なかったと付け加えた。
その一方で、5人目のパブリッシャーの話では、クレジットカード、銀行、パーソナルファイナンス関連の金融は今四半期にチャンスが狙えるカテゴリーとしており、そのパブリッシャーのサイトではパーソナルファイナンスの論説コラムを新設する予定すらあるそうだ。
・ リテールとファッション
メディアレーダーのデータによると、リテールの2023年の広告費は2022年1月比で12%減少している。4人目のメディア幹部は、リテールは「大幅に下がった」といい、年末年始のホリデーシーズンが終わったあとでは珍しくないことだと付け加えた。同じメディア幹部は、ラグジュアリーファッションはそれでもまだ広告費を投入しているといい、3人目の幹部もそれに同意した。
[原文:Media Briefing: Market check on which ad categories are spending on publisher campaigns]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)